年明け早々の2017年1月5日、アメリカのラスベガスで「CES 2017」が開幕した。「CES」は、全米民生技術会が主催する世界最大規模の「コンシューマー・エレクトロニクス・ショー」だ。その中身は消費者向け家電見本で、ゲーム、オーディオ、家電商品、ロボット技術、VR/AR技術、近年は自動車メーカーや自動車メーカー向けサプライヤーも多数出展し、自動車業界の見本市に変貌してきている。
■人工知能カー?
このCES017に、トヨタは「TOYOTA Concept-愛i(コンセプト・アイ)」を出展した。このコンセプトカーは、電気駆動のクルマであり、AI(人工知能)を搭載することでドライバーの感情や嗜好性を理解し、ドライバーの表情や動作、覚醒度などをデータ化し、SNS発信や行動・会話履歴によって、ドライバーの嗜好を推定するシステムとなっている。もちろん自動運転車であり、ドライバーの感情や嗜好を認識することで新たなファンツードライブを提供するという。
AIの開発はトヨタだけではなく、多くの自動車メーカーが、完全自動運転に不可欠な技術として人工知能の開発に向けてスタートを切っている。
もちろんそのきっかけを作ったのはGoogleカーだ。完全自動運転車を造るという目標を掲げ、さらに人工知能によりドライバーとクルマを一体化させようという、従来の自動車メーカーでは手を出しづらいコンセプトを掲げたのだが、自動車メーカーもいっせいに反応し始めた。
実際、完全自動運転を開発するために、Google、IBM、マイクロソフトなどと提携する自動車メーカーが相次いでいる。日本のメーカーではホンダ(技術研究所)はGoogleと、トヨタはマイクロソフトと共同研究・開発を決めている。逆にソフトバンクは自動運転、次世代交通システムの開発を目指す「SBドライブ」社を設立した。
Googleだけではなく、Appleもこの動きに追随し、完全自動運転化、AI搭載は近未来のクルマには不可欠と考えられるようになった。しかし、IT業界は変わり身が早いのが特徴で、Googleは完全自動運転の開発部門をGoogle本体から切り離し、開発メンバーの一部も含めウェイモ(Weymo)社が後を受け継ぐことになった。言いかえれば、Google社としては完全自動運転車の開発を放棄したことになる。
■相次ぐ撤退
また、Googleカーは、自動車メーカーとは連携せず、かつてのアメリカ国防高等研究計画局(DARPA)主催の無人・自動運転車競技に参加した大学の研究メンバーが中心となって独自に開発を続けてきた。しかしそうしたパイオニア技術者の多くはすでにGoogleの元を離れ、残ったエンジニアが転籍したウェイモ(Weymo)社はFCA(フィアット・クライスラー・オートモービル)グループと提携するというのだ。
Googleだけではなく、Apple社も密かに進めてきた自動運転車開発プロジェクト「プロジェクト・タイタン」を中止し、シャシーやプラットフォームなどハードウェア開発を担当していたエンジニアは去り、今後は自動運転システムのソフトウエア開発に専念するといわれている。
Google、Appleが抜けた後に、自動車メーカーの自動運転、AI技術の開発チームは今後さらに研究・開発を加速させる方針を示している。しかしAI技術はまだ進化の初期的な過程にあり、クルマが頭脳を持ち、自ら考え、判断するというコンセプトは遥か先の時代の話と考えざるを得ない。
■ 日本市場の動向
2017年に登場するニューモデルは、登場順でフォルクスワーゲン・ティグアン、プリウスPHV、CX-5、レクサスLC、ボルボS90、スズキ・ワゴンR、スバルXV、スズキ・スペーシア、レクサスLS、ホンダ・シビック、トヨタ・カムリ、マツダCX-6、ホンダCR-Vなどが予想されている。
販売面では、2016年秋にビッグマイナーチェンジを受けた日産ノートがBセグメントの販売でトップを奪い大きな話題となった。e-POWERという新駆動システムがかなり大きなインパクトを市場に与えたのだ。
日産は、これまで消極的だった日本市場に、星野朝子専務の指揮の下でプロパイロットを搭載したセレナとノートe-POWERで反転攻勢をかけ、2017年夏頃にはセレナにもe-POWERを搭載し、さらに勢いをつけることができるか?注目される。
2017年2月頃に発売が予想されるプリウスPHVは、単にプリウスのPHV版というだけではなく、グローバル市場向けのPHVだ。また日本市場においては失敗作で存在感の薄かった先代プリウスPHVのイメージを払拭して、プリウスのメイン車種となれるのかどうかは興味深い。
マツダに関しては最新のニュースがスクープされた。国内の中国地方を地盤とする中国新聞1月1日の紙面に「直列6気筒エンジンの開発」という記事が掲載されたのだ。内容的には3.0Lの直6エンジンの開発がキックオフされ、2018年型のアメリカ向けC/Dセグメント車に搭載されるというものだ。
■マツダ、ホンダ、スバルも熱い
ということは、念願のFR用プラットフォームの開発も開始されていると予想できる。直6エンジンをFRプラットフォームに搭載するということは、2015年東京モーターショーに
出展された「RX-Vision」の実現であり、それは完全にBMW的なプレミアムメーカー指向に舵を切ったことを意味する。
ただ、迫り来るZEV規制に対してマツダはどのような手を打つのか。その道筋はまだ明らかになっていないが、そろそろこれに対する回答も求められることになる。
2017年のホンダは、何といってもシビックの日本市場への再導入が話題となるはずだ。ホンダはこれまで世界6極体制を採用し、各地域に適合したモデルを各地域で開発し販売するとしてきたが、これはグローバル・ブランド力の低下をもたらしたという反省から、改めてグローバル戦略車のプレゼンスを高めようという試みなのだ。
かつてのホンダの基幹車種であったシビックが、現在の日本市場でどのような評価を受けるのだろうか。
スバルは新世代プラットフォームを採用した新型車・第2弾、第3弾としてXV、フォレスターが登場する。これらのニューモデルはもちろんアメリカ市場が前提だが、日本市場においても従来型と同様の成功を収めることができるかどうか、注目したいところである。