【BYD】日本専用軽EV「RACCO」を投入 海外メーカー初の軽市場参入を支える独自技術「X-PACK」の実力

BYDオート・ジャパンは2026年7月28日、海外自動車メーカーとして「初」となる、日本の軽自動車規格に合わせて専用設計したEVのスーパーハイトワゴン「RACCO(ラッコ)」を発売した。

左からBYD副総裁の劉学亮氏、CMに出演する広瀬アリスさん、BYD日本の東福寺社長)

グレード展開は、エントリーグレードの「RACCO 200」(バッテリー容量22.4kWh)と、中間グレードの「RACCO 300 Plus」、そして、最上級グレードの「RACCO 300 Premium」(いずれもバッテリー容量35.84kWh)の2モデル・3グレード展開で、ボディカラーは全6色を設定している。

WLTCモードの航続距離は、「RACCO 200」が210km、「RACCO 300 Plus」、「RACCO 300 Premium」は320km。

そして今回の「RACCO」の導入に合わせて、ロングラン新車保証、据置型ローンが新採用されることも注目点だ。

ロングラン新車保証とは、車両保証は6年/15万km、重要部品は6年/15万km、EV高電圧・駆動部品は8年/16万kmで、駆動用バッテリーについては、基本保証の8年/16万kmに加え、有償延長保証(税込み:1万8000円)に加入すれば、最長で10年/20万kmの保証期間が適用される。したがって、通常のエンジン搭載車、他のEVに比べても手厚い保証が実現されている。

据置型ローンは、5年後の残価50%を想定し、国内軽EV最強の据置型ローン、「ラッコ楽っとローン(ラコラク)」を新たに設定している。

RACCOの開発
日本市場専用となる「RACCO」の開発の契機は、2023年10月の「ジャパンモビリティショー2023」のために来日したBYD本社の王伝福総裁が、日本の道路で軽自動車が氾濫しているのを認識し、日本市場専用となる軽EVの投入を決断したという。

左から、日本での商品企画担当の田川博英氏、BYD副総裁の劉学亮氏、プロジェクト商品総責任者の楊歩益氏、BYD日本の東福寺厚樹社長

しかし、BYDはそれより2年前に、日本の軽自動車に関するスタディを開始していた。超コンパクトカーに関する技術ノウハウを習得する目的で軽自動車を購入し、研究を行なっていたのだ。

またBYDジャパン側は、日本市場向けに当初はBYD初のAセグメントのEV「シーガル(かもめ)の日本導入を求めていたが、BYD本社は「シーガル」をヨーロッパ市場向けの戦略モデルと位置付け、ヨーロッパ市場向けに特化させた。その結果、改めて日本市場向けのエントリーモデルが求められていたという背景もあった。

BYDの王伝福総裁

王伝福総裁の決断の結果、2024年1月に軽EVの開発が正式にスタートを切っている。つまりこの時点で、商品企画、デザインの検討がスタートしている。そして商品企画としては、軽自動車市場で主流のスーパーハイトワゴンとすることが決定された。

BYDデザインチームは、EVのスーパーハイトワゴンとして、過剰な装飾要素やクローム装飾を排除し、ミニマルでクリーンなデザインを追求し、エッジ部をラウンドさせることで「RACCO」と呼ぶにふさわしいフォルムを作り上げた。そして最終的にデザイン統括責任者のウルフガング・エッガー氏の承認を受け、デザインが決定している。

なお、BYDの開発では設計から出図までは6ヶ月以内というのが通常のスピードだが、「RACCO」の場合は既存のEVモジュールを使用することが難しいため、新たに「X-PACK統合EVシステム」を開発し、15ヶ月を要している。だがもちろん、日本の自動車メーカーに比べれば格段の開発スピードであり、BYDの中国人開発メンバーはこの間は通常の休暇も返上したという。

新型「RACCO」は、日本市場専用モデルとして中国本社がデザインから設計、開発、生産までを担当する、かつてないクルマである。

X-PACK統合EVシステム
ハードウエアでは、軽自動車として成立させるために専用のEVプラットフォームが採用されている。基本は「e-プラットフォーム3.0」であり、リン酸鉄リチウムイオンバッテリー(LFP)のブレードバッテリーを床面構造材とするセルtoボディ(C2B)としている。

この結果、車体ねじり剛性が30%向上すると同時に、室内空間の拡大、より低いフロア面を可能にしている。ただし、全幅の狭い軽自動車規格に合わせ、ブレードバッテリーも通常より全長が短い形状を採用している。

フロントに搭載するEV駆動ユニットは、当初はBYD独自の「8 in 1」モジュールユニットが検討されたが、前面衝突でのクラッシャブルゾーンの確保が難しいため、新たに「X-PACK統合EVシステム」が開発された。

「RACCO」の核心技術となる「X-PACK統合EVシステム」とは、フロントの駆動は極めてコンパクトなモーター+減速ギヤの「2 in 1」とし、それ以外の電子制御ユニットは、フロア面のブレードバッテリー・ユニットの前方フロア部に、インバーター、DC/DCコンバーターと車載充電器を統合したDC/OBC統合ユニット、高電圧配電ユニット、バッテリーコントローラー、PTC(加熱ヒーター)/エアコン・コントローラーを平面的に配置している。

この驚異的なコンポーネンツ・レイアウトにより、フロントは極めて低重心でコンパクトな駆動ユニットが実現し、前面衝突時のクラッシャブルゾーンを39%拡大し、万が一、歩行者と接触した際に歩行者の頭部へ加わる衝撃を35%低減させている。

ボディ構造では、重要な骨格部に軽自動車では例を見ない2ギガ・パスカル級、1.5ギガ・パスカル級の超高張力鋼板を採用して強度を向上させ、キャビン部の変形を抑制。ボディ骨格全体では約70%が高張力鋼板を使用している。

さらに生産工場である常州工場で標準技術となっているルーフパネルのレーザー溶接取り付けが採用されており、ボディ全体の剛性を高めている。そしてJNCAP試験では最高レベルの衝突被害軽減ボディを目標としている。

なお常州工場で「RACCO」は他のEVモデルとの混流生産が行なわれている。

商品力の追求
軽スーパーハイトワゴンの商品力に関しては開発チームが日本市場を徹底的に調査。研究を行なった。約15人の開発メンバーは1ヶ月にわたって、日本の地方のスーパーマーケット、高速道路のサービスエリア、道の駅、幼稚園など人々の生活圏での軽スーパーハイトワゴンの使われ方を調べ上げ、装備、仕様などに落とし込んでいる。

全モデルが両側電動スライドドアを装備

その結果、フロント・ドアの90度開口、両側電動スライドドアの採用から、ヒーター付きドリンクホルダー(300 Premium)、複数のコンビニ袋フック、雨傘スタンド(雨滴受け皿付き)、シートヒーター(300 Plus/300 Premium)、照明付きバニティミラー(300 Plus/300 Premium)、リヤ席サンシェード(300 Plus/300 Premium)が採用されている。

またリヤシートは、前後スライド、50:50分割、通常の前方折りたたみだけでなく、後方への跳ね上げも可能にし、ベビーカーなど大型荷物の積み込みを容易にするなどフラットなフロアのメリットを生かして利便性を追求し、商品力を高めている。

パッケージングとパワートレイン
全高は1800mmとし、前後のアップライトな着座姿勢を組み合わせることでヘッドクリアランスが高く、広々とした室内空間を実現。その一方で、最小回転半径は4.8mとし、狭い道路での取り回し性を確保。

その結果、身長140cm以下の子供が立ったまま、着衣の着替えが可能になっている。

バッテリー容量、航続距離は日本の競合する軽EVを上回るように選択されている。なお充電は、バッテリーが224V仕様のため、急速充電が最高50kW出力、普通充電は6kWに対応している。

フロント最下端に駆動モーターを配置

駆動モーターは全モデル共通で、軽自動車上限の最高出力47kW(64ps)とし、最大トルクは160Nm。モーター制御はミリ秒単位の応答性を持つインテリジェント・トルク制御アーキテクチャーを採用。

また強い回生ブレーキ、強いトルク立ち上がり特性は採用せず、市街地、高速道路でなめらかで気持ち良い走行フィールを追求している。

走行モードは、ECO、NORMAL、SPORT、SNOWという4モードを装備している。SNOWモードは、雪道など滑りやすい路面での登坂、制動性能を確保するモードだ。

ソフトウエア・ディファインド・ビークルと装備
「RACCO」は、軽自動車で初のソフトウエア・ディファインド・ビークル(SDV)であり、無線通信により、パワートレイン、運転支援システムからインフォテイメントまでアップデートが可能だ。

日本では、2027年からE2E半自動運転が認可される予定で、BYD本社は先進運転支援システム「天神の目」の展開戦略のもとで「RACCO」でも導入を検討しているという。

安全・快適装備としては、10.1インチのタッチスクリーンやApple CarPlay/Android Auto対応インフォテインメントシステムを採用。ナビゲーションはAndroid Auto、Apple Carplayを使用する。

BYDアラウンドビューモニター(300 Premium、それ以外はリヤカメラ)、幼児置き去り検知機能、足下投影ガイド付きハンズフリースライドドア(300 Premium)などが採用されている。

運転支援システムは、アダプティブクルーズコントロールを始め、運転支援システムをフル装備している。

価格

政府CEV補助金:15万円

BYD ラッコ 関連記事
BYD 関連記事
BYDオートジャパン 公式サイト

ページのトップに戻る