エンジンオタク向け トヨタ 新型ヤリスのエンジン分析【動画】

この記事は2020年4月に有料配信した記事を無料公開したものです。

トヨタの先進国市場向け新型コンパクトハッチバック「ヤリス」は、ひとクラス上の心地よい走りを目指し、軽量化と高剛性化、低重心化+センター重心レイアウトなどを盛り込んだ新開発のTNGA-Bプラットフォームを採用している。

TNGA用に開発されたダイナミックフォース エンジン

このプラットフォームに合わせて新開発されたのが1.5L 3気筒のダイナミックフォース エンジンだ。1.0Lの3気筒もラインアップされているが、1.0Lモデルは法人、レンタカー需要がメインとなり、こちらはダイハツ製の1KR-FE型エンジンを搭載。改良を受けて継続採用されている。

新開発のM15A型エンジン。右がフロント側(前方吸気)。ロング吸気マニホールド、ストレート吸気ポート、集合排気ポートと直下型触媒の配置がわかる

TNGAに合わせて新開発された最新のエンジン群はダイナミックフォース エンジンと名付けられ、これまでに2.5Lの4気筒A25A型(カムリ/クラウン/RAV4)、3.5L V6ターボのV35A-FTS型(レクサスLS)、2.0L 4気筒のM20A型(RAV4/レクサスUX)がラインアップされている。

ダイナミックフォース エンジンは、1気筒あたりの排気量、ボア☓ストロークを固定化したモジュラーエンジンではなく、ボア☓ストローク比を一定にし、燃焼解析を行ない、開発を合理化するという手法が採用されている。

「FKS」型と「FXS」型エンジンとは

ダイナミックフォース エンジン共通のコンセプトは、高圧縮比、高速燃焼、冷却損失の低減、摩擦抵抗の低減を突き詰めることで、クラストップの熱効率を達成している。と同時に高出力、大トルク、吹け上がりレスポンスの向上など動力性能、ドライバビリティも大幅に向上させることを狙いとしており、単なる環境エンジンではなく、動力性能や出力も追求する全方位型エンジンだ。

また、V6型3.5L ターボのV35A-FTS型を除き、4気筒エンジンはすべてガソリンエンジン用のFKS型とハイブリッド用のFXS型の2機種が開発されている。FKS型は、F=狭角バルブアングルのDOHC、K=コンベンショナル アトキンソン、S=直噴の意味だ。また「FXS」のXはハイブリッド用アトキンソンサイクルであることをを示している。そしてハイブリッド用エンジンは、その使用条件に合わせて、より低燃費性能を追求した高熱効率エンジンとなっている。

各社1.5Lエンジン比較表

新開発のダイナミックフォースM15A型3気筒エンジン

TNGA−Bプラットフォーム用に新規開発されたのがダイナミックフォース エンジン・シリーズで最小となる1.5L 3気筒M15A型エンジンだ。

従来のダイナミックフォース シリーズは、ボア・ストローク比を統一するという方法が採用されていたが、M15A型は2.0L 4気筒のM20A型のボア☓ストロークを流用した3気筒としている。1気筒あたりの排気量は500ccとなり、ちょうどBMWの4気筒2.0Lと3気筒1.5Lの関係と同じである。

M15A-FKS型

従来、日本では1.5Lエンジンは4気筒が常識であったが、M15A型は、高出力、大トルクであると同時に、燃費性能でもトップレベルであることが求められている。そのため、より摩擦抵抗の小さい3気筒が選ばれている。

排気量1.5Lは3気筒エンジンとしては上限の排気量となる。そして120度のクランク角を採用することで完全な1次バランス、4気筒で打ち消せない2次振動の完全バランスが得られる。しかしその一方で、60度V6エンジンと同様に偶力(すりこぎ)振動が発生する。

1.0L以下の小排気量の3気筒エンジンでは、エンジンマウントで対策することで対応しているが、1.5Lではアイドリングや低回転時にはこの偶力振動は無視できない。したがってM15A-FKS型はギヤ駆動式のバランスシャフトを備えている。一方、ハイブリッド用のM15A-FXE型はモーターとの組み合わせのためバランスシャフトは省かれている。

ハイブリッド用のM15A-FXE型

M15A型のテクノロジー

従来のダイナミックフォース エンジンと同様に、M15A型は、高圧縮比、直噴、高速燃焼を追求。圧縮比は非公表ながら、M20A型がベースになっていることを考えると、M15A-FKS型で13.0、ハイブリッド用のM15A-FXE型では14.0と推測される。レギャラーガソリンとしてはきわめて高圧縮比で、マツダのスカイアクティブ-Gエンジンを上回っていることも推測される。

M15A-FKS型の特長

ただし、吸気カムシャフトは電動式可変バルブタイミング、排気カムシャフトは油圧式可変バルブタイミング機構を装備しており、M15A-FKS型は部分的にアトキンソンサイクル運転、ハイブリッド用のM15A-FXE型はフルにアトキンソンサイクル運転を採用している。

さらに水冷式EGRクーラーを組み合わせた大量EGR運転を組み合わせることで、ポンピング損失を大幅に減らしている。

バルブ挟み角により決定される燃焼室形状は、かつてのコンパクトなペントルーフ型よりは挟み角を広げている。その理由はコンパクトペントルーフ型を維持しながら、高出力化のために吸気ポートを気流の抵抗が少ないストレート形状にするためだ。一方で吸気マニホールドは超ロングタイプで、低中速トルクを高めている。

また、大量EGRを使用する低負荷域でも高速燃焼を実現し、空気と霧化燃料の混合状態を良くするために、高タンブル(急激な縦渦)流が求められる。M15A型は燃焼室入り口の吸気ポートの下端にレーザーで金属粉を固着させた突起を設け、この突起で吸気の流れを剥離させて高速のタンブル流を生み出している。

燃料供給はM15A-FKS型は直噴、M15A-FXE型はポート噴射式を採用している。

M15A型は、その他に超低粘度オイルを採用して摩擦抵抗を低減し、新型電動ウォーターポンプの装備により冷却損失の低減を図っている。また集合排気ポートと直下型触媒を採用し、排ガスの浄化効率を向上させ、WLTP規制に対応している。

ダイレクトシフトCVT

M15A-FKS型エンジンは、発進ギヤ付きのCVT(ダイレクトシフトCVT)を組み合わせ、発進時のもたつきを抑え、同時に7.6という広めの変速比幅に設定することで、加速性能と燃費性能を両立させ、WLTCモード燃費は21.6km/Lとしている。

驚異の燃費を実現した新ハイブリッド・システム

ハイブリッド車には、従来のアクア ハイブリッドを超える世界トップレベルの燃費を目指すという使命が課せられている。そのため、ハイブリッドシステムも大幅に進化させている。トランスアクスルは複軸化され、モーターは高回転、高出力化されている。

ハイブリッド用のM15A-FXE型の特長

さらにパワーコントロールユニットも小型化と同時に高電圧化し、従来比30%の電力変換損失低減を図るなど高性能化している。モーター出力は80ps/141Nmで、従来型より30%アップとなっている。

新開発のコンパクトなハイブリッド トランスアクスル
進化したハイブリッド システム

さらに、バッテリーはプライムアースEVエネナジー社製のリチウムイオン バッテリーを装備した。従来のニッケル水素バッテリーに比べ、減速時の回生エネルギーの回収効率が高まり、加速時にはよりクイックに、より大きな電力の放電ができる。

そのためモーターは従来のニッケル水素バッテリーに比べ、速く、より大きな駆動力を発生させることが実現している。またこのメリットを生かし、動力性能の向上だけではなく、より低燃費な制御も可能になっているのだ。

プライムアースEVエネナジー社製のリチウムイオン バッテリー

ハイブリッド専用のM15A-FXE型エンジンと新型ハイブリッド システムの組み合わせにより、燃費は従来比20%アップのWLTCモードで36.0km/Lを達成している。従来のJC08モード燃費では約42km/Lに相当する驚異的な低燃費ということができる。

なおダイナミックフォース エンジンとして共通の最高熱効率に関してM15A型は未公表だが、M15A-FKS型で40%程度、M15A-FXE型はそれを上回るのではないかと想像できる。

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