テスラの「モデルY L」に試乗した。乗って最初に感じるのは、やはりテスラらしいクルマだということだ。ただし、従来のモデルYとは少し違う。ホイールベースを150mm延長して3040mmとし、全長も伸ばして3列6人乗りとしたモデルY Lは、単なる「大きくなったモデルY」ではない。
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しかも、変わったのは室内の広さだけではない。電子制御ダンパーを備えたアダプティブサスペンションを採用するなど、走りの質も引き上げられているのだ。

3列シートになったY L
モデルY Lの一番分かりやすい変化は、やはり3列シートだ。2列目は独立したキャプテンシートで、3列目には2人が座る。大型ミニバンのように3列すべてを常用するというより、普段は2列目までを使い、必要なときに3列目を使うという考え方が似合う。それでも「あと2人乗れる」というのはいわば隠し玉のような存在だ。






SUVとしての使い勝手を残しながら、必要に応じて乗車人数を増やせる。モデルYの基本的なスタイルを崩さず、ホイールベースを伸ばして居住空間を生み出したところにも、テスラらしい合理性を感じる。だからといって「普通のSUV」に近づいたわけではない。むしろ、3列化や快適性の向上によって使いやすくなった一方で、操作系やAI、OTAといった部分では、従来のクルマに対してさらに水を開けている。そこが面白い。

クルマとして成熟しながら、クルマの常識には従わない。それがモデルY Lなのだ。クルマは長い間、ハンドルがあり、アクセルがあり、ブレーキがあり、メーターがあり、スイッチがあるという基本構造を大きく変えてこなかった。
テスラは、その一つひとつに「本当にそれが必要なのか」と問いかけている。モデルY Lは、その思想を3列SUVという、より日常的なパッケージに落とし込んだクルマなのだ。
一般的なクルマなら、エアコンや各種機能には専用のスイッチやレバーが用意されている。しかしテスラでは、それらの多くをディスプレイやステアリング上の操作に集約している。



初めて乗ると、「ここにスイッチがないのか」と戸惑う。物理スイッチなら手探りでも操作できるが、ディスプレイの場合は画面を確認しなければならないこともある。合理的ではあるが、従来のクルマに慣れている人ほど違和感を覚える部分だろう。
ところが、これを単なる「スイッチを減らしたデザイン」と考えると、テスラの本質を見失う。テスラはクルマを、完成した機械としてではなく、ソフトウェアによって進化し続けるデバイスとして捉えている。その象徴が、いまや車内で使えるAIの「Grok」だ。日本向けのモデルY Lでも、話しかけることでナビのルート設定や場所検索、ウェブ検索、車両位置の確認などができる。
つまり、クルマを買った時点で機能が完成するのではない。OTAによってソフトウェアが更新されれば、手元にあるクルマの機能そのものが変わっていく。これは従来のクルマとはかなり違う。スマートフォンをアップデートすると、新しい機能が追加される。それと同じようなことを、クルマでもやろうとしている。

ストレッチした航続距離
もうひとつ注目したいのが、航続距離だ。
モデルY Lは、モデルYより全長、ホイールベース、車高を拡大し、3列6人乗りとした。その結果、車重は2090kgに達する。それでも日本仕様のWLTC航続距離は788km。これは、3列SUVとして考えるとかなりインパクトのある数字だ。空力性能や電動パワートレーンの効率を高めながら、実用性と航続距離を両立させている。
ここにも、テスラがEVを「大きなバッテリーを積んだクルマ」としてではなく、システム全体の効率で考えていることが表れ、車体をストレッチすると同時に航続距離もストレッチしているあたりがテスラの矜持かもしれない。
走ってみると
さて、実際に走り出して感じるのが乗り心地の変化だ。従来のモデルYには、路面からの入力を比較的ストレートに伝えてくる硬質な乗り味があった。それに対してモデルY Lは、段差やマンホールを越えたときのショックが穏やかになっている。

とはいえ、柔らかくなったわけではない。むしろ、ボディの剛性感はしっかり残っている。路面の凹凸をサスペンションが受け止め、そのうえで車体がどっしりと動く。硬さが消えたというより、硬さの質が変わったと表現したほうが近い。
高速道路では、この性格がさらに分かりやすい。車体は落ち着いていて、直進時の安定感も高い。ホイールベースが長くなった効果もあるのだろう。速度を上げても車体がフラフラする感じはなく、長距離を淡々と走るには向いている。
一方で、アクセルを踏めばモーターのトルクが瞬時に立ち上がる。ステアリングを切れば、重量感のある車体がスッと向きを変える。この「重いのに反応が速い」という感覚が、テスラ独特の運転感覚をつくっている。

「クルマ」の常識を少しずつ変える
乗り心地は確実によくなった。それでも剛性感は残り、アクセルを踏めば鋭く反応する。そして車内では、AIが会話し、ソフトウェアがクルマの機能を更新していく。だから、試乗を終えても印象はやはり同じだった。「やっぱり、テスラは最先端だ」モデルY Lは、その最先端を、3列シートという現実的な使いやすさの中に持ち込んだモデルなのである。




価格(税込み)
テスラ モデルY L プレミアム:749万円(政府CEV補助金:127万円)













