BMWは2026年7月22日、次世代EVシリーズ「ノイエ・クラッセ(Neue Klasse)」の市販第1弾となるSAVの新型「iX3」を日本で発売した。
「iX3」は「X3」の電気自動車版というだけではなく、BMWが今後10年以上にわたって展開する新世代車両アーキテクチャとソフトウェアプラットフォームを全面採用した初めてのモデル、ブランドの転換点となるモデルである。
ノイエクラッセ
1962年、「ノイエ・クラッセ」は経営危機に陥っていたBMWを救った伝説的なセダン・シリーズだ。パーソナルなスポーツセダンという新しい市場を切り開き、その後の3シリーズや5シリーズへと続くBMWブランドの礎となった。

今回発表された新しい「ノイエ・クラッセ」は、かつての名称を受け継ぎながらも、EV時代におけるBMWの新たなスタートを意味する。
発売される「iX3」は、新世代EV専用プラットフォーム、新しいデザイン言語、新世代のSDVソフトウェアアーキテクチャー、AI時代を見据えた電子制御システムが一挙に投入されている。
「iX3」は2025年9月にドイツで正式発表され、2026年春からデリバリーが開始された。生産は、新設されたハンガリーのデブレツェン工場で行なわれている。なお中国市場向けは中国・瀋陽工場で生産される。
第6世代 eDriveの実力
「iX3」最大の進化は、第6世代の電気駆動システム「BMW eDrive(Gen6)」の採用である。

従来世代と比較すると、バッテリーの搭載は従来のセル→モジュール→パック構造であったが、セルtoパック構造に変更され、モジュールケースが廃止され、軽量化、エネルギー密度向上、冷却効率改善、コスト削減が実現している。
また、駆動電圧が従来の400Vから800Vに高電圧化され、駆動出力、急速充電性能が向上。急速充電は最高400kW級の高出力充電器に対応している。最大320kWの急速充電器を使用すれば、15分間の急速充電で約395km走行分を充電できる。より高出力の350kW級充電器では15分間の急速で約420km相当の充電が可能になる。この結果、ポルシェ、ヒョンデ、起亜、メルセデスなど最新EVと同等水準に並ぶことになった。
そして駆動を担当するモーターは従来は永久磁石同期モーターであったが、今回からフロント用は誘導式モーター、リヤ用は従来から永久磁石を使用しない巻線界磁同期モーターを使用してきたがより高性能なモーターに進化している。
フロントモーターは123kW(167ps)、最大トルクは255Nm。リヤモーターは240kW(326ps)、最大トルク435Nm。システム最高出力は345kW(469ps)、最大トルクは645Nmに達する。0-100km/h加速は4.9秒。最高速度は210km/hでリミッターが作動する。
フロントモーターは巡航時には出力がオフになり、この状態での磁力引きずりを解消している。リヤモーターは巻線界磁同期モーターになったことで、、レアアース不要、磁力制御の自由度向上、高効率化、回生性能向上などのメリットが得られる。
バッテリーセルは直径46mm、高さ95mmの円筒セルを新採用している。これはBMWがCATLやEVE Energyと共同開発した「46mm円筒セル」であり、従来角形セルよりエネルギー密度を大幅に向上させている。
そして「iX3 」が搭載するバッテリー容量は109.1kWhとなり、WLTCモードでの航続距離は906kmと、日本国内ではトップクラスの航続距離を達成している。
新たなEVの走り「Heart of Joy」
BMWが「ノイエクラッセ」で独自の走りの魅力として「Heart of Joy」を投入した。この走りの制御は、ブレーキ、ステアリング、トルク配分、回生ブレーキ力、駆動力を統合制御するため、統合制御型の新世代ビークルダイナミクスコンピューターを採用している。

従来は複数ECUで制御していたため応答にタイムラグが想定されていたが、「Heart of Joy」ではこれらを統合制御することで、より自然な減速、より正確な旋回、滑らかなトラクション制御、回生制御の最適化が実現している。

なおサスペンションは、フロントは伝統のロワアームがダブルジョイント式のストラット、リヤは5リンク式マルチリンクだ。
ソフトウエア・ディファインド・ビークル
「iX3」は車両制御を4基の高性能コンピューターへ集約した。4基のコンピューターとは、ドライビングダイナミクス「Heart of Joy」、先進運転支援システム(ADAS)、インフォテインメント、ボディ・コンフォートである。
BMWはこれを「Super Brain」と呼ぶ。将来的にはOTA(無線通信)によってAI機能も追加できる設計となっている。
ソフトウェア面では「Operating System X」を初採用した。このソフトウエアは、BMW ID連携、OTAアップデート、AI対応、App Store、YouTube、ディズニー、Zoom、ゲームなどに対応している。
インテリアの革新
「iX3 」はパノラミックiDriveを導入し、コックピットを一新し、従来のメーターパネルを廃止した。

新たに43.3インチBMWパノラミックビジョン、17.9インチセンターディスプレイ、3Dヘッドアップディスプレイを採用している。従来より視線移動を少なくし、多様な情報を確認できるようになり、安全性と操作性を向上させている。
43.3インチBMWパノラミックビジョンはフロントウインドウ下端の左右いっぱいに各種情報が表示されるため、これまでのBMWとはまったく異なる外見となっている。なお表示情報はカスタマイズが可能だ。

先進運転支援システム
先進運転支援システムは大きく進化した。「ドライビング・アシスト・プラス」はアクティブ・クルーズ・コントロール(ストップ&ゴー機能付)、レーンチェンジウォーニング(車線変更警告システム)、レーンディパーチャーウォーニング(車線逸脱警告システム)、ステアリング&レーンコントロールアシスト、サイドコリジョン・プロテクション、衝突回避・被害軽減ブレーキ(事故回避ステアリング付)、クロストラフィック・ウォーニング、ペダル踏み間違い急発進抑制機能を標準装備としている。
さらに、2027年に国交省の認可が得られる予定の「ハイウェイ・アシスト」も標準装備している。高速道路、自動車専用道路で最高130km/hまでのハンズオフ走行、車線変更支援、ミラーを見るだけで車線変更承認などEtoE技術を活用した高度な運転支援システムがが可能となる。
もちろんレベル2+であり、ドライバーの交通監視義務、いつでも手動で運転に備えていることが求められるが、日本市場向けBMWとしては最も高度な運転支援システムとなる。
なおこの「ハイウェイアシスト」は3年間は無料、それ以後は有料サブスクリプションでの使用となる。
デザインとパッケージング
ボディサイズは、全長4780mm、全幅1895mm、全高1635mm、ホイールベース2895mmのDセグメントサイズだ。


トランク容量は520Lで、後部座席を倒すと1750Lになる。さらに、フロントフードの下には、容量58Lのいわゆる「フランク」も設けられている。

エクステリアは、縦型キドニーグリル、縦型LEDヘッドライト、発光グリル、面構成を強調したボディ、フラットドアハンドルなど、新しいBMWデザインを全面的に採用している。


一方で2ボックス形シルエットやL字型テールランプなど、従来のBMWらしさも維持している。
インテリアも物理スイッチを大幅に削減し、水平基調のミニマルデザインへ刷新しており、従来のBMWの面影はほとんど残されていない。

新型「iX3」は7月下旬からデリバリーが開始される予定だ。また、今後は、エントリーグレードも追加されることになっている。

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