メルセデス・ベンツ日本(MBJ)は2018年3月1日、フラッグシップセダンであるSクラスに新技術のISG(インテグレーテッド・スターター・ジェネレーター)を搭載した「S450」、さらに装備を充実させた「S450エクスクルーシブ」、および13cm全長を拡大して後席の空間を広げた「S450ロング」の3モデルを追加し、全国の正規ネットワークを通じて予約注文の受付を開始した。なお、デリバリーは4月頃(S450ロングのみ夏頃)からを予定している。
今回追加された3モデルはISGに加えて、コンパクトでバランスに優れる新型直列6気筒エンジンのM256、48V(ボルト)の電気システム、さらに電動スーパーチャージャーなどを新たに搭載することにより、効率性・快適性・高性能化を同時に実現したモデルとなっている。
エンジンとトランスミッションの間に配置されたISGとは、最高出力16kW・最大トルク250Nmを発生する電気モーターで、オルタネーターとスターターの機能も兼ねている。この電気モーターと48V電気システムにより、従来のハイブリッド車のような回生ブレーキによる発電を行ない、約1kWhの容量のリチウムイオンバッテリーに充電。エンジンが低回転の時にはその電力を利用して駆動をアシストして、高い効率性と力強い加速を実現する。
従来の12Vから48Vまで高められた電気システムにより、動力補助に十分な出力を得ることができる一方、60Vを下回る電圧としたことで、専用の乗員保護機構は不要となる。スターターが従来より高出力な電気モーターとなることで、エンジン始動時の振動を抑え、エンジンスタートおよびアイドリングストップの際の再スタートの快適性を向上している。
また2秒以下のエンジン停止は、アイドリングストップをしない時よりも燃料消費量を増加させることから、ドライバーの走行データやレーダーセンサーからの情報をもとに、エンジンが2秒以上停止しないと予測した場合には、あえてエンジンを停止しない機能を採用している。さらにアイドリング時には電気モーターの充電電流を調整することで、エンジン回転数を毎分520回転という低回転で安定的に保つことを可能にし、効率性や快適性、静粛性にも寄与している。
今回の3モデルに搭載されたM256エンジンの排気量は3.0Lで直噴ターボチャージャーとの組み合わせ。このエンジン単体で最高出力367PS(270kW)、最大トルク500Nmを発生する。メルセデス・ベンツにとって1997年以来約20年ぶりの直列6気筒で、電動化を前提にして設計された初めてのパワーユニットとなる。
直列レイアウトのため、エンジンブロック左右のスペースに補器類を配置することが可能になったことに加えて、従来はエンジン回転を動力源としていたエアコンやウォーターポンプなども電動化されたため、エンジン前部のベルト駆動装置が不要となり、スペース効率を改善している。
またエンジン近接型の触媒を採用し、より効率的な排出ガス処理を可能にしている。さらに12mmオフセットされたエンジンや、シリンダーウォールにスチールカーボン材を溶射コーティングするNANOSLIDE摩擦低減加工を施すことで、フリクションロスを低減している。
今回の3モデル追加では、スーパーチャージャーも新たなテクノロジーだ。排気によるターボチャージャーが効果を出しづらい、低回転域で過給を行なう電動スーパーチャージャーを搭載することにより、ターボラグを解消。電動スーパーチャージャーとISGによるモーターの動力アシスト、そして排気を動力源とするターボチャージャーとの組み合わせで、あらゆる回転域で俊敏なエンジンレスポンスを実現しているとしている。
ちなみに今回の3モデルが発揮する最高出力と最大トルク(367PSと500Nm)という数値は、同じ排気量3.0LでもV型6気筒ツインターボエンジン(型式名は276M3)を搭載する「S400」と奇しくも同一となっている。
今回Sクラスに追加された3モデルの価格などは以下を参照。