テスラ ジャパンは2026年9月11日、無人のタクシーサービス(ロボタクシー)」用に開発した専用EV「Cybercab(サイバーキャブ)」を日本初公開した。

テスラは2024年秋の自社イベントで完全自動運転専用EV「サイバーキャブ」を発表。2026年2月にギガファクトリー・テキサスで最初の量産型が完成し、4月から本格量産に移行しており、9月3日にはテキサス州オースティン、ついでヒューストン、ダラス、マイアミの特定エリア内で正式に運行サービスを開始した。

この無人タクシーサービスは、テスラが自社で「ロボタクシー」として運営しており、今後はアメリカの各都市部に運用を拡大する計画だ。もちろん将来的にはタクシー企業、ライドシェアカーとしての販売も想定されている。
そしてこの無人タクシーサービスの運営開始に合わせて、テスラは各国でサイバーキャブを展示しており、日本でもお披露目が行なわれた。
ステアリングホイール、ペダルなし
「サイバーキャブ」の最大の特徴は、開発が乗用車ではなくタクシー、ライドシェア専用車両であることだ。プライベート用途を想定しないため、ステアリングホイール、ペダル、サイドミラーといった人間が運転するための装備を最初から装備しない前提で設計されている。

イーロン・マスクCEOは株主総会で、「サイバーキャブ」の製造工程について「従来の自動車生産ラインというより、量産コンシューマー・エレクトロニクス製品の生産ラインに近い」と発言しており、この発言はボディ構造からサプライチェーンに至るまで、「サイバーキャブ」の設計の起点になっている。

ボディは通常のヒンジドアではなく上方に跳ね上がるシザードアを備えた2ドアのリフトバック・スタイルで、乗車定員は2名だ。都市部では1~2名移動という利用が圧倒的に多いというデータから乗員2名とし、後方は容量572Lのラゲッジスペースとして利用される。クーペスタイルとしたのは空力性能を重視しているからだ。なお、通常の乗用車に見られる後方視界はゼロで、これはカメラが担当する。

車両重量は1412kgで、最も軽量なモデル3 RWDが1780kgであることに比べて368kgも軽い重量となっている。この徹底した軽量化のため、製造、素材まで革新されているのだ。

ボディはフロント部とリヤ部はギガプレスで、それぞれが一体成型されている。車両に中央部はバッテリーパックと補強材である。そして、テスラが「アンボックスド(Unboxed)」と呼ぶ組立工法を採用。


車体をあらかじめ5~6に主要モジュール化している。すなわち構造用バッテリー/フロア、フロント部、リヤ部、左右サイド部、ルーフなどに分割し、それぞれが専用ラインで製造される。シートは車体が組み上がるより前に、構造用バッテリーパックへ直接締結される。各モジュールが完成した段階で初めて1カ所に集約し、最終工程で一体に組み立てる。この「アンボックスド」組立方式は、従来の箱型の車体を順に組み上げていく手法との対比で名付けられている。
この新しい生産方式は、ライン長の短縮、ラインによる車体移動をなくし工場床面積の縮小、組み立ての時間短縮を実現しており、1台あたりの組立時間は10秒未満という驚異的なスピードを実現。従来の組み立てと比べて5倍以上のスピードとなっている。
ボディの外板パネルにも特徴がある。「サイバーキャブ」の外装パネルはRIM(反応性射出成形)樹脂によって作られたコーポレイトカラーのグリーミングゴールドに着色済みプラスチック製で、これにより従来の塗装工程(乾燥・焼付けを含め数時間規模)を大幅に短縮できる。塗装ブースという自動車工場最大のボトルネックの一つを回避する設計であり、アンボックスド工法と合わせて「工場をコンシューマー・エレクトロニクスの生産ラインに近づける」というマスク氏のビジョンを裏付けている。
8個のカメラによる第5世代自動運転コンピューターを搭載
「サイバーキャブ」の無人自動走行を支えるのは、テスラが内製する第5世代自動運転コンピューター「AI5」である。従来車に搭載される「HW4」世代に対し、3~10倍という大幅な演算能力の向上を実現しており、正式な仕様は非公開ながら、1秒あたり1000兆回を超える演算が可能とみられている。この処理能力により、車両に配置された8基(フロント3基、フロントフェンダー側部2基、Bピラー2基、リヤ1基)のカメラからの4Kの高フレームレート映像を、複数の冗長な安全チェックシステムを走らせながら高速処理できるとされている。

そのため、WaymoのようなLiDARを装備しない「ビジョンオンリー」路線を貫いている。このコンセプトは従来の8基のカメラを装備するテスラ車と共通である。テスラはカメラと膨大なAI学習のみで周囲環境を認識し、運転操作を行なうポリシーを堅持している。
ソフトウェア面では、時系列的な記憶(テンポラル・メモリー)を使って死角にある障害物の動きを予測する「オクルージョン予測」技術が、AI5の処理能力向上によって人間並みの信頼性に達しつつあるとされ、次世代ソフトウェア「FSD v15」は現行版のおよそ10倍のパラメータ数を持つと報告されている。位置情報についても、デュアルGPSを搭載し測位精度を高めている。

48V電装によるフル・バイワイヤー制御
シャシー技術では操舵とブレーキの両方を電気信号だけで制御する48V電装の「フル・バイワイヤー」を採用している。
ステア・バイワイヤーは、「サイバートラック」で実用化された機構を発展させたもので、ステアリングラック自体が駆動ユニットの後方に配置され、タイヤと操作系のあいだに機械的なリンクを持たない。
ブレーキ・バイワイヤーの採用も革新的だ。従来車ではペダルを踏むとマスターシリンダーがブレーキフルードを圧送し、その油圧でキャリパーがローターを挟み込む。「サイバーキャブ」にはこのマスターシリンダーもブレーキラインも一切存在せず、4輪それぞれに独立した電動アクチュエーターを配置し、センサーが検知した制動要求を電気信号としてアクチュエーターへ直接伝える方式だ。
ブレーキフルードを完全に排したEV(電気機械式ブレーキ:EMB)はこれまでにごく少数の事例しかなく、テスラとしても初めての採用となる。系統は独立した2系統の電源・制御コンピュータで冗長化されており、一方が故障してももう一方が制動を引き継ぐ設計だ。各輪ごとに制動力を独立制御できるため、トラクション制御や姿勢安定化の自由度もきわめて高いことがメリットだ。

なお、緊急時のバックアップとして、センターディスプレイ内に仮想的な「ジョイスティック」操作画面が用意されており、遠隔オペレーターが手動介入できる仕組みも採用されている。
センターディスプレイはテスラで最大の20.5インチ・サイズとし、乗員はミュージック、Spotify、Netflix、Youtubeなどを楽しむことができる。
パワートレインとバッテリー
駆動方式はフロントモーターによる前輪駆動だ。交流永久磁石同期モーター1基で出力221ps(163kW)を発生する。このモーターはネオジムなどのレアアースを一切使用していないが、レアアース使用のモーターと同等の航続性能を実現している。
バッテリーは自社製の円筒形「4680」セルを採用し、セル自体を車体構造の一部として使う「C2B:構造用バッテリーパック」方式を踏襲している。総容量は約48kWhとされている。低圧系統には業界標準の12Vではなく48Vアーキテクチャーを採用しており、配線の細径化・軽量化とソフトウェア制御の応答性向上に寄与している。

航続距離は約472kmとされており、電費もEVでトップレベルといわれている。なお、バッテリーの充電は非接触型の急速充電方式で、通常の充電口は装備されていない。
クルマの定義は書き換えられるか
なお、アメリカでは現時点でステアリングやペダルのないレベル5の自動運転車両は実証実験車両に限定されており、無人運転専用車を包括的に扱う新たな車両規則や安全基準は2028年になる見通しとされており、「サイバーキャブ」はそれまでは特例的な扱いとなる。
現状ではアメリカの一部地域での運行、そして可能性が高いのは中国市場への導入ではないかと考えられる。
日本においてもWaymo/日本交通による自動運転タクシーの実証実験が実施されているが、ステアリング、ペダルのない車両に関しては未知の領域となっている。
【サイバーキャブ】
全長4445mm 全幅1754mm 全高1408mm ホイールベース未公表 車重1412kg
タイヤ:フロント 215/60R18 リヤ 225/60R21(コンチネンタル aContact)
なお、この「サイバーキャブ」は、日本では以下のスケジュールで展示される。
OMAKASE青山ガーデン 9月11日~14日
テスラ グランフロント大阪 9月17日~20日
テスラ名古屋則武 9月22日~23日
テスラ新宿 9月26日~28日













