2026年シーズンのSUPER GTシリーズへ、SUBARU BRZ GT300はエンジンをEG33型ツインターボに変更して挑むシーズンとなった。車両重量は1200kgが最低重量だったが、1250kgに増えBoPに変更はなく+70kgで、基本重量1320kgでセットアップをしていく。
前後の重量配分も変わり、走り方も少し変化させる必要があるなど、変更点は目に見えないところでも起きている。また世界に一台しかないスペシャルなBRZ GT300は、そうした変更点が多々ある中で、限界領域での競争を行なった時、どんなトラブルが発生するのか、想定・検証できない難しさがある。開発エンジニアのこれまでの経験と知識だけでは対応できないものが残されていると言っていいだろう。
悔しさの岡山から、備えの富士へ

ゴールデンウイークの真っ最中、毎年恒例となった富士スピードウェイでのSUPER GT第2戦「FUJI 3Hours レース ゴールデンウィークスペシャル」には前年を上回る8万3600人のファンが集まっていた。
開幕戦の岡山ではこれまでの「“攻め”から勝つための走りへ」切り替えて挑戦してみたものの、Q1予選を敗退し、後方からの追い上げレースとなった。そしてフタを開けてみれば「均衡するラップタイム 打開策見出せず」といった展開がつづき、結果的には「言葉にならない悔しさ 静かな敗戦」となっていた。
その反省を踏まえ、第2戦では慎重にタイヤ選択を行ない、それぞれのタイヤでセットアップも決め込み、路温変化が起きてもすぐに対応できる体制を作っていた。それは予選前の公式練習で2タイプ持ち込んだタイヤのそれぞれでセットアップを作る作業だった。

公式練習では路温が40度を超えており、その時点でタイヤは決め込むことができたはずだが、万が一に備え、高温用以外のタイヤでも戦える準備を整えていたのだ。
そして迎えた予選では、公式練習の時に路温が下がることを知っていたかのように、32度まで下がっていた。明け方までの荒天の影響で強風が吹き荒れており、路面が冷やされていったようだ。路面温度が変わっても対応できるように準備していたことがハマったわけだ。
井口の判断が導いた、山内の歴史的ラップ
Q1を井口卓人が走行し、A組トップタイムをマークして予選を終えた。そしてB組の走行を眺め、タイムを見ると井口のタイムは破られていないのだ。井口はQ1全体でトップタイムをマークしていたことになる。そしてQ2に向けて、井口はさらにセットアップの変更を提案している。
山内英輝は「リヤのスプリングをもう少しあげるかどうか、迷っていたんです。ちょっとの変更でキャラクターが変わってしまうので、予選でそれを試すかどうか微妙でしたけど、タクちゃんがあげたほうがいいと言うので、思い切って変更しました。そのおかげですねこのタイムは」と話す。

山内はQ2予選でとんでもないタイムを記録している。1台だけが1分34秒台を記録し、かつ、2位に0.748秒という大差をつけていたのだ。1秒の中に10台、15台がひしめき、タイムが拮抗しているのがGT300クラスだ。その中でこのタイム差は驚異だ。実際、2位と3位のタイムは0.193秒差であり、3位と4位の差は0.104秒だ。山内のタイムがいかに飛び抜けていたのかが伝わるだろう。
山内の1分34秒314は山内自身が持つコースレコードの更新記録でもあり、ポールポジション獲得回数も17回に更新という、ダブルで記録を書き換える幸せがあったのだ。


すべてが噛み合った、その直後に
このタイムが出せた理由には新規エンジンEG33ツインターボの威力は間違いない。特に最高速度が288km/まで伸びていたのだ。小澤正弘総監督によれば「EJだったらあそこまでは伸びないと思います。やはりエンジンに余裕があるので、追い風に乗ることもできたのだとお思います」と話す。もちろん強風という追い風があったため#31号車も同じく288km/hを計測していた様子だ。ただ、それだけではなく、前述のタイヤへのセットアップの作り込みができていたことも大きな理由だ。
そうした表に出てこない対策をとっていたことで、山内の力を存分に発揮できる環境を提供できたというわけだ。だから、開幕戦でのモヤモヤは晴れ渡り、全てが噛み合った結果がコースレコードを産み出したというわけだ。
そして迎えた決勝。ポールポジションから山内がスタートをし、ダブルスティントで後続を引き離す。そしてラストは井口で逃げ切る作戦で挑んだ。
じつは決勝レース前のウォームアップ走行で、左フロントタイヤがバーストするトラブルが発生していたのだ。山内は無線で「エアが抜けた」と伝えてきた直後、パンク状態からすぐにバーストしてしまったのだ。幸いサスペンションには影響なくタイヤ交換だけで決勝レースを走ることができた。

追い上げの先に待っていた、無情な結末
決勝では山内の「逃げ」に期待がかかったが、思うように後続を引き離せない。2番手の#31もBRZと同じトップスピードを持つLC500hだ。スタートから5ラップ時点で3.2秒の差をつけていたのだが、6周目からは逆に差が縮まり始め、11周目には1秒のリードもない接近戦になったのだ。

テールツーノーズの展開がしばらくつづいていたのだが、最初のピットインまであと数ラップのタイミングで再び左フロントタイヤがバーストしてしまったのだ。またセクター1を走行中だったため、ほぼ1周をスロー走行することになり、順位は下がっていく。

ピットに戻ったBRZ GT300はルーチンの作業としてタイヤ4本交換と給油を行ない、ドライバー交代は行わずそのまま山内はコースに戻った。しかし順位は大きく下がり、27番手となっていた。ところが最初のピットインをするマシンもまだまだ多く残っていて、正確な順位は見えてこない。
だから周回を重ねるごとに順位はあがり、また山内も戦闘体制で先行車を撃沈させているので、みるみる順位をあげていくのだ。2回目のピットインの時には7位まで順位をもどしていたのだ。

そして井口がラストスティントを走り、上位マシンを追いかけていくことになる。しかし井口がコースに戻ると17番手付近にポジションしている。2回のピットインは義務なので、すべてのマシンがピットに入る必要があり、未消化のマシンが続々とピットに入る。井口も徐々に順位を上げていき、残り20分となった時点10位に戻していた。トップ10フィニッシュが見えていたその時、井口は無線で「抜けた」と一言あり、マシンをコース外へ出してレースを終えてしまったのだ。
小澤総監督は「正確にはバラしてみないとわかりませんが、駆動系のトラブルです」と短くコメントしていた。前年の富士スピードウェイ3時間時レースでもラストラップにエンジントラブルが発生し、チェッカーを受けられず、リベンジの意味もあったのだが、返り討ちにあってしまった格好になる。
これが世界に一台しかないレーシングカーの難しいところと言えそうだ。想定するトラブル対策は織り込み済みとしているものの、その想定範囲を広げてアップデートを試みることになるのだろう。手のつけようのない強さだと言われるBRZ GT300を期待して、サマーブレイクを過ごすことになる。
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