2026年8月上旬、国内主要自動車メーカー7社が2027年3月期の第1四半期決算を発表した。
今回の決算発表に大きな影響を与えたのは、中東情勢、歴史的な円安の為替、そして決算発表直前の7月28日に発生した令和8年熊本地震だ。

熊本地震は部品サプライヤーの被災を通じて複数メーカーの生産計画に影響を及ぼすと考えられる。
トヨタ:増収減益も通期見通しは上方修正、北米は黒字転換
トヨタの営業収益は13兆5254億円と前年同期から10.4%増加した一方、営業利益は1兆634億円と8.8%減少している。それでも四半期の収益は1兆4770億円と75.6%の大幅増となる。営業利益率は7.9%であった。

連結販売台数は239万5000台で前年同期比99.3%とわずかに減少したが、これは日野ブランド車2万6000台が連結から外れた影響が大きい。ハイブリッドをメインとする電動車比率は47.4%から55.3%へと向上した。

通期見通しについては、営業収益を51兆円から54兆円へ3兆円引き上げ、営業利益も3兆円から3兆4000億円へと4000億円の上方修正を行なった。トヨタは中東情勢の影響を受けながらも円安の恩恵や原価改善、競争力の高いハイブリッドの増販によって前年同期並みの水準を確保したといえる。

地域別営業利益では、北米が価格改定や為替、関税の低減などにより黒字転換したことが特筆される。一方、売上に大きく貢献している日本市場は諸経費増加で減益、中国市場は販売鈍化により減益となった。
通期見通し引き上げの背景には、ホルムズ海峡封鎖に伴う物流減分の見積もりを、当初の50%から25%まで圧縮できたことがある。すべての貨物を喜望峰まわりにするのではなく、中東近くで陸揚げして陸路輸送する代替ルートを構築した効果だという。
構造改革の進捗としては、グローバルで需要が強いハイブリッド車について、2026年に年間500万台を超える生産計画を掲げ、日本では2027年から2028年にかけて60万台規模のハイブリッド用電池生産ラインをニッケル水素電池からリチウムイオン電池へと切り替える次世代電池化を進める。米国テキサス州には第2工場を新設し、インドには新工場を2つ建設するなど、供給体制の強化にも動いている。

また同時に近社長は、営業利益を改善し、体質強化のために、さらなるコスト改善、損益分岐台数の低下、すなわち生産効率の向上を目指すことを明言している。
ホンダ:営業利益117%増で四半期最高益、熊本地震で国内生産に影響
ホンダの売上収益は前年同期比13.5%増の6兆615億円、営業利益は同117.4%増の5307億円と四半期として過去最高を記録している。税引前利益は同107.0%増の6050億円、第1四半期利益は同129.3%増の4509億円だった。

ホンダは前期の決算でEV関連投資に対する大規模な減損処理により、赤字に転落したが、事業として健全性を維持していることを示している。

ただい、好業績を牽引したのは2輪事業だ。インドやブラジルを中心に販売が拡大し、グループ販売台数は566万3000台に達した。営業利益は四半期として過去最高の2339億円、営業利益率は20.5%となっている。4輪事業は中国を中心としたアジアで台数を落としたものの、北米市場での販売が堅調で、営業利益1921億円、営業利益率5.0%を確保している。

通期の連結業績見通しについては、販売台数や原材料価格の前提は据え置いたが、為替レートの前提を1ドル155円(前回から10円の円安)に見直し、売上収益24兆1500億円、営業利益6500億円(1500億円増)、当期利益4000億円(1400億円増)へと上方修正している。

一方で、令和8年熊本地震で熊本製作所は9日間生産を休止し、順次復旧を進めているという。さらにグループ会社アステモの工場が震源地近くで被災した影響でダンパーなどが欠品し、埼玉製作所と鈴鹿製作所も合計5~6日間の生産休止を決定した。
スバル:営業利益44%減、独自金融事業へ参入
スバルの売上高は前年同期比3.0%増の1兆2508億5800万円だったが、営業利益は同44.3%減の425億7100万円、当期利益は同10.3%減の491億9400万円となっている。生産台数は21万3000台(3万4000台減)、完成車販売台数は22万台(2万3000台減)と、いずれも前年同期を下回った。

スバルも前期決算でアメリカ市場と自社工場でのEV関連投資に対する減損損失を計上し、大幅に収益を減らしているが、今回の第1四半期での営業利益の減益要因は、米国関税率引き下げで緩和されながらも依然として329億円の減益要因となっており、原材料や市況悪化による170億円の減益要因も影響している。

前年同期はアメリカの関税政策変更に伴う駆け込み需要の反動でディーラー在庫を積み増していたこと、矢島工場のBEV・ICE混流生産化改修を見据えて在庫車を積み増していたことなどから、今期はその反動で卸売り販売が減少している。通期見通しは1500億円の営業利益計画に向けて堅調に進捗しているとして、従来の通期見通しを維持している。
営業利益の対前年比増減要因では、事業環境変化で35億円、モノづくり活動で125億円、販売活動で353億円がそれぞれ減益要因となり、コスト改革の成果で一部を相殺したものの、全体では338億円の減益となった。矢島工場の混流生産は今夏後半に開始予定で、下半期にかけて生産台数は回復していく見通しだという。

また今回の第1四半期決算にあわせ、スバルはこれまでJ.P.モルガン・チェースと提携してきた北米の金融サービスについて、2030年をめどに独自の自動車販売金融事業へ参入すると発表した。新たな金融会社を設立し、顧客とディーラーとのつながりを強化して自動車金融により収益拡大を目指す方針だ。
マツダ:増収で四半期売上高過去最高、営業利益は黒字転換
マツダの売上高は前年同期比16.9%増の1兆2857億600万円で第1四半期として過去最高を記録し、営業利益は前年同期の461億1500万円の赤字から328億3600万円の黒字へと転換した。営業利益率は2.6%。経常利益、当期純利益もそれぞれ黒字化している。連結出荷台数は28万台(1万4000台増)、グローバル販売台数は30万4000台(3000台増)となった。ただ依然として営業利益率が低空飛行なのは今後の課題である。

一方でアメリカの関税負担が300億円程度発生する中でも黒字転換を果たした。市場別では日本、北米、欧州で販売台数を伸ばし、需要全体が低迷する中国市場でも前年並みを維持している。唯一減少したのは、悪化した中東市場と豪州である。

789億円の営業利益増加要因としては、出荷台数増加や高価格車へのシフト、米国関税率引き下げによる台数・構成で434億円、円安による為替収益で413億円、コスト改善で157億円の増益要因があった一方、インフレや中東情勢の影響を受けた原材料・物流費等で240億円の減益要因が発生している。

5月に発売した新型「CX-5」は主要市場での評価が高く、6月末までに日本で1万台以上、欧州で2万台以上を受注しており、今後の業績も新型「CX-5」の販売に依存することになる。
日産:前年赤字から黒字転換も、通期販売見通しは下方修正
日産自動車の売上高は前年同期比9.5%増の2兆9642億300万円、営業利益は前年同期の791億2400万円の赤字から778億8900万円の黒字へ転換し、営業利益率は2.6%となり、営業利益率は依然として極めて低い水準にある。経常利益、当期純利益もそれぞれ黒字化している。グローバル販売台数は70万1000台で前年同期からほぼ横ばいだった。

市場別の状況では、中国市場は新エネルギー車が好調で前年同期比7.2%増の13万台、北米市場は「ローグ」、「パスファインダー」、「フロンティア」などが牽引して前年同期比4.2%増の32万8000台となった。一方、欧州は競争激化などで同14.6%減の6万4000台、その他市場は中東情勢の悪化で同16.8%減の9万1000台と落ち込んでいる。

営業利益の増減要因では、原材料アップで235億円、インフレーションで140億円の減益要因があったものの、円安為替収益で350億円、関税影響で183億円、販売要因で237億円、モノづくりコスト低減で816億円などの増益要因が積み上がり、黒字転換を実現している。

一方で通期見通しについては、第1四半期の販売がほぼ横ばいだったことに加え、中国市場の需要減と中東情勢の混乱継続を見込み、グローバル販売台数と生産台数を期初発表からそれぞれ15万台下方修正し、主要財務指標は据え置いている。

経営再建計画「Re:Nissan」については、固定費・変動費で第1四半期に合計600億円を改善し、「開発の平均労務費単価20%改善」の目標を予定より3四半期前倒しで達成したという。2025年度分と合わせた累計改善額は約3150億円に達し、2026年度末までに5000億円削減という目標に向けて順調に進捗しているとしている。中国市場では新エネルギー車「Nシリーズ」が販売を牽引し、7月からは中国からの輸出事業も開始している。
三菱自動車:中東影響下でも増収増益、新型「パジェロ」で反攻
三菱自動の売上高は前年同期比2%増の6199億円、営業利益は同80%増の101億円、経常利益は同102%増の97億円、四半期純利益は同100%増の14億円と、中東情勢の逆風下でも増収増益を実現している。

グローバル小売販売台数は前年同期比8%減の17万9000台で、うち中東情勢の影響はマイナス1万5000台だったが、期初想定の範囲内で推移しているという。地域別では日本が同4%増の2万9000台と伸びた一方、ASEAN、豪州・ニュージーランド、ヨーロッパはいずれも減少している。

営業利益101億円の変動要因は、販売台数・車種構成の悪化でマイナス103億円、資材費・輸送費高騰でマイナス65億円となったものの、為替差益が128億円、売価改善により113億円などが押し上げ、トータル45億円の増益となった。
新型車では、中東情勢悪化の中でも「デスティネーター」の販売国・台数拡大を進めているほか、「エクスフォース」のHEVモデルを7月からインドネシアに投入している。日本市場では「デリカD:5」の小売販売台数が前年同期の1.5倍を記録した。

通期見通しは第1四半期実績を踏まえて期初見通しを据え置き、売上高3兆2600億円(前期比13%増)、営業利益900億円(同19%増)、当期純利益250億円(同150%増)を見込む。今秋投入予定の新型「パジェロ」はタイ工場で生産され、日本やASEAN、オーストラリアなどへ順次展開される計画だ。
三菱自動車の業績は、中国車が急成長している東南アジア市場でのシェアの確保、挽回にかかっている。
スズキ:インド・パキスタン好調で増収増益、営業利益は通期下方修正
スズキの2027年3月期第1四半期は、インド・パキスタンでの四輪販売増加や円安の為替効果を背景に増収増益となった。売上収益は前年同期比22.0%増の1兆7058億円、営業利益は同11.2%増の1580億円。金融資産評価益も加わり、第1四半期の利益は同80.0%増の1836億円と大幅に拡大している。

インドやパキスタンでの4輪販売台数増加、為替影響、原価低減が業績を押し上げた一方、中東情勢に起因する原材料価格高騰は逆風となっている。金融資産の評価益等により税引前四半期利益は同61.2%増の2832億円と、営業利益の伸びを上回る増加を示している。


通期業績見通しは前回予想から修正され、売上収益は前回比1000億円増の6兆9000億円(前期比9.6%増)へ上方修正された一方、営業利益は前回比300億円減の5400億円(前期比13.3%減)へ下方修正されている。当期利益は前回比400億円増の4200億円(前期比4.4%減)を見込む。為替の円安見直しや販売好調が売上・利益を押し上げる一方、原材料価格高騰が営業利益を圧迫する構図だ。

7社の決算総括
7社を通して見ると、今第1四半期を特徴づけたのは想定以上の円安の追い風と、見通しの立たない中東情勢の逆風に翻弄された第1四半期となっている。トヨタ、ホンダ、マツダ、日産は為替差益や関税影響の緩和を追い風にして業績を伸ばした一方、予測できない世界情勢や為替の変動というリスクを抱えているのが実情だ。
中東情勢では、ホルムズ海峡を巡る物流リスクへの対応が明暗を分けた。トヨタは代替ルートの構築によって当初の減分見積もりを半減させ、日産や三菱も代替ルートの確立や柔軟な販売戦略で影響を最小限に抑えている。
スバルは関税の影響以外に最大のマーケットである米国市場での競争激化と、電動車開発戦略の見直しという局面に立っているが、独自の金融事業参入という新たな一手で収益基盤の強化を図る姿勢を見せている。













