最初に自動運転化されるクルマはどんなクルマ?

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CES2019
日本の政府は2018年前半に策定する成長戦略「未来投資戦略」で、自動運転車の普及を積極的に推進する。これまで人間による運転を前提としていた道路交通法の見直しを2020年度までに実施し、緊急時だけドライバーが運転操作する「レベル3」の自動運転車を、2030年までに国内の新車販売の30%以上にする目標を掲げている。
最初に自動運転化されるクルマはどんなクルマ?

自動運転は政府の成長戦略が加速役

これは夢物語ではなく、政府が進める成長戦略の柱なのだ。もっとも、自動運転の実現のためには、技術的な課題以上に自動運転のための法的な整備が必要だ。よく知られているように、現在はジュネーブ条約に基づき、自動車の運転は人間=ドライバーが行なうことになっている。だが、ドイツは「自動運転システムから即座にドライバーが運転を引き受けられる」ことを条件に自動運転を認める方向だ。

クルージング・ショーファー

日本の政府も自動運転車が起こした交通事故の場合、賠償責任は車両の所有者にあるという点を踏まえつつ、自動運転を容認する方向だ。そして2020年の東京オリンピック/パラリンピックでは、最先端の自動走行技術を国内外に発信するショーケースとするために、羽田空港や臨海地域などオリンピック関連施設周辺で実証するとしている。つまりオリンピック/パラリンピックでは世界初の公道での大規模な自動運転を実現するのだ。

官民ITS構想・ロードマップ

また政府の成長戦略では、乗用車の自動運転だけではなく、高速道路でのトラック隊列走行を早ければ2022年に商業化することを目指し、2019年には公道実証を開始すること、無人自動走行による移動サービスを2020年に実現することを目指し、2018年から地域における公道実証を全国10か所以上で実施するなども含まれている。

このように、日本では単に自動車メーカーが自動運転に関する技術を独自に開発しているだけではなく、政府の政策として積極的に自動運転を実現しようと後押ししている。つまり自動運転に関しては経済政策というより国家としての政策の重要な項目になっており、この政策の実現のために、法的整備のアシストや、公道での実証実験の促進を行なっているのだ。

もちろん、この政策では自動運転だけにとどまらず、高精度3次元地図(ダイナミックマップ)の枠組み作りやマップ制作の推進、ITS(高度道路交通システム)の推進、自動運転技術の関連インフラとしての超高速第5世代移動通信システム(5G)のサービス開始なども含まれている。

NEXT:MaaSという概念と自動運転

MaaSという概念と自動運転

そもそもこうした政策は、アベノミクスの第3の矢である国家プロジェクト「 戦略的イノベーション創造プログラム」(SIP)の、合計10分野の中に「クルマの自動走行システム」が採り上げられたことに端を発している。

そこには、「次世代都市交通への展開も含めた自動走行システムを実現。事故や渋滞を低減、利便性の向上を目指す」とされていたが、2020年に東京オリンピック/パラリンピックが開催されることもあって、世界にアピールする意味や、自動運転に関連する産業分野が幅広いこともあり、国家としての成長戦略としてクローズアップされることになったという経緯がある。

自動運転というと乗用車をまずイメージしがちだが、乗用車の自動運転技術は、自動運転にすることが目的というよりは、交通事故を減少させることが目的で、高度運転支援システム(ADAS)や、自動運転はそのための手段であることを忘れてはならない。

そうした点を考えると、政府が推進する戦略は自動運転そのものが目的化しているような、前のめりの姿勢のようにも見える。

Waymoの自動運転・公道実験車
Waymoの自動運転・公道実験車
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