「北京国際モーターショー2026」は2026年4月24日~5月3日の期間に開催された。今年のテーマは「知能化で未来を拓く」で、中国国際展覧センター(順義館)と中国首都国際展覧センターの両会場の展示スペースをフル活用し、展示会場は従来より大幅に拡大され、38万平方メートル(東京ドーム8個に相当)という広大な展示面積で行なわれた。

【世界最大規模】
期間中の総入場者は128万人で新記録となり、海外からの来場者は約6万5000人、メディア関係者は約3万2000人とされており、中国国外からの報道関係者も多数入場しているが、例外的に日本人、アメリカ人だけは極めて少数であった。ちなみに前回の2024年の北京モーターショーの実績は入場者数89万2000人、出展社数約500社で、そのスケールは拡大の一途をたどっていることを物語っている。

北京モーターショーと上海モーターショーは毎年交代で開催されているが、現在では間違いなくこの2つのモーターショーが世界最大規模のショーとなっている。

今回は自動車メーカー、サプライヤーなどの合計出展社数1500社以上で、展示車両は1451台にのぼり、この内ワールドプレミアは181台、コンセプトカーは71台であった。出展車両の60%超が中国ブランドで、多くの中国メーカーが専用のホールを独占した。これは技術力と市場での存在感の高まりを如実に示している。
【知能化、AI定義車両(AIDV)】
今回の最大の展示のトレンドは、最近の中国の自動車産業の現状を明確に物語っている。これまで中国のモーターショーでは、EVの航続距離やバッテリー性能、価格競争が中心となっていた。しかし今回は、先進運転支援システム、レベル4自動運転、車載AI、大規模言語モデル(LLM)、車載高速演算コンピューターと電子プラットフォーム、ステア・バイ・ワイヤなど先進シャシー技術、ソフトウェアと電子アーキテクチャが展示の中心になっている。つまり車両のハードウエアよりも、クルマの知能化が競争軸になっているのだ。

特に目立ったのは、中国メーカーが次世代車両の技術をより具体的に提示していたことだ。たとえば、BYD、ジーリー(Geely)、小鵬汽車(シャオペン)、理想汽車(Li Auto)などは、レベル4自動運転志向の専用車両、ドライブ・バイ・ワイヤ、集中制御コンピューティングを前面に打ち出している。つまり、これまでの中国市場のメイン・トレンドであったE2E技術によるレベル2.5の先進運転支援システムからレベル4自動運転技術へ飛躍しようとしているのだ。

かつてはヨーロッパ勢が新しいプラットフォーム思想を示し、中国勢がそれを追う構図が、今回は完全に逆転している。中国メーカーが先に先進技術アーキテクチャを提示し、世界の自動車メーカーがそれを見せつけられるようになったのだ。言い換えれば中國の自動車メーカーが技術リーダーになりつつあるといえる。

こうした現実の中で、中國でビジネスを展開しているヨーロッパ、日本、アメリカのメーカーは、中国市場向け専用EVや現地技術との統合が必須になっている。これは単なるローカライズではなく、中国のサプライチェーン、ソフトウェア企業、半導体、知能化技術を取り込みながら製品化する「with China」型への転換を意味する。中国市場が巨大だから対応する、というより中国で競争できる技術がグローバル競争力の前提になりつつあることを示している。これはまた、中国のサプライヤーの実力が今や世界最先端にあることの証明でもある。

例えばホンダは、今回はプレゼンテーションを開催しなかったが、それはホンダが独自開発から現地合弁企業との100%現地ベースでの開発に転換する谷間の時期にあたったからだ。日産自動車はイヴァン・エスピノーザCEOが現地で、より中国開発を加速させ、中国での生産モデルを海外輸出の柱にする戦略をアピールした。
【先進車両を支えるサプライヤー】
今回の展示では、中国の自動車メーカーだけでなく、部品メーカーやソフトウェア企業の開発力が表舞台に出てきたのも印象的である。自動運転、ドメインコントローラ、電池、熱管理、電動駆動、車載OSといった技術が、もはや完成車メーカーの裏方ではなく、商品価値そのものを作り出していることがはっきりした。
例えば、ファーウェイは電子プラットフォーム、AI、車載コンピューター、車載OS、センサー類など最新の車両に不可欠な技術を網羅しており、最新車両の多くのモデルは「ファーウェイ インサイド」の状態にある。また最近はファーウェイはこうした分野から、自動車の商品企画、設計まで行なう実力を持ち、むしろ自動車メーカーは製造、販売に専念することができるまでに到達している。

モメンタ社は、AIを駆使したE2E技術、ナビゲーションonオートパイロット(NOA)のリーダーとなっており、現在では中国の自動車メーカーだけではなく、現地生産されている日本の自動車やヨーロッパの自動車メーカーにとっても不可欠な存在だ。
中国のサプライヤーだけでなく、ヨーロッパのメガサプライヤーも中国拠点で先進技術を開発し、市場投入しており、チャイナ・スピードでの開発・供給ができる体制を整えており、中国車の開発スピードの速さを支えている。
また、EVのバッテリーに関しては、中国のバッテリーメーカーが世界で最先端であることも証明された。BYDの第2世代ブレードバッテリーと最新のフラッシュ高速充電器によりフル充電が9分間であり、酷寒地域でも高速充電が可能であることを展示し、CATL (寧徳時代)の新型バッテリーは、驚異の6分27秒という超高速充電を実現するなど、充電時間の壁を突破したことを世界に示した。

一方で、ベンチャー企業的な小鵬汽車(シャオピン)が発表した新型車「GX」は、レベル4相当の自動運転を視野に入れた設計で、最大3000TOPSの演算能力を持つ自社開発AIチップを搭載。フォルクスワーゲンへの供給することも発表し、中国企業が技術の「供給側」に回る象徴的な事例となっている。

さらに小鵬汽車は自社で人形ロボット、乗用マルチコプターの開発も進めており、自動車メーカーという枠を超えたビジネスを想定していることも注目点だ。

シャオミも同様に、生体センサーを搭載したコンセプトカーを公開し、自社開発のAIチップを加速させることを発表している。


【苦戦する外国メーカー】
中国の自動車メーカーの急激な発展の影響を受け、日本の自動やメーカーも厳しい環境にあるが、現地開発、現地技術の活用により生き残りを模索している、トヨタ、マツダ、日産はこの現地化方針により活路を見出し、ホンダも従来の独自開発から現地技術を活用する方向に大きく舵を切ろうとしている。

これは日本のメーカーだけではなく、ヨーロッパのメーカーも同様である。アウディ、フォルクスワーゲン、BMW、メルセデス・ベンツ、ポルシェなどのブランド価値が崩壊しつつあり、中国市場での減速は危機的である。これらの多くは現地技術の採用、現地メーカーとの技術提携により今後の生き残りを図ろうとしている。













