カーボンニュートラルの先へ、「カーボンネガティブ」への挑戦
マツダは、CO2排出量を実質ゼロにするカーボンニュートラルをさらに一歩進め、大気中のCO2そのものを減らす「カーボンネガティブ」の実現に挑戦している。背景には、排出量をゼロにしても、産業革命以降に大気中へ蓄積された膨大なCO2は残り続けるという問題意識があるからだ。
そこでマツダが着目したのが、微細藻類由来のバイオ燃料と車載CO2回収技術を組み合わせた新たなCO2循環システムだ。藻類は成長過程でCO2を吸収するため、燃料のライフサイクル全体でのCO2排出を大幅に削減できる。さらに燃焼時に発生するCO2を車両上で回収できれば、「走るほどCO2削減に貢献する」モビリティの実現も視野に入る。

排ガス中のCO2を効率的に回収
カーボンネガティブ実現の鍵となるのが、マツダが開発を進める「モバイルカーボンキャプチャー」だ。
大気中のCO2濃度は約400ppmに過ぎないというが、バイオ燃料を使用した内燃機関の排ガスには10%以上のCO2が含まれる。そのため、大気から直接CO2を回収するDAC(Direct Air Capture)と比べ、より少ないエネルギーで効率的な回収が可能になるという。
CO2回収には吸着剤を利用する方式を採用した。候補となる吸着剤にはアミン系や金属有機錯体(MOF)などもあるが、マツダは耐久性や構造安定性、実用化のしやすさを重視し、ゼオライト13Xを採用している。
ゼオライトの特性を活用した吸着・脱離システム
システムは、排気経路に設置した吸着器でCO2を捕集し、その後に貯蔵する仕組みとなる。
排ガスが吸着器を通過すると、ゼオライトがCO2を選択的に吸着し、それ以外のガスは通過する。一定量を吸着した後は、吸着剤からCO2を放出させて高濃度化し、専用タンクへ送り込む。


吸着と脱離の切り替えには温度制御を利用する。ゼオライトは常温付近で高い吸着性能を発揮し、約150℃まで加熱すると吸着したCO2を放出する特性を持つためだ。
吸着器には熱交換器構造を採用し、フィン部分にゼオライト13Xを塗布。吸着時には外気を利用して冷却し、吸着能力が低下すると排ガスの熱で加熱してCO2を脱離させる。
CO2センサーと電動コンプレッサーで回収効率を高める
吸着・脱離のサイクルを効率的に行うため、システムには「予冷工程」と「掃気工程」も組み込まれている。
予冷工程では脱離後に高温となった吸着器を常温近くまで冷却し、次の吸着工程に備える。一方の掃気工程では、排ガスの一部を利用して高濃度CO2を貯蔵タンクへ送り込み、回収効率を高める。
また、吸着器の前後にはCO2センサーを配置し、濃度をリアルタイムで監視。吸着能力の低下や脱離完了を検知しながら工程を自動的に切り替える。さらに電動コンプレッサーによって流量や圧力を制御し、システム全体の性能向上を図っている。

「走る歓び」と環境貢献の両立へ
現在マツダは、スーパー耐久シリーズを実証の場として活用しながら技術開発を進めている。将来的には熱交換性能の向上や冷却技術の導入によってCO2回収率をさらに高める計画だ。

同社は、バイオ燃料、高効率内燃機関、電動化技術、そしてCO2回収技術を組み合わせることで、「走る歓び」と環境性能を両立させる新たなモビリティの実現を目指している。その先にあるのは、移動そのものが環境負荷の低減につながるカーボンネガティブ社会の実現だ。

























