トヨタ自動車は、DCM(車載通信機。データ・コミュニケーション・モジュール)の標準設定を柱とする「コネクティッド戦略」の一環として、クラウドと車載機を融合したハイブリッド方式の「ナビゲーション機能」「音声認識機能」を開発した。利用者に新たな価値を提供する商品として、今秋以降、国内で発売される新型車のナビシステム(メーカーオプション)に順次展開していく。
具体的には、今回開発した新機能により、より早く到着するルートを探索、案内を受けることができるようになったり、より多くのルートの選択肢からルートを選択できるようになったり、より自由度の高い目的地検索ができるようになったり、より簡単に“発話”でマルチメディアシステムを操作できるようになったりする。
■1.ハイブリッドナビ機能
世界初の「ハイブリッドナビ」機能では、多くのクルマから収集した車両プローブ情報(DCMが装着された車両から収集する情報)と、外部情報を組み合わせたデータベースを用いて、ルート探索や施設検索処理をクラウドにて行い、車載機に配信する。また、通信圏外や、リルートなど速い応答性が要求される場合には、自動的に車載機での処理に切り替えて対応する。
クラウドによるルート探索では、各道路に対する通過時間のヒストグラム(確率分布)を蓄積した所要時間データベースに加え、より早く到着するルートとより正確な到着予想時刻を案内するために、所要時間の平均値だけでなくばらつきも考慮してルート探索を行う。
また、通過時間のばらつきを考慮し、平均通過所要時間の短さのみでなく、ばらつきが少ないルートを選ぶことで到着予想時刻の精度向上を可能にする。
区間が同一であっても、その進入方向や退出方向(直進・右左折)によって所要時間に差異が発生するため、区間当たりの所要時間に進入・退出を組み合わせた複数の時間データを考慮することで、ルートの所要時間をより正確に算出することができる。
さらに、「区間への進入リンク」「区間リンク」「区間からの退出リンク」の3リンクの組合せにより算出する。例えば、下図の場合、「区間リンクd」の所要時間としては「進入リンクa、b、cの3種類」×「退出リンクe、f、gの3種類」の9種類となる。
そのほか、クラウドで処理を行うことによって、ユーザーが車両を購入した後もルート種別を増やすことができる「拡張ルート」機能を、世界初で実現。新しいルート種別はセンターからダウンロードすることで追加可能であり、その第1弾として、今後「関東ETC2.0料金割引優先ルート」を提供する予定だ。
なお、施設検索においては、キーワードを用いた曖昧検索や複数の単語を組み合わせた複合検索にも対応している。たとえば、姫路城は別称「しらさぎじょう」の読み違い「しろさぎじょう」でも検索可能であったり、「銀座 寿司」、「赤坂 フレンチ」のような複合検索も可能となっている。
■2.ハイブリッド音声認識機能
「ハイブリッド音声認識」機能では、クラウドによる音声認識の“自然な発話が認識できる”“店舗名称等の多量な施設名称の認識ができる”という利点と、車載機による音声認識の“応答性が速い”という双方の利点を活かし、発話内容、状況に応じて、クラウドと車載機の機能を自動で使いわけることで快適な音声操作を可能としている。
従来のクラウドによる音声認識機能(エージェント[音声対話サービス])は、自然な発話の認識ができるが、操作対象は目的地検索、天気、ニュース等のサーバーアプリケーションのみが対象になっていた。また、車載機による音声認識機能は、認識可能なフレーズに制約があったため、住所で目的地を登録するには、「目的地」→「住所」→「東京都文京区後楽1丁目4」のように、数個のフレーズを覚えて使う必要があった。この二つの音声認識機能は別のシステムとなっており、使いたい機能に応じて、起動するシステムを使い分ける必要があった。
今回開発したハイブリッド音声認識機能では、使いたい機能を意識することなく、音声認識システムを起動し、「駐車場のある蕎麦屋を探す」、「エアコンの風量を最大にする」等の自然な発話で各操作を可能としている。
今秋登場予定であり、かつメーカーオプションでの設定となるが、“より使いやすく”なることが予想されるトヨタの最新ナビ。利便性が高いということは、余裕のある運転にも繋がり、それはつまり安全性にも寄与するとも思われる。まずは、この新しい「ハイブリッド方式」のナビの実物、早く体験してみたいものだ。