第2章スバル ハイパワーエンジンという血統 名機 スバル「EJ20」型エンジンヒストリー

第1章ではスバル1000の時代から水平対向型を採用してきたが、その優位性はクルマづくりに活かされ、そして安全面においても活かされていることをお伝えした。またエンジンという構造体においてもメリットと恩恵があることを覗いてみた。

第1世代の水冷インタークーラーを装備したEJ20型ターボ

ボクサーサウンドの秘密

初代レガシィ用のEJ型エンジンは、1.5L~2.5Lまでの排気量をカバーする水平対向4気筒エンジンとして企画された。その目標は中心排気量である2.0Lで世界トップ・レベルの高出力を実現することとされた。

初代レガシィ ツーリングワゴン

そのため1944ccの排気量で、ボア・ストロークは92.0mm×75.0mmで、ビッグ・ボア/ショート・ストロークとされ、吸排気ポートを太くするため吸排気バルブは大径4バルブを採用するなど、典型的な高出力型エンジンの設計方法で7500rpmという高回転を実現している。また吸気マニホールドは低速・高速の切替式可変吸気システムを装備している。

クラストップ レベルの高出力を追求した第1世代のEJ20型のシリンダーヘッド。吸気ポートはストレート形状。大径バルブと大きなバルブリフト量を追求したため、バルブ挟み角は52度に

大径バルブでストレート吸気とするため、バルブ挟み角は52度と広角となり、また凸形ピストンを採用しているため「へ」字形燃焼室となり均一形状ではないため冷却損失が大きめになっている。バルブ駆動はDOHCで内側支点のロッカーアーム式とし、バルブリフト量も最大化。これらにより、自然吸気、ターボともに2.0Lクラス最高の出力を達成している。

そして高出力化に適合させるためにクランクシャフトはついに5ベアリング式を採用し、より高回転、高出力化に対応。そのためクランク・ウエブが極薄形状になっている。またメタル・ジャーナル部は高負荷に耐えられるように鏡面加工を行なっている。

シリンダーとシリンダーヘッドの剛性を重視し、完全クローズドデッキ構造のシリンダーを採用

シリンダー部は2.0L以下のSOHCのEJ型エンジンはオープンデッキ(シリンダー上面が開放)構造だが、DOHCのEJ20型は、生産性は悪くなるが高強度・高剛性のクローズドデッキ(シリンダー上面が水路以外は閉鎖)構造を採用するなど、高出力エンジンにふさわしい作り込みとしている。さらに、左右各2気筒はクロスフロー(横流れ)冷却方式を採用している。通常の4気筒は縦流れ方式で、気筒間の均一な冷却ではクロスフローが優れている。

吸気マニホールドは等長だが、排気マニホールドは片側2気筒ごとを集合させた不等長マニホールドとなっている。このため、低回転ではV8エンジンのランブル音に近い独特の排気サウンドを発生し、初期型EJ20型エンジンの大きな特長となっている。

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