SUPER GTの2026年シーズンは第3戦のマレーシア戦が延期となり、じつに3ヶ月のインターバルの末、8月1日(土)、2日(日)に富士スピードウェイで第4戦300kmレースが行われた。
このインターバルの期間でSUBARU BRZ GT300は、冷却対策を行なっている。小澤正弘総監督は「以前から課題点としてあったポイントで、課題をクリアするには短期間では難しかったので、このタイミングで改善することにしました」と話す。

今季EJ20型からEG33型エンジンにスイッチしたことによりエンジンルーム内は新規に設計されているが、冷却に課題があったという。これまではインタークーラーを斜めに取り付け、その下にラジエターを配置していたが、その空間が狭く、十分な空気流量が取れていなかったという。
そのため、インタークーラーの取り付け角度をフラットにし、ラジエター自体も垂直方向に縦ることでスペースを確保している。そのため、パイピングも変更になり、そしてボンネット形状も夏仕様に変更した。

ボンネットは真上から見た時に、エンジンルーム内が50%見えるまで開口部を設けることができる。通常はエンジンルーム内が見えてはいけない規則で作られているが、GTAは夏仕様を許可しているのだ。
予選12番手は失敗ではない――井口卓人が背負った重圧
こうしたアップデートを行なって、チームは富士スピードウェイへやってきた。ピット設営日の金曜日にドライバーもやってくる。ドライバーの二人、井口卓人、山内英輝の表情も明るい。3ヶ月のインターバルがあるとはいえ、ドライバーができることに変わりはなく、この日を迎えている。

二人は、チームがそうしたアップデートをしていることやトラブル対策を徹底していることは十分承知しており、開幕戦、第2戦とも結果が出なかったことに対する期待を持って、富士スピードウェイにやってきたのがその表情から伝わってくる。
山内は「チームが一生懸命アップデートしてくれてますから、僕たちは結果を出すだけです。普通に走ればチェッカーは約束します」と笑顔だ。一方で、気になったのは「表彰台」とか「ポールポジション」といった言葉はなかった。
理由はBoPだ。
今回、エンジン出力に直接影響するターボの過給圧が下げられているのだ。しかもパワーバンド内での制限が厳しく、全体では約8%程度過給圧が下がっている。つまり、加速力が落ち、トップスピードも下がる仕様になっているからだ。当然出力も下がっている。
確かに第2戦ではポールポジションを獲得し、他を圧倒する速さが光っていた。これはEG33型の効果もあるが、やはりマシンのセットアップがピタッとハマったことが大きな要因だ。とくに開幕戦で痛感したタイヤ選択の難しさをバネに、第2戦では2タイプを持ち込み、合わせ込みを慎重に行なった結果のセットアップだったからだ。
だが、今回は出力がダウンしているため、第2戦のようには走れない。また、路面温度も大きく異なり、酷暑、猛暑の中のレースが想定されるので、タイヤ選択の時点から状況が違っているのだ。

土曜日の公式練習では、ある不安が的中する。それはロングランでタイムは安定しているが「遅い」ことだった。
いつものように公式練習開始と同時に山内がコックピットに収まり、マシンのバランスチェックを行い、そしてタイヤを選択しセットアップを進めていく。アンダーステアの傾向が強いというコメントをベースにスプリングレートを変更し、最適値を探していく。
タイムは全体で8番手前後にいる。一旦この時点で井口に変わりユーズドタイヤで摩耗具合なども含め走行する。井口も同様にアンダー傾向でグリップが低い時の症状だという。
再び山内に変わり、セット変更を繰り返す。車高を1mm下げてみる、リバンプ側だけ減衰を上げる、下げる、加速時にリヤの沈み込みを抑える、上げる、などなどシチュエーションごとにベストな設定を探していく作業がつづいた。タイムは全体11番手付近だ。タイムは安定しているが「遅い」のだ。
井口にタイムは揃っていて、いい感じなのではないか?と聞けば「いや、あと0.5秒以上速くないとダメです。決勝では前に行けないです」表情は曇っている。
バランスは取れてきているが、タイムを上げきれていない状況で予選を迎えた。Q1はいつもなら井口が走り、Q2で山内がポールを狙うという流れだが、今回は山内がQ1を走る。

井口は公式練習でユーズドでしか走行しておらず、セットアップの流れも体験していない。そのため、山内でまずはQ1を通しておいて、準備が不十分だった井口にはQ2で頑張ってもらって順位を上げるという作戦にした。
そして山内はB組の5番手でQ1を通過した。Q2で井口にトップ10に入って欲しい期待を持って臨んだが、結果は12位だった。
井口はポジションを上げられなかったことに責任を感じ、チームに謝罪している。視線に落ち着きがなくなり「やらかした」感を自身で感じているようだが、それは全く違う。

今回の井口はいつも以上に負担が大きかったに違いない。3ヶ月ぶりにBRZ GT300に乗り、スイッチポジションの確認から始まっている。さらに公式練習でもニュータイヤでの走行はなく、つまりアタックは行なっていない。そしていきなり、新品タイヤでのフルアタックという流れで、逆にいえば井口だから12番手のタイムが出せたとも言える。実際、Q1の山内のタイムを上回っているのだから。
責任感の強い井口らしく、結果をすべて自分の責任として受け止めていたのだ。

小澤総監督は「まずまずです。中段グループに入れば、決勝で前に行けるチャンスはあると思うので」と12位を評価していた。

全員が正しかった。それでも勝てなかった理由
決勝レースはウォームアップ走行が終わりグリッドに並んでいる時にスコールが来た。しかも大粒の雨。各チームレインタイヤを用意し天候を見ながらタイヤ選択を考えている。ピットクルー退場まで2分の時、多くのチームがスリックを選択していた。が、BRZ GT300はレインを選択した。

そしてSC先導でレースが始まる。SCが3ラップ先導してグリーンなった。GT500がグランドスタンド前を通過すると64号車が宙を舞うアクシデントが発生した。レースは赤旗中断となった。幸い64号車のイゴール・フラガ・オオムラに怪我はなかったようだ。
コースに散乱したパーツをかたづけ、ふたたびSC先導でレースが再開した。BRZ GT300はレインタイヤを装着したままだが、路面が完全なドライ路面に変わっている。しかし赤旗中にマシンに触ることはできないため、タイヤ交換はできない。
SC先導2ラップしたときにピットオープンになった。BRZ GT300はすぐさまピットに入りスリックタイヤに交換した。このとき、予選で使ったタイヤを装着している。ドライバーは井口のままだ。井口は最後尾から追い上げるレースとしてコースに戻った。
その井口はすぐさま29位から25位までジャンプアップし、さらに上位を目指している。調子はいいようだ。ドライバー交代が許されるミニマム周回数を超えても井口は走行をつづけ順位を戻していく。25周目に入ると井口からタイヤが落ちてきたと無線が入り、山内と交代の指示が出た。
ピットに戻り、BRZ GT300はフルサービスを受けてピットアウトする。21位でピットインしたが、ピットアウトすると25位だ。山内の猛追が始まる。このタイミングでは各チームともピットインをするため、順位が難しいが20位付近にポジションしている。

全車がピットインを済ませると山内は16位にいた。順位は厳しいがトップとは45秒差だ。しかしレースも終盤に差し掛かると山内の猛追は止まった。前を走る31号車に追いつけなくなっていく。16位のまま周回を重ね、残り8周となったところでタイヤに不安があることを無線で伝えてくる。
そして残り7ラップ。突如左フロントタイヤがバーストした。この時点でレースからは脱落したが、山内はスロー走行しながらピットに戻り、フロント2本のタイヤを交換してレースに戻った。結果2周遅れの28位でチェッカーを受けた。
ピットに戻った山内の顔に表情がなくなっていた。無表情だ。内心は激しい怒りがこみあげていたに違いない。だが、みんなが努力していることもわかっている。どこにもミスがない、でもタイヤが壊れた。このやるせない気持ちを整理するのが精一杯だったのだろう。
すべてを疑え、答えはまだマシンの中にある
第2戦のトラブルも左フロントタイヤのバーストだった。何が原因なのか、タイヤではなくBRZ GT300に原因がありそうだ。ライバルチームでタイヤバーストは発生していない。しかし、マシンは前年からのキャリーオーバーだ。
ただエンジンが変わりフロントが約50kg重くなっている。とはいえ、そのバランス調整はできているため、重量増がその直接的原因ではない。だとすると、重量とパワーが変わり、特性が変わったことで、車体のアップデートが間に合っていない可能性もある。
次戦の鈴鹿まで2週間のインターバルしかないが、チームは原因を探り、対策をしなければならない。状況は厳しいが鈴鹿大会の金曜日には明るい表情を見せて欲しい。
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