これまで、メルセデス・ベンツのブランド、開発フィロソフィ、そして初代Sクラスから今回の6代目までを振りかってみた。そして、6代目のW222型Sクラスが持つ特長として軽量化、ボディの安全性、快適性、そして空力を計算したデザインであることをレポートしている。その4回目は新型Sクラスをグッと深く掘り下げてみたい。
◆スタリングはもっともエレガント
過去のSクラスは機能主義と言われるスタイルを踏襲してきたが、新型Sクラスは機能美が際立って見えるのは不思議だ。先代モデルと大きさはあまり変わらないが、ごく自然に振る舞うロングボディの存在感とオールLEDを使うライト類の演出が新型Sクラスのモダンさを強調している。
新型Sクラスはむしろインテリアのデザインに驚く。無機質なドイツの高級車なのに英国やイタリアの高級車にありがちな暖かい素材を使うオーガニックな雰囲気を感じるのだ。インテリア照明ももちろんオールLEDだ。夜間のインテリアは高級なナイトクラブの貴賓室のように妖しげな光を放っている。後席でシャンパンを交わしながらセレブな美女を口説くにはうってつけの空間だ。昼はビジネスカーとして機能し、夜は妖しげな移動空間に変身できるのが新型Sクラスなのだ。
◆どのエンジンが日本に合うのか？
新型Sクラスに採用される新しいパワープラントについて解説しよう。驚いたのはレクサス以上にハイブリッド化が進んでいる。レクサスLSには「LS600h」という一つのハイブリッドモデルしか存在しないが、新型Sクラスにはなんと3種類のハイブリッドがラインアップされているのだ。
メルセデスはディーゼルを諦めてハイブリッドに路線変更したのだろうか。いや、違う！ 3種類のハイブリッドの内訳はガソリン・ハイブリッドとディーゼル・ハイブリッドが用意されている。しかもガソリン・ハイブリッドにはプラグイン・ハイブリッドがスタンバイしているのだ。
それではもっと詳しく見ていこう。
主力エンジンは4.6LのガソリンV8型ターボだ。このエンジンはEクラスにも採用されているが新型Sクラス用にはリファインされたV8型ターボが搭載された。最高出力は455ps/700Nｍもあり、充分なパフォーマンスが期待できる。
国際試乗会ではこのエンジンを積んだS500（日本ではS550と呼ぶ）を中心にテストドライブしたが、驚いたのはその静粛性だ。エンジンの振動はほとんど感じないほどスムースで、一瞬V型12気筒と勘違いするほどだった。
次に3つのハイブリッドについて解説するが、ディーゼル・ハイブリッド「S300 BlueTECH HYBRID」は2.2Lの4気筒ディーゼルにモーターを内蔵し、7速ATを組み合わせている。ディーゼルで500Nm、モーターで250Nmを発生するので合わせると750Nmのトルクとなる。燃費はEU混合モードで4.4L/100Km（22.7km/L）。CO2排出量換算ではで115g/kmとなる。S500の199gと比べると驚異的な燃費&CO2排出量だ。
メルセデス・ベンツ日本ではディーゼル・ハイブリッドの日本導入を真剣に検討しているそうだ。短い時間の試乗だったが、「S300 BlueTECH HYBRID」はとても魅力的な高級車であった。
2つ目のハイブリッドは3.5L・V6型ガソリンのハイブリッド「S400 HYBRID」だ。このモデルは日本でのSクラスのエントリーモデルとなりそうだ。ガソリンV6型エンジンは日本でも市販しているリーンバーン燃焼のV6エンジンだ。
3つ目のハイブリッド車は2013年9月のフランクフルト・モーターショーでデビューするS500プラグイン・ハイブリッドだ。S400を基本としながらも、8.4kWhのリチウムイオンバッテリーを搭載するので、35km前後のEV走行が可能だろう。もし、東京でS500プラグイン・ハイブリッドを乗ったら、ほとんどがEVで走れることになる。ひたひたと忍者のように忍び寄るSクラスは社長さん達の人気の的になるだろう。
このように、どのハイブリッドも魅力的だが、元祖ハイブリッドのレクサスをリングサイドに追い込むほど新型Sクラスはハイブリッドのイメージリーダーとなりそうだ。長距離を乗ると静かさとオーラのようなトルク感、さらにレスポンスの良さではガソリンV8型が魅力的に思えたのだが。
【メルセデス・ベンツ】新型Sクラス 最善か無か。蘇るかSクラス神話 W222型誕生 vol1
