スバル ニュルブルクリンク24時間レース2024シェイクダウン「24年はなんとしても勝って帰ってきます」

スバルテクニカインターナショナル(STI)は、2023年12月21日、富士スピードウェイで2024年のニュルブルクリンク24時間レースに出場する「SUBARU WRX NBR CHALLENGE 2024」シェイクダウンテストを行なった。

2024年のチーム運営体制は、辰己英治総監督を筆頭に、チーム監督はこれまで通り沢田拓也氏が務め、プロジェクトリーダーであった渋谷直樹氏が技術監督に就任。また、チーフエンジニアは引き続き宮沢竜太氏が担当する。

その他、各領域に若手を中心としたSTIの社員が主要スタッフとして現地に赴く予定だ。また、11月に実施した選考会により選抜され、現地に帯同する全国の精鋭ディーラーメカニック8名も紹介された。

新型を投入した2023年のニュルブルクリンク24時間レース

13回目の挑戦となった2023年のニュルブルクリンク24時間レースは、VBH型のWRX S4をベースとした新型レースカー(FA24型ターボエンジン)が導入され、初のSP4Tクラスでの参戦だった。
予選は総合51位(クラス1位)でベストタイムは8分56秒622。決勝は総合77位でクラス2位、ベストタイムは予選を上回る8分55秒048を記録。周回数は114ラップでゴールした。

スペアエンジンに載せ替え再スタートがきられた(2023年)

チームは本番に向け国内テストを12回実施したものの、決勝では数多くのトラブルが発生してしまった。エンジン冷却水回路の不良、発電の不具合、サスペンショントラブルによるガードレール接触、 エキゾーストマニホールドからの排気漏れも発生。そのためレース中にサスペンションとエンジンの交換も行なった。
作業完了まで4時間半かかったが、コース復帰後はトラブルもなく完走。クラス2位という悔しい結果だったが、8分55秒048という過去最速のベストラップを更新することができた。

クラス優勝に向けて進化のポイント

ブリーフィングでは沢田拓也監督から2024年の目標が発表された。予選はポールポジション、ラップタイムは8分50秒を目標。決勝レースはもちろんSP4Tクラスの優勝、WRX史上最多の146ラップを更新。 さらに上位クラスのSP8Tを含めトップフィニッシュを目指す。

クラス優勝を目指すための車両製作で行った内容は以下の通りだ。 

・フロントスタビライザーブラケットの締結方法を改善
この締結部が原因となり旋回中にフロントスタビライザーの機能が失われた結果、ロール剛性の急激な変化が生じコースアウトしてしまった。
対策として、締結軸力のアップと安定化を図るためにベンチでの緩み耐久試験を実施し、ニュルブルクリンクのコース周回数に換算した定量的な評価を行なうことで、安全率を十分に取った確実に緩まない対策を施している。

・ホイールリムの形状を最適化
車両の性能向上、特に旋回性能をさらに引き上げるべく、STIフレキシブルーパフォーマンスホイールを導入。STIが唱える「運転が上手くなるクルマ」に必要不可欠な微少舵応答を追求した結果生まれたもので、車両の前輪後輪それぞれの役割を最大限活用するべく、リムの形状を最適化した。これにより微少舵応答の向上に加え、限界性能の向上も達成。 
また、このホイールの思想は将来のコンプリートカーへの採用も視野に入れており、量産技術の先行開発の場としてNBRを活用している。

・空力アイテムのアップロード
これまでのNBR参戦の中でも行なってきたマット塗装や鮫肌による空力的な表面処理についての検証を今年度も行ない、さらに積極的なダウンフォースの向上に取り組んでいる。
フロントダウンフォースの向上については、アンダーパネル形状を改良し、先端部分をラウンドシェイプ化することで旋回性を向上させた。また、リヤウィングの翼端板を拡大し、トランクリッド後端にスポイラーを付加することで走行安定性を高め、エンジンフードのエアアウトレット、フロントフェンダールーバー、リアコンビランプ上部に空力的付加物を追加することで、車両全体の空力前後バランスを改善している。

・パーユニットの信頼性アップ
FA24エンジンの熟成をさせて23年に発生したトラブルの対策を行ない、今回は4項目についての説明があった。

①エキゾーストマニホールドの排気漏れ
対策としてインコネル系素材の採用。構造の変更を行ない、高温強度、耐久性向上を果たした。シンプルな構造とすることで2kgの軽量化にも成功している。

②オルタネーター発電不良
代替品のオルタネーターに変更し、ベルトレイアウトの見直しを行なうことで信頼性向上と1.1kgの軽量化を果たすことができた。

③冷却水のオーバーフロー
冷却水路の全体的な見直しを行ないエアボリューム式タンク(気液分離タイプ)を新設。これらの対策により、エア抜け性の向上と水圧の安定化を図りオーバーフローの対策を行なった。

④エンジンの強化
ピストンリング、スタッドボルト、ヘッドガスケットの強化を行ない、信頼性や出力の向上、さらに熱効率の改善を果たすことができた。 

また、マシンのカラーリングは「2024年こそクラストップでチェッカーフラッグを受ける」という強い意気込みが込められ、全体的にSTIを象徴するカラーリングを継承しながら、チェッカーから桜の花びらに変化させるデザインで縁起の良さを表現している。

この他、2024年の新しい取り組みとしてスマートフォン用アプリ「アズールレーン」とのコラボレーション企画も実施される。ブリーフィングの最後は辰己英治総監督からのメッセージで締められた。

辰己英治総監督のコメント
「2023年は、新型のデビューウインを果たそうと思ったのですが、我々もまだ力不足で皆さんに協力いただきながら結果に結びつけられなかったことは残念です。その分、2024年は絶対に勝ちたい。 新しい技術も投入して、23年にドイツに忘れてきたものをどうしても取り返したいという意気込みで、24年はなんとしても勝って帰ってきます」

左から平岡泰雄STI社長、辰己英治総監督、沢田拓也監督

今回のシェイクダウンでは開発ドライバーとして佐々木孝太選手と久保凛太郎選手が紹介された。今後のスケジュールは、1月に開催される東京オートサロンで正式にWRX S4のハンドルを握るドライバーのラインアップが発表される。

佐々木孝太選手(左)と久保凛太郎選手

また、レース車両はスペア部品やツール類などと共にドイツに輸送され、4月第2週の予選レースに出場。その後、チームは5月中旬にディーラーメカニック8名と合流して再度ドイツへ渡り、2024年5月30日から6月2日に行われるレース本番に臨むことになる。

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