トヨタ 常識破りの設計で生まれた「ヤリス」の注目ポイント 第1弾

トヨタのBセグメントのハッチバック「ヤリス」は、従来の車名「ヴィッツ」を捨て、世界統一の車名に改め、2019年10月にワールドプレミアが行なわれた。その後、プロトタイプがお披露目されたが、依然として詳細な諸元、価格などが未発表。しかし、テクニカルな情報はいくつか明らかになってきたので、ヤリス情報の第1弾として、その実像に迫ることにする。

トヨタ 常識破りの設計で生まれた「ヤリス」の注目ポイント 第1弾

異例の取り組み

ヤリスの正式発売は2020年2月が予定されており、ヤリスのガチライバルとなるホンダ・フィットも全く同じタイミングでの発売となるため、燃費性能などを始め、クルマの基本情報が両車ともまだ見えていない。もどかしい状態になっているが、まずは画期的なコンセプトを実現したヤリスの詳細に迫りたい。

トヨタ 常識破りの設計で生まれた「ヤリス」の注目ポイント 第1弾

トヨタのBセグメントは日本ではヴィッツ、ベルタ(2005年〜2012年:4ドアセダン)という車名が与えられていたが、海外ではヤリス、ヤリス・セダン(地域により各種の車名を持つ)であった、今回登場するニューモデルからはグローバルでヤリスに統一される。

トヨタ 常識破りの設計で生まれた「ヤリス」の注目ポイント 第1弾

つまりカローラに続いて、グローバルで車名やプラットフォームを統一採用するという新たな方針になっている。また従来はヴィッツのバリエーションがアジア地域で展開されていたが、ダイハツのDNGAプラットフォームを採用する新しいBセグメントがアジア地域を担当することになったため、新型ヤリスは成熟したコンパクトカー市場を持つヨーロッパ、日本にターゲットを絞っている点も画期的だ。

新型ヤリスは、新世代プラットフォームTNGAの第4弾となるBセグメント版「TNGA-B」を採用し、パワートレーン、シャシーなど、すべてを一新しており近年では珍しくゼロからの開発となっている。

開発コンセプト

ヤリスの開発コンセプトは、走ることが楽しくなる真の軽快感、ひと目見ただけで走りを予感させるデザイン、世界トップとなるハイブリッド車の低燃費、安心・安全な先進装備を実現することだった。そして「小さいクルマ」であることにこだわり、サイズ的に小さいこと、軽快なハンドリング特性、コンパクトカーの常識を破る上質な乗り心地を狙っている。

トヨタ 常識破りの設計で生まれた「ヤリス」の注目ポイント 第1弾

小さいクルマであるために、ホイールベースはヴィッツより40mm延長され2550mmとしているものの、ボディサイズは全長3940mm(ヴィッツ比で-5mm)でリヤのオーバーハングは45mm短縮され、全高は1470mm(-30mm)として低重心化を図るなど、ボディサイズを拡大するというこれまでの常識を破っている。トヨタはこのダウンサイズを、タイヤの四隅配置、凝縮キャビンと呼んでいる。

ヨーロッパ仕様のヤリス。前後フェンダーの張り出しがよりダイナミック。ホイールも5穴を採用している
ヨーロッパ仕様のヤリス。前後フェンダーの張り出しがよりダイナミック。ホイールも5穴を採用している

興味深いのは、新型ヤリスは日本とヨーロッパでは微妙にボディサイズが違い、ヨーロッパ版はワイドボディになっている。この点はカローラと同じだ。

ヨーロッパで発表されているボディサイズは、ホイールベースが10mm長い2560mmで、全長は共通。全幅が日本仕様は1695mmで5ナンバーサイズになっているが、ヨーロッパ仕様は1745mmだ。全幅がよりワイドでリヤフェンダーの張り出しなど、ヨーロッパ仕様のほうがよりダイナミック感が感じられる。

WRC参戦車のベースモデルで、ターボエンジン、4WDの「GRヤリス-4」
WRC参戦車のベースモデルで、ターボエンジン、4WDの「GRヤリス-4」

WRCのベース車

さらに、WRCベース車として「GRヤリス」も後にラインアップに追加される。このモデルは4WD、ハイパワーのターボエンジンを搭載し、ボディは2ドアのスペシャル・バーションだ。位置づけとしては従来のスーパーチャージャー付きの「ヴィッツGRMN」の後継モデルといえるが、今回はWRC参戦車を造るための公認取得用のモデルで、規則により最低2万5000台の生産が求められている。

トヨタ 常識破りの設計で生まれた「ヤリス」の注目ポイント 第1弾

パッケージ的にはリヤのオーバーハングの縮小、全高の低下に合わせAピラー位置を後退させ、フロントシートの着座位置は21mm低められ、58mm後退している。つまりドライバーはより低い位置に足を伸ばす形の着座姿勢となった。言い換えると、通常このクラスのクルマは、室内スペースを確保するためにアップライトな着座姿勢となっているが、あえて低くしているのだ。ただし、フォルクスワーゲン・ポロと比べるとフロントの着座位置ははわずかに高く、逆にリヤの着座ポイントは低くなっている。

リヤシート位置も20mm後退し、32mm低下しているが、前後シートの間隔は従来より37mm狭くなっている。つまりリヤ席の足元スペースは狭くなってもより低い位置にこだわっているのだ。またデザイン的にもリヤのCピラーは太く、後方に向かって絞り込まれているため、クーペ的でリヤ席は閉塞感が強まっている。コンセプト的にもパッケージ的にもフロントシート優先であることが明確で、相当に思い切った決断がされていることがわかる。

TNGA-Bとボディ

新型ヤリスは、Bセグメント用のTNGA-Bを新開発している。低重心、軽量・高強度/高剛性のボディ、高性能シャシーがハイライトだ。そのため、プラットフォームはもちろん、ボディの骨格、サスペンションなどもすべて刷新されている。

TNGA-B
TNGA-B

ボディ骨格の構造などは、従来の世界ラリー参戦車「ヤリスWRC」で得られた経験をフィードバックしているという。

フロントは太い直線的なフロント・サイドメンバーと、下側のサスペンション・メンバーの2段構造で、それぞれが衝撃吸収性能を持つ。さらにボディ骨格は環状構造が多用されており、特にフロント・カウル部に「日」の字型の強固な構造を採用。フロア面ではセンタートンネルとフロア・クロスメンバーが一体に結合され、その工法はリヤのサイドシルとリヤサイド・メンバーを結合している。

トヨタ 常識破りの設計で生まれた「ヤリス」の注目ポイント 第1弾

リヤ・ゲートの環状構造はリヤ・サスペンション・タワーに直結、そしてルーフサイド・フレームとBピラーも一体結合構造とするなど、従来のトヨタ車には見られなかった環状骨格構造が駆使されている。

またボディの部材ではAピラー、Bピラーに高強度のホットスタンプ材で1.3GPa級の超高張力鋼板を採用。ちなみにホットスタンプ材は日本仕様はトヨタ系列会社で製造し、海外生産モデルはグローバルで定評のあるゲスタンプ社製を採用している。さらにサイドシル外板部も1.2GPa級の超高張力鋼板を採用するなど、従来の常識を上回る高強度材を採用している。

車両重量はハイブリッド車で従来より50kgの軽量化がされ、ねじり剛性は従来比30%以上向上しているという。

COTY
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