現在、ナビゲーション on オートパイロット(Navigation on Autopilot:NOA)の技術が注目を浴びている。この「NOA」はテスラがパイオニアであるが、中国市場では急速に普及しており、それに伴い中国のNOA開発企業のモメンタ社の技術が自動車メーカーのクルマに組み込まれている。

ナビゲーション on オートパイロット(NOA)とは、ナビで目的地を指定すると、最適な走行ルートが選択され、車線変更、追い越し、ジャンクションの分岐や出口への誘導を車両が自動的にアシストする機能で、ドライバーは交通を監視する義務はあるが、ハンドル手放し、ペダル操作不要の先進運転アシスト・システムだ。
NOAの急速な普及
中国のモメンタ社のNOA技術は、奇瑞汽車、上海汽車、広州汽車を始め中国製の160車種以上に搭載され、海外メーカーでは、メルセデス・ベンツ、BMW、AUDI、フォルクスワーゲン、GMなどに幅広く採用され、もはや中国での販売にモメンタの技術は不可欠になっている。もちろん、NOAを独自開発するグループもあり、ファーウェイは「ファーウェイADS」を開発し多くの自動車メーカーが採用している。この他に、小鵬汽車や理想汽車は自社開発のNOAを搭載している。
こうしたNOAは今では高級車だけでななく、通常の乗用車にまで普及し、ドライビングの世界は大きく変わろうとしている。完全自動運転の普及にはまだ時間がかかると予想されているが、NOAはすでに従来の車載ナビと先進運転支援(ADAS)を統合することで、新しいドライビングの世界を作り出している。

NOAにより、市街地、郊外道路、高速道路でハンズオフ(手放し)運転が可能になり、同時にドライバーの視線は道路に向け続けることで安全性も確保される。この結果、より滑らかでストレスの少ない運転が実現し、上位レベルの完全な自動運転が普及するより前にユーザーが求める利便性が実現している。
ただし現時点で、NOAによる走行が認可されているのはアメリカと中国だけであるが、日本では現在行なわれている実証実験を経て2027年後半には認可される予定だ。
日本では、テスラ、イギリスのWayve(ウェイブ)社とNOAを共同開発している日産が最初に認可を受けると予想される。
自動運転タクシー
一方、自動運転タクシー(ロボタクシー)は、アメリカのWaymo(ウェイモ:Google傘下)、中国のポニーAIが先行しており、続いて最近、テスラがロボタクシー「サイバーキャブ」を投入しつつある。「サイバーキャブ」は、レベル4自動運転を前提に、ステアリングも、ペダル類もなくした画期的な仕様となっている。

これらは、乗用車向けのNOAではなく、ドライバなしの自動運転システムを搭載している。完全な無人運転を前提としているため、Waymoの場合はAIによるNOAだけでなく高精度地図と多数のセンサーを装備し、従来からのルールベース(決められたシナリオ下での一定の行動)の技術も併用しているのが特長だ。

一方、テスラの「サイバーキャブ」はカメラのみをセンサーとし、AIによる自動運転を行なうシステムと鳴っている。
中国のポニーAIは、ルールベースのディープラーニングAIと先進的AIコントロールを統合したシステムを採用している。ポニーAIの特徴は、現実世界の物理法則や他者の挙動ルールを理解した仮想のシミュレーターを統合した最先端のAI運転システムを実現していることだ。
NOAの技術背景
NOAの技術は、マルチカメラ、LiDAR、ミリ波レーダーのデータを統合し、カメラ映像と通常の道路地図からAIがリアルタイムで道路構造を復元・生成することで自律走行を行ない、「交通ルールの遵守(車間距離、安全マージン)」を確保するルールベースのセーフティガードと、「人間のように滑らかな走行プロファイル」を生成するディープラーニング+E2E AIを融合させたシステムだ。

E2Eとは、センサー入力から直接、車両の操作命令(出力:ステアリング角・アクセル・ブレーキ)を一括して生成するAIモデルである。従来は、センサー検知→認知→予測→計画→制御という手順で操作が行なわれるのに対し、E2EはAIが認知、予測、計画、制御を一括して行なう。

このためAIの領域はブラックボックス化しているといわれているが、最新のAIは「世界モデル」を組み込むことでより精度、信頼性を向上させている。「世界モデル」とは、数秒先の未来の状況や周囲の動きを予測・生成し仮想シミュレーションを行なうことでE2Eの判断精度を高める思考エンジンである。
これによりNOAが実現し、通常の道路地図情報、カメラ、レーダーなどのセンサー情報をベースに都市部の道路、郊外道路、高速道路で手放し運転が可能になっている。
NOAの現状と開発
NOAは技術的に大きな前進であり、今では高級車だけでなく一般的な乗用車で採用されつつある。しかし、その普及速度は世界各地域で均一ではない。中国の自動車メーカーが驚異的なペースでNOAを展開している一方、欧州や北米の自動車メーカーは後れを取りつつある。

世界屈指の高精度地図データ、道路情報のトップ企業のHEREテクノロジーズ社の上級副社長のフェルー氏は、「中国の自動車メーカーが先行しているのは、道路インフラが整っており、新技術の導入に積極的なため、より早く広く展開できるからです」とバックグラウンドを語っている。
また中国の道路地図は一般的な道路地図より多くの情報を搭載しており、これもNOAの普及を後押ししている。
NOAは、あらかじめ計画されたルートに沿って車両が走行し、レーン変更やインターチェンジの走行、カーブ手前での速度調整などを自動で行なわれ、その間もドライバーは常に交通環境を注視し、前方を見て状況を把握しているだけでよく、運転の負担が大幅に軽減されることになる。
レベル3やレベル4の自動運転システムは、特定の地図化されたエリアに限り、ドライバーが前方から目を離すことを許可されるが、レベル2+のNOAは“視線は前方、手放しはOK”という、より一貫性があり実用的な仕組みとなっている。現実のレベル3自動運転システムでは、状況によって、例えばトンネルや車線が不明確な場所ではシステムがオンオフを繰り返すためその都度ドライバーが運転を行なうというストレスがあるが、NOAは日常の運転をよりスムーズでストレスの少ないものにすることができる。
2030年までに、中国ではNOAの普及率が現在の10%から25%へ急伸すると予測され、この急速な採用拡大が消費者がクルマに期待する基準そのものを変えつつある。
一方、欧州ではNOA採用率が現在の1%から2030年までに7%へ、米国では6%から13%へ伸びる見込みとなっているが、いずれも中国に遅れを取っている。
信頼性と安全性の高いNOAシステムの中心にあるのは、高精度なレーンレベル地図と、高度なAIという2つの基盤技術だ。
HEREテクノロジーズ社の上級副社長のフェルー氏は、「地図の役割は劇的に変わりました。いまや地図は、センサー、カメラ、AIモデルからなる認識スタックと連携し、リアルタイムで状況を把握する必要があるのです。NOAを安全に機能させるには、そのシナリオに対応できるよう訓練されたモデルが必要です。そうすることで、ハンズオフ運転が日常の現実になるのです」と語る。
HERE社は、自動車メーカーのNOA開発を支援する体制を整えており、独自のHERE ADAS Mapや統合ライブマップなどを提供し、SDVアクセラレーターを駆使し、自動運転プラットフォーム企業、AIの専門企業、チップセットメーカーと密接に連携し、技術がシームレスに統合されるよう最適化することができるとしている。













