新型キックス試乗 エンジンの存在を忘れる第3世代e-POWER、その完成度を体験

日産のコンパクトSUV「KICKS」が、そのデザインのインパクトから注目を集め、「じっさい、乗ってみるとどうだろう?」という期待をもった声を聞く。

そのキックオフは2024年3月にアメリカ・ニューヨークで開催された男子バスケットボールの開幕戦でB+セグメントの新型「KICKS」の北米投入が発表され、国内導入は?という期待が膨らんだ。

そして2026年6月17日に国内向けKICKSが発表された。すでに2025年にはメキシコ、ブラジルの工場で生産されたKICKSが北米、メキシコ、南米市場では発売されており、ついに上陸という流れだが、じつは、国内市場へは神奈川県追浜工場で生産されるKICKが投入されているのだ。

海外市場では1.0Lや2.0Lのエンジンモデルとe-POWERがラインアップしているが、国内には1.4Lの発電専用エンジンを使ったe-POWERのみがラインアップしている。

日産はこのセグメントで競争力を持つモデルが弱く、存在感が示せていなかったが、このKICKSでBセグ、Cセグのライバルに立ち向かうわけだ。とくに強力なライバルはホンダ・ヴェゼルやヤリスクロス、カローラクロスらがあり、どこまで存在感をだしていけるのか興味深い。KICKSの詳細については既報しているので、こちらをご覧いただきたい。

試乗したモデルはFFとAWDのe-4orceの2タイプで、FFは19インチ、e-4orceは17インチといいう組み合わせだった。

グレード展開は2WD(FF)がXシンプルパッケージ、X、X+、Gの4つあり、Gがトップグレード。e-4orceも同様に4グレード展開になっていて、2WDのXシンプルパッケージは299万9700円、Xが325万9300円という価格で、ホンダ・ヴェエルを意識した価格設定をしている。

試乗したXe-4orceは359万9200円とFFのGグレード389万8400円のモデルだ。ちなみに最高値モデルはe-4orceのGグレードで424万8200円となっている。

さて、実車を見て比べてみるとXグレードはシンプルでエントリーグレードの要素が強く、樹脂素材がそのままという箇所もいくつか存在した。一方、トップグレードのGは非常に豪華な内装で、見た目も高級感があり、クラスを超えた品質に感じる上質さがあった。

このあたりはお財布との相談になるだろうが、かなり印象が異なるのでニーズもばらつきそうだ。

日産らしい乗り心地の良さ

一方で、乗り心地という点も大変高評価できる。リーフから始まった新しい日産の乗り心地がこのKICKSにも受け継がれている。リーフが登場した時、賛否あったようだが、タカハシは乗り心地の良さを絶賛した。それは凸凹の激しい、あるいは道路の繋ぎ目といった場所でのショックは丸くいなす方向で、ピストンスピードの遅い領域ではゆったりと車体が動く印象が上質さを感じさせてくれる。

ドイツ車の硬質な乗り味とは真逆な乗り味で、しなやかでゆったりした乗り心地が良い。それでいて、コーナーで弱さを感じるのかと言えば、ボディのしっかり感が安心感につながる乗り味なのだ。ロールは決して小さくはないが、初期ロールが抑えてあるため、実際はあまりロールしていることを実感しにくい味付けになっている。

この特徴的な乗り心地は「日産車の乗り心地」として高評価でき、それがKICKSだけの乗り心地ではなく、リーフ、新型エルグランド(テストコースのみ試乗)にも共通であり、コーポレートアイデンティティとしてブランドに紐づいていることが見事なのだ。

エンジンの存在がわからない静粛性

さて、第3世代となったe-POWERは、できるだけエンジンを掛けないようにする制御と、エンジンが稼働しても燃焼効率のよい回転域を積極的に使う制御を組み合わせている。これが、乗ってみるとエンジンの音が全然聞こえてこない。もはやEVと同等と言っても言い過ぎではない。

通常走行においてはエンジンの存在はわからず、インジケーターに表示しなければ、走行中にエンジンが停止しているのか稼働しているのかすら分からないレベルだ。それでいて、モーターの特徴である最大トルクがすぐに立ち上がるレスポンスの良さもあり、EVと同じ印象を持つ。かなり俊敏に走行できることを約束する。

近年はハイブリッドの制御パターンも増え、世にで始めたころのHEVはエンジンが主役で、モーターがアシストを行う仕組みが中心だったが、最近はモーター走行をメインにし、効率の悪いところ、例えば連続ハイスピード走行のような場面ではエンジンで走行するといったハイブリッドも出てきた。日産のe-POWERはもっと割り切って、エンジンを発電専用にしたシリーズ式ハイブリッドに特化している点も、USPとしてアピールできる。

とくにエンジンの存在を消していく考え方はEVへのシフトチェンジを容易にしていると思う。エンジンにこだわり、EV走行中でもエンジン音を出したり、有段シフトフィールを作るメーカーもあるが、思考のベクトルが180度異なっている点も興味深い。

さて、そうしたエンジンの存在が分からない走行となると、静粛性も高くなるのは言うまでもない。ただし、音の侵入対策ができていなければ高い静粛性は実現しないが、新型KICKSはその点でも高評価できる。風切り音もなく、またタイヤからの音、ロードノイズも非常に小さいのだ。ちなみに、17インチがハンコックで、19インチがダンロップのタイヤを装着していた。

静粛性の高い室内ではとりわけ後席の広さが際立つだろう。B+セグメントとしては足元の広さ、ヘッドクリアランスもあり、それでいて荷室も十分な大きさを持っているので、高い実用性があるのだ。

ボディサイズは全長4365mmで先代比+75mm、全幅1800mm(+40mm)、全高1615mm(+10mm)というように、先代キックスを一回り大きくしたサイズだ。プラットフォームはCMF-Bを採用し、第3世代のe-POWERは5in1ユニットを搭載している。WLTCモードは25.7km/Lで、先代キックスの23.0km/Lを大きく上回っている。

このように、レーダーチャートをイメージすると、全ての領域で先代キックスを上回り、丸い円の大きさがさらに大きくなっているのは間違いない。

強いて言えば、デザインは魅力的なのだが、乗り心地と同様にデザインにもコーポレートアイデンティティと結びつくデザイン言語が欲しいところだ。かつてはVモーショングリルがあったが、リーフ、新型エルグランド、そしてKICKSいずれも独立したデザインに見え、プロダクトごとのデザインで進められている。グローバルで存在感を強めるためにも、一考を求めたい。

カーガイのイヴァン・エスピノーザCEOとMJ&DJの高橋アキラ

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