2016年5月25日~27日の3日間、横浜のパシフィコ横浜で開催された2016年「人とくるまのテクノロジー展」では、グローバル規模のサプライヤーをはじめ多数のサプライヤー、試験機、計測器、素材メーカーの最新技術が出展された。ここでは、注目の技術や製品を取り上げてみた。
■ヴァレオ
・電動コンプレッサー:12V、48Vの2種類をラインアップ。各ユニットは誘導モーターを採用。48VユニットはアウディQ7に採用されている。
・アクアブレードの新機能:ヴァレオはワイパーブレードからウォッシャー液を噴射するアクアブレードをラインアップしているが、新たに、霜取り、虫取り用の溶液カートリッジを備えたシステムを開発中。2020年頃の量産化を目指す。
・半導体ライダー(レーザースキャナー):高性能なレーザースキャナーをラインアップしているが今回、世界初公開されたのが半導体式レーザースキャナーだ。従来のような機械式回転装置がなく、軽量、コンパクトで低コスト化を実現。16本のレーザービームで約100mの物体を検知でき、ドライバー支援システム用の新たなセンサーとして注目される。
■シェフラー
・電子制御機械式アクティブロール・スタビライザー:高減速比の3段遊星ギヤボックスを搭載した制御モーターが、車両のロールによって発生したトルクに対し逆方向のトルクを発生させて車体を安定させる。乗り心地を向上させるために、高強度エラストマーを使用したデカップリングエレメントも組み込んでいる。アウディA8、ベントレー・ベンテイガに採用されている。
・可変動弁システム:可変リフト、可変バルブタイミング、気筒休止などバルブ系の可変技術を多数ラインアップ。今後のディーゼルを含めた内燃エンジンには必須のシステムであることをアピール。
■マグナ・シュタイヤー
・6速DCT:マグナ・シュタイヤー社のゲトラグ部門が製造する6速DCT。メルセデスのFFモデル、ルノーが採用。他に4WDシステム、駆動系システムも多数ラインアップしている。
・スーパーGEN:CVT付きスーパーチャージャー、スターター/ジェネレーター、オルタネーターを一体化したユニット。4~6kW出力のマイルドハイブリッド向けの統合ユニット。これ以外に電動スーパーチャージャーも各種ラインアップ。同社は、シート、駆動系部品、エンジン部品以外に、自動車メーカーの開発受託、自動車生産受託も請け負っている。
■マーレー
・エンジン部品、ベアリングなどで著名なマーレーのディーゼル・エンジン用スチールピストン。商用ディーゼルでは主流のスチール・ピストンを乗用車用ディーゼルに展開。摩擦抵抗が小さく、高耐久性を備える。
■プライムアースEVエナジー
・リチウムイオン・バッテリー:トヨタのハイブリッド用のニッケル水素バッテリーの開発・製造を行なうプライムアースEVエナジーも、新たにリチウムイオン・バッテリーの生産に乗り出し、専用の角型セルを開発・生産。パッケージ化はトヨタ本社内で行なっている。
■ブレンボ
・デュアルキャスト・ベンチレーテッド・ディスク:高性能車には2ピース構造のディスクブレーキが知られているが、最新版はディスクローター部を鋳鉄、センター部をアルミとし、鋳ぐるみの製法で作るデュアルキャスト・ディスク。軽量化、熱歪みの大幅低減を果たしている。高性能車にすでに採用されている。
■JTECT
・パラレル式電動パワーステアリング:同社はオンデマンド4WDシステム、電動パワーステアリング、トルセンLSDなどで知られているが、電動パワーステアリングは、ラックアシスト式の同軸モーター式をラインアップしてたが、今回は新開発のラック・パラレル式パワーステアリングを出展した。自動操舵を含む高度運転支援システムには、大トルクに対応できるこのシステムが必須と考えられている。
■ボッシュ
・アクティブ・アクセルペダル:電子制御アクセルペダルで、ドライバーへの振動による警告、燃費向上のためのドライバーアシスト、ハイブリッド車でのモーター、エンジンの切り替え警告など、次世代のアクセルペダルは様々な機能が与えられる。ドライバーが常に操作するパーツだけに、危険が迫っている場合や、逆走警告、速度超過、居眠り警報などに有効だ。
・フリープログラマブルメーター:フル液晶のメーターパネル化により、メーター表示、警報表示など自在にレイアウトができるようになった。もちろんクラシックな速度計、回転計の表示から場面に応じてまったく別の表示ができる。
■ZF
・電気駆動ツイストビーム:小型EV向けの電動駆動システムで、リヤのツイストビーム式サスペンションの両端に駆動モーターを搭載。このためクルマのデザインの自由度が大きく、しかもトルクべクタリングも容易に組み込むことができるのが特徴。
・トリCAM:新世代のドライバー支援システム用の複眼カメラ。超広角の魚眼レンズ、標準レンズ、望遠レンズという3個のカメラを一体化し、信号や自車の左右のクルマの認識から300mの距離までの物体を認識し、自動ブレーキなどを作動させる。コンパクトなユニットで、コスト的にも優位性がある。
■コンチネンタル
・ドライバーモニターシステム用車載カメラ:自動運転の時代に備え、運転するドライバーをモニターする赤外線対応カメラ。ドライバーの顔を認識することにより運転席メモリーや、疲労、脇見運転を始め、多くの用途で使用されることが想定される。
・ヒーター内蔵メタル触媒(エミテック):プラグインハイブリッド車は頻繁にエンジンを停止するため触媒の温度低下、つまり触媒の機能低下が問題になるが、電熱ヒーター付きメタル触媒は、エンジンを再始動したときに瞬時に触媒をスタンバイ状態にできる利点がある。
・ベルトinオイル:コンチテック社の新世代バルブ駆動ベルト。チェーンよりはるかに摩擦抵抗が少なく、油冷にすることで耐久性もかつての歯付きベルトとは異なり30万kmに達するのでベルトの定期交換は不要。
■堀場製作所
・車載型排ガス計測システム :フォルクスワーゲンのアメリカでのディーゼル問題の契機になったのが、実走行で排ガスを計測できる堀場の車載システムだ。同社はもともと排ガス・燃費計測システムで世界的なトップメーカーだが、車載システムは今後、RWE(公道走行での排ガス規制)が主流になるため、車載排ガス計測システムの需要は大幅に伸びる。
■ショーワ
・ラック・パラレル式電動パワーステアリング:ショーワもベルト駆動式のラック・パラレル式電動パワーステアリング(BRA-EPS)を開発中。やはり自動操舵、自動運転には大トルクに対応できるこのシステムが欠かせないという見通しから開発に着手している。
・鏡面加工デフギヤ:ホンダNSX用に開発された鏡面加工されたデフ。乗用車用としては日本初で、耐久性や静粛性向上、軽量化を実現。
・協調制御型ステアリング・シミュレーター:ステアリングとサスペンションを協調させながらステアリングシステム開発するためのシミュレーター。操舵フィール、乗り心地などを実現し、外乱に対しての制御も容易に開発できるのが特徴。
■ティッセン・クルップ
・デュアルフェイズ鋼:成形性に優れ加工しやすく、加工後は高強度となる鋼板で、500MPa~1200MPaに対応する。
・熱間成形用複合鋼板:熱間成形した後でも高い圧延性を備える複合サンドイッチ鋼板で、Bピラーなど高強度が求められる部位に適合する。
■ムベア
・テーラーロールドブランク:同社はエンジン・トランスミッション部品、サスペンション部品、カーボン・モノコック製造の大手。フォルクスワーゲンのXL1、マクラーレンの市販スポーツカーのモノコックも同社製だ。近年は独自に開発したテーラーロールドブランク、つまり可変差厚鋼板の加工でも有名で、ヨーロッパの自動車メーカーの大半はこのテーラーロールドブランクを採用している。今後は日本車にも採用予定だ。
■A&D
・VMS車載統合計測システム:実験車のホイールに取り付け、道路走行中のステア角、タイヤからの入力、変位、姿勢など6軸変位、6分力を計測できるシステム。画像は室内試験用のフラットベルトに載せられている状態。
■AVL
・ヨーロッパでは著名なオーストリアの技術開発会社で、自動車メーカー、サプライヤーから開発を請け負っている。近年は日本でも自動車メーカーからパワートレーン開発受託をはじめ、エンジン試験システム、各種シミュレーションツールを販売し、存在感を高めている。
■ETAS
・ボッシュの子会社で、世界中でシミュレーションを基本とするモデルベース開発のための統合ツールからエンジニアリングサービス、コンサルティング、トレーニングなどを請け負っている。
■dSPACE
・ドイツの自動車メーカー、航空・宇宙分野でモデルベース開発をリードし、日本でもマツダのスカイアクティブ技術開発の手段として著名になっている。複雑化し、膨大な工数を要する大規模な開発には欠かせない開発システム、ツールを提供している。
■DIPRO
・日産自動車のCAEを行なうシステム会社としてスタートし、富士通が買収し、事業を拡大した。衝突、振動騒音、強度の受託解析、解析用シミュレーションシステムの開発から最新のモデルベース開発のためのツール、システムをラインアップ。
■VECTOR
・車内CAN制御システムの開発からスタートし、各種制御のシミュレーション・システム、モデルベース開発、ECU解析・評価システムなどをラインアップ。近年は高度ドライバー支援システム、自動運転分野のシステムの開発ツールなどを充実させている。