2015年12月にミツビシのBセグメントハチバック、ミラージュがマイナーチェンジを受け2016年モデルとして1月中旬から発売された。このマイナーチェンジ・モデルに試乗することができたので早速レポートしよう。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
ミラージュは2014年12月に改良を受け、それまでの1.0L・3気筒エンジンのみというラインアップに1.2Lエンジン・モデルを追加しているが、今回のマイナーチェンジでついにエンジンは1.2Lだけに絞られ、1.0Lエンジンは廃止された。
ミラージュは、低燃費、低価格、扱いやすいコンパクトさをコンセプトの3本柱として2012年8月に登場しており、今回は3年半振りのマイナーチェンジとなる。今回の改良はエクステリア、インテリアの質感の向上と、安全サポートシステム「e-Assist」の全車標準採用、そして燃費をさらに向上するためにアイドルストップ機構に13km/h以下の減速時にエンジンをストップするコースト・ストップ機能を追加し、JC08モード燃費は25.4km/L(+0.4km/L)と改善している。
ミラージュは、ベース仕様のMと上級仕様のGという2グレードのラインアップだが、試乗車はGグレードだ。エクステリアもこれまでのシンプルな表情から大きく変わっていた。メッキが効果的にあしらわれ、表情が引き締まりシャープさも感じられる。またルーフエンドにはスポイラーも装備されている。
インテリアもステアリングのスポークにピアノブラックとメッキを組み合わせたドレスアップや、メーターも透過光式に変更している。インテリア全体もブラック基調のシックな内装で、これまでのやや単調な風合いより質感が高められていることが実感できる。
エンジンのレスポンスのよさ、常用域での力強さが感じられるトルク・フィーリングは、このエンジンの特徴で、1.2L自然吸気エンジンの中では上位にある。数値では特に傑出していないが、レスポンスのよさなどフィーリングがよいのだ。
CVTとの組み合わせなので、急加速や、アクセルをいったん戻してから踏み直すような状況では滑り感はあるが、この低速重視のエンジンとのコンビではそれほど気になるわけではない。またミラージュの車両重量が900kgと軽く仕上げられていることも動力性能にプラス要素となっていることは言うまでもない。
室内の広さ感や使い勝手で、今や同クラスのライバルのとの比較だけではなく、軽自動車ワゴンとも比較される時代だが、少なくとも走り、動力性能ではこのミラージュは軽自動車はもちろん、同クラスのライバルに対してもアドバンテージはあると思う。
シャシーは今回の改良で、リヤスプリングレート、前後ダンパーの減衰力の見直しも行なっており、乗り心地はさらに洗練され、フラット感も感じられる。さらに装着されているタイヤはブリヂストン・ポテンザRE050A(175/55R15)とハイパフォーマンスタイヤで、このクラスで一般的なエコタイヤに比べて乗り心地や接地感は有利だ。
電動パワーステアリングは、ソフトのチューニングで操舵反力を高めているという。従来モデルはセンター部分があいまいで、操舵時の手応えがないタイプであった、この改良モデルでは少し改善されている。しかし路面からのインフォメーションはもう少し感じられたほうがよいと思う。
ただ、走行中にボディ全体から伝わってくる剛性感は、このクラスでもナンバーワンということができ、軽量さと剛性感が両立されていることはミラージュの優位点といえる。
ミラージュに限らず、日本のBセグメントのハッチバックは、本来は最大ボリュームゾーンのはずが、軽自動車のハイトワゴン系に侵食され、ハッチバックよりはミニバン、といったユーザー層の好みの変化に翻弄され、いささか存在感が薄くなっているのが実情だが、使い勝手、経済性、軽自動車と遜色のない取り回しのよさ、走る、曲がる、止まるといった基本性能バランスのよさや安定感といった点では存在意義は大きいのだ。
価格的にも軽自動車のハイトワゴンより安いミラージュは、コストパフォーマンスに優れており、クルマとしてのトータルバランスのよさも含め、もう少し見直されてもよいと思う。