【アルファロメオ トナーレ 試乗記】これはアルファロメオだね。そう感じさせる乗り味とデザインセンス

アルファロメオから新車種となるコンパクト・クロスオーバーSUV「TONALE・トナーレ」が2023年1月に発表され、早速試乗してきた。

トナーレは全長4530mm、全幅1840mm、全高1600mm、ホイールベース2637mmでCセグメントサイズ。アルファロメオはご存じのようにステランティスグループ傘下にあるブランドで、そのステランティスには多くのブランドが存在する。したがって共有する部品類も増え、ある意味量産効果が狙える組織になっている。

試乗車は日本導入特別仕様車のEdizione Speciale(エディツィオーネ・スペチアーレ)

その中でトナーレはジープ・コンパスやレネゲードに使われるSCCS(Small Common Components and Systems platform)プラットフォームを改良して採用し、北米ではダッジ・ホーネットの名称でも販売されている。もちろんエクステリアデザインは異なり、パワートレインやプラットフォームなどを共有し、制御で個性を作るといった手法が投入されている。

そのトナーレとは、イタリア北部のトナーレ峠由来の名称で、名前が示すように峠を走るとアルファロメオらしいダイナミックなドライビングプレジャーがあるモデルだ。

搭載するパワートレインは1.5Lの4気筒ガソリンターボに48Vマイルドハイブリッドを採用している。アルファロメオは2027年までに全モデルの電動化を目指しており、その第1弾がこのトナーレなのだ。

48VマイルドハイブリッドのモーターはP2ポジションに配置されているので、エンジンとミッションの間にクラッチを介して挟まれている。出力は20ps/55Nmで48Vだけに出力は小さいが、発進を担当するなど駆動の役目を果たしている。ちなみにリチウムイオンバッテリーは0.77kWhだ。 

そしてもうひとつ12Vのベルトスタータージェネレータ(BSG)も搭載しており、こちらはスターターと回生エネルギーを担い、当然P0ポジションに装備している。

このツインモーターマイルド・ハイブリッドに7速DCTを組み合わせ、エンジンはミラーサイクル運転をする環境エンジンになっている。

このパワートレインを前述のSCCSプラットフォームに搭載し、前後サスペンションをマクファーソン・ストラット形状としている。このあたりでハンドリングに重きを置いていることが伺える。

1.5Lの4気筒ガソリンターボエンジン+48Vマイルドハイブリッド

早速走り出してみると、動き出しから20km/h付近まではモーターで動く。そこは本来滑らかな動き出しを感じる部分なのだが、タイヤの転がり音が大きく、ゴロゴロとした音を聞きながら動き出すので、あまりEVの滑らかさ、静粛さは感じなかった。

車速が上がればエンジンが起動しエンジン走行をする。バッテリー状態によっては駆動アシストをしているが、それを顕著に感じられる場面はなかった。オーナーには燃費の良さという点でマイルド・ハイブリッドのメリットを感じることになるだろう。WLTCモードでは16.7km/Lだ。

ちなみにEV走行距離は20kmとなっているが、実際は車速が20km/hを超えてしまえばエンジン走行になるので、PHEVのようにEV走行するということではない。

ハンドリングはシャープだ。このあたりがアルファロメオの矜持と言える。市街地では敏感だと感じるが、ワインディングを走ると旋回性の高さと、ノーズの入りの気持ちよさがあり、アベレージ速度はどんどん上がっていく。導入当初のステルビオと同じようにSUVに乗っている感覚は全くなく、スポーツカーをドライブしている錯覚になるほど、機敏にそして思い通りに爽快に走ることができる。

ドライブモードはアルファロメオの「d、n、a」が装備されている。「a」モードはいわゆるエコモードなのだが、これが40%ほどアクセルを踏み込まないとレスポンスしない不感帯が存在する。そこを超えるとパワートレインは反応するものの、「どうしちゃったの?」というほど鈍い反応しかしない。

「n」はノーマルモードで同様にアクセル開度20%ほどが不感帯だ。そこを超えるとaほど鈍感ではなくなり、普通に走行するが、市街地でもアクセルの踏み始めが無反応なので乗りにくさがある。「d」はスポーツモードのことで、こちらは常時エンジンが稼働しているので、普通に走行できるしレスポンスもよい。

12.3インチのデジタルクラスターメーター

つまり、nとaはモーターを使って動かそうとしているものの、48Vでもあることから大きな駆動力が得られず、空走の瞬間ができてしまっている。これはドライバビリティに影響することなので、制御ロジックを熟成する必要があると感じた。

というわけでワインディングは「d」モードで走行していたが、前後ストラットおよび高いボディ剛性のなせる技なのだろう、すこぶる快感だ。敏感なステアをわずかに動かすと、ロールが始まりヨーモーメントを感じながらロールしていく。そのスピードは一定で小さい。反応のよい「d」ポジションでアクセルに触れば、グイグイと旋回をする。もはやスポーツカーだ。

こうしたコーナリング性能がアルファロメオの価値や魅力なのだと主張していることが伝わる。ダッジ・ホーネットには試乗したことはないが、明確な違いがあると想像する。

そのアルファロメオの魅力はインテリアでも感じられる。ウインカーの音は乾いた音がカチカチとなり、しっとり系とは明らかにことなる演出がある。シートは硬めで、ボディサイドは高いホールド性をキープしているものの、肩周りは全く支えのない、独特のシート形状もアルファロメオならではなのだろう。

エクステリアデザインは言うまでもなく、ひと目でアルファロメオとわかる顔をしており、伝統の盾のデザインが目立つ。そして3眼のヘッドライトは車載カメラと連動し、照射距離・範囲を自動で調整する機能を持っている。3眼ヘッドライトは過去にもアルファロメオ159などで採用しており、オマージュなのか機能なのか、アルファロメオらしさの一つでもある。

盾型グリルと3眼のヘッドライトでアルファロメオらしさがあふれている

試乗車は日本導入特別仕様車のEdizione Speciale(エディツィオーネ・スペチアーレ)で、タイヤサイズは20インチ。ホイールデザインも丸孔デザインで、これもアルファロメオではたびたび採用しているタイプだ。

このEdizione Speciale(エディツィオーネ・スペチアーレ)の販売が終了すると、ヴェローチェ・グレードが導入される。ラインアップは標準モデルの「Ti」との2モデルラインアップになる予定だ。そして欧州で発売しているPHEVモデルも国内に導入予定ということだ。導入時期は明かされなかったが、ステランティス・ジャパンとしては「本命」と位置付けている様子だった。

20インチ5ホールのブラックアルミホイールを履く

新車種「TONALE」トナーレは、アルファロメオらしい、そしてモデル名が示すように峠を得意とし、そのハンドリングがアルファロメオだよね、と感じさせてくれる。さらに見た目の満足感、インテリアの色使いやパーツ、スイッチなどのデザインにセンスを感じる。ボディサイズもコンパクトで国内での使い勝手もいい。VWのティグアン、Tロックとは一味も二味も異なるクロスオーバーSUVなのだ。

価格(税込)

・Ti(受注生産モデル):524万円
・Edizione Speciale:578万円
・Veloce:589万円

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