昭和シェル バイオマス原料由来の次世代合成ガソリンを開発

2017年12月7日、昭和シェル石油は、東北大学大学院・工学研究科・冨重圭一教授の研究グループとの共同研究で、食糧と競合しないバイオマス原料から、ガソリン基材として利用可能なヘキセンの生成に成功したと発表した。この技術を2025年までに確立することで合成燃料を製造し、温暖化対策への貢献を目指す。

昭和シェル バイオマス原料由来の次世代合成ガソリンを開発 イメージイラスト
次世代エネルギーの合成の技術で、上がバイオマス由来化合物変換触媒による合成燃料製造のプロセス

さらに、ヘキセンはジェット燃料の炭化水素に変換可能なため、ジェット燃料基材の製造にも展開していく予定だ。なお、ヘキセンをモデル化合物としたジェット燃料の生成については、11月16日に開催された第47回石油・石油化学討論会で発表された。

この研究・開発は、世界では持続可能な社会の構築に向け、温暖化対策としてCO2削減などの議論が進められていることを背景に、燃焼しても大気中のCO2の増減に影響を与えない(カーボンニュートラル)のバイオ燃料を実現することだ。昭和シェル石油はエネルギー会社としての未来を見据え、食糧と競合しない草本系、木質系バイオマスを原料とした次世代バイオ燃料を製造する触媒の開発を東北大学と共同で行なってきた。

セルロースからヘキセンを製造するプロセスのイメージ
セルロースからヘキセンを製造するプロセス

昭和シェル石油は、食糧と競合しないバイオマス由来のセルロース、もしくはそれらを糖化/水素化処理して得られるソルビトールを原料とし、東北大学が開発した「Ir-ReOx/SiO2触媒」、もしくは東北大学との共同研究により開発した「Pt-Ir-ReOx/SiO2触媒」を用いて、原料中のC-O結合を選択的に水素を用いて分解し、ヘキサノールを製造する技術開発を行なっている。この生成したヘキサノールをH-ZSM-5触媒を用いて脱水反応させることにより、ガソリン基材として利用可能なヘキセンが得られるという。

さらに、共同研究により開発された「Pt-Ir-ReOx/SiO2触媒」は、原料のソルビトールから直接水素を取り出して利用することができる。そのため石油蒸留の反応に用いる水素にソルビトール由来の水素を一部使用して、天然ガスなどの化石燃料から製造される温室効果ガスの排出量の多い水素の使用量を減らすこともできる。つまり従来の石油由来のガソリンに対して、温室効果ガス削減効果が50%以上というバイオ燃料の研究開発に取り組んでいる。

現在の研究室段階での実験で、セルロース(0.5g)を原料に、「Ir-ReOx/SiO2触媒」でヘキサノールの生成(収率60%)に成功。また、H-ZSM-5触媒を用いてヘキサノールの脱水反応によるヘキセンの生成(収率79.8%)に成功した。

セルロースからヘキセンを製造するプロセスで必要となる固体触媒 Pt-Ir-ReOx/SiO2触媒
Pt-Ir-ReOx/SiO2触媒

ヘキセンは石油由来のガソリン中に存在する成分で、今回生成したヘキセンに関し、夏季、冬季の代表的なガソリンへの混合可能量をJIS規格に照らして調査したところ、夏季で容積あたりの割合は22Vol%、冬季で約7vol%混合が可能なことを確認した。

E10燃料用ノズル
E10ガソリン・スタンド

日本ではバイオエタノールのガソリンへの混合率は、JIS規格で3vol%が上限(E10対応ガソリン車は10vol%)となっているため、従来のバイオエタノールに比べ、より多くガソリンに混合できるという利点があることが判明している。

昭和シェル石油 公式サイト

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