【訪問】ZFの研究開発拠点 アンチンテックセンター

雑誌に載らない話vol.295
上海モーターショー2019

オート上海の取材後、中国上海郊外の安亭市にあるZFの研究・開発センターを訪問できるチャンスがあった。この中国における開発拠点のひとつであるアンチンテックセンターは、担当領域においてアジアパシフィック全般を統括しており、日本の自動車メーカーの窓口にもなっている。また決断もこの中国でできるスピードを持っているというから、まさにドイツのZFもChinese・Speedを実践しているわけだ。

上海郊外にあるZFのアジアパシフィック拠点のひとつATC(アンチンテックセンター)
上海郊外にあるZFのアジアパシフィック拠点のひとつATC(アンチンテックセンター)

ブレーキ、ステアリング、ADAS開発

ZFはドイツに本社を置く世界的なシステム・サプライヤーであることはご存知だと思うが、近年中国の台頭により、アジアパシフィックにおける状況が変化してきている。日本の各自動車メーカーも中国に合弁会社を起こし、中国ビジネスを展開している。そうした動きは関連企業も同様で、中国へと進出している。

このアンチンテックセンターは2014年に、上海のダウンタウンからこの安亭市へ移転し、ブレーキ、ステアリング、パッシブセーフティ、ADASの研究開発が行なわれている。説明はテックセンターのゼネラル・マネージャーのDavid He氏(デビッド・ヒー)、Minliang Zheng氏(ゼン・ミンリャン/郑珉亮)から聞くことができた。

このテックセンターでは、エンジニアリング、デザイン、ソフトウエア、アルゴリズムそしてプロトタイプ製作を行なうことができる。そしてカスタマー(自動車メーカー)の要求に対し、一箇所に研究・開発の部門が集まっているためテクニカルインターフェイスをアジャストすることができるメリットがあるという。

これはブレーキやステアリング、パッシブセーフティ、ADASといった領域にはそれぞれ、エンジニアリング、デザイン、ソフトウエア、アルゴリズムなどが存在するが、それらを供給するときに、仕様変更、仕様対応が簡単に、即座にできるという意味だ。また、統合制御されたものであれば、なおさら時間がかかるものだが、そうしたスピードは落とさずに解決できるという。

ゼネラルマネージャーのデビッド・ヒー氏
ゼネラルマネージャーのデビッド・ヒー氏(David He)

さらに、そうした経緯の中での決定権はこのアンチンテックセンターで決めることができ、本国ドイツの判断を仰ぐ必要がないという話も聞けた。そうしたスピードがなければ、この激変の時代に遅れてしまうという危機感なのかもしれない。

また、このテックセンターは中国だけでなく、アジアパシフィック全般を見ていて、現在1200人のエンジニアがこのアンチンテックセンターで働いているという。そして日本を含め、韓国などもここで取引されているという。

具体的に、テックセンターの機能としては45種類のテストが可能で、機能テスト、パフォーマンステスト、環境適合のテスト、耐久テスト、振動などのテストが可能で、ブレーキ、ステアリング、ADASの簡単なテストはこの敷地内で行なえるという。またこの社屋でテストできない寒冷地テストなどは中国の北にあるサードパーティの施設でテストを行なうことが可能で、高温テストも含めて、中国国内で完結できるという。

試験ラボ見学

試験設備の視察もさせてもらったので、その一部をご紹介すると、まずステアリングテストでは、この日は2種類のステアリングシステムのテストを行なっていた。それはパフォーマンステストと耐久テストで、3名のエンジニアと2名の技師が携わっていた。

日本のカスタマーの窓口となるMinliang Zheng氏
日本のカスタマーの窓口となるMinliang Zheng氏

ステアリングテストでは11種類のテスト機材があり、信頼性のテストやロードコンディションをシミュレーションで再現し、外気温なども設定した中でのテストを行なうという。テストの完成までに2ヶ月から3ヶ月をかけテストしているという。もちろん、テストの種類によっては24時間連続稼働させ続けるものもある。

写真撮影がNGのためZFの広報資料にて、能力、性能テスト機材の紹介

ブレーキのエリアでは低速のテストコースを敷地内に持っており、低速領域でのテストはこちらで済ませることができるという。また、別な場所ではより高度なテストができる環境があり、様々なテストがおこなわれている。

同様に、こちらは耐久テストをする試験機

また、最先端のパーツを検証するために、この研究施設に1億3000万円(100万€)程度の投資をし、湿度や温度、高温、低温、雨天などの環境でのキャリパーパフォーマンスをテストできる環境をもっているという。

特に電動化されたブレーキには、制御テスト、引きずりテスト、異物混入、耐久性などはもちろん、エア漏れや油圧漏れ、負圧漏れなどのテスト検証が可能で、キャリパーのクランプ力がいかなる条件でも誤作動しないかのテストを検証しているという。

Vサイクルでの開発が行なわれ、ソフト、ハードにおける検証シミュレーションテストを経て実装されていく

テックセンターでは通常のVサイクルプロセスの開発にのっとり、要求仕様の分析が行なわれ、構造設計、モジュール設計、単体テスト、プロトタイプの製作という一連のものづくりがこちらだけで完結できる能力がある。さらに、最終判断もここで決めることができるというスピード感を持っていることがわかった。

見学はほんの一部にすぎず、また撮影ができないこともあり、詳しくお伝えできないが、ADAS開発において重要になるブレーキやステアリングはこの先、さらに重要度が増してくることが予測されている。とりわけバイワイヤーとなれば、電子制御が可能になるブレーキメーカー数も限られてくるわけで、そうした意味からも決断の早さや一箇所での仕様変更対応が可能になるなど、アンチンテックセンターには大きなアドバンテージがあり、その持つ役割はさらに重要となってくることが容易に想像できる見学会だった。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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