ダイハツ、トヨタ、スバルからAセグメントのワゴン「トール」「タンク」「ルーミー」「ジャスティ」が発売され、ダイハツ、トヨタのモデルに試乗する機会があったので、その様子をお伝えしよう。<レポート:高橋 明/Akira Takahashi>
このAセグメントのワゴンにはスズキ・ソリオが唯一存在し、ちょうどいいサイズ感が人気でマーケットを独占してきた。その後発としてライバルから今回のモデルがラインアップしたわけだが、企画、製造はダイハツが中心となって進めているモデルだ。
車両のベースは2016年4月にフルモデルチェンジを行なったブーン/パッソと共通のプラットフォームで、エンジンも同じく1.0L・3気筒エンジンを搭載する。ただし、ターボエンジンを新規に開発し、このトールシリーズに初搭載している。
ちなみにダイハツが「トール」でターボ搭載モデルが「トールカスタム」となる。トヨタは「タンク」「ルーミー」で、ともにカスタムがあり、販売店の違いでネーミングが異なっている。
モデルはエンジンが2種類で、FFと4WDがそれぞれにラインアップする。またボディカラーは2トーン仕様5色、モノトーン9色の全14色から好みに合わせて選択できるカラーバリエーションを持っている。
<■ポジショニングとカスタマーターゲット
全長3700mm×全幅1670mm×全高1735mmでホイールベースは2490mm。ちなみにスズキ・ソリオは全長3710mm×全幅1625mm×全高1745mm、ホイールベースは2480mmとなっていて、お互いに微妙なサイズの違いを出している。両車の全幅では50mmの差があり、この差をユーザーがどう捉えるのか興味深い。
さて新型トールは、ダイハツ商品企画によれば、徹底した市場調査をしたデータをもとに、求められる性能、機能を満足できるレベルに引き上げて新開発したという。マーケティングデータでは想定サンプルファミリーを2組設定し、そのファミリーが求めるものをふんだんに盛り込んだというわけだ。
想定ファミリーを少し紹介すると、Aファミリーのご主人は30代前半、奥様20代、子供が小学校高学年と幼稚園。郊外に住むが地元を愛し、両親も比較的近くに住む。週末はショッピングモールが楽しみという家族だが、クルマでは自己主張したいというAファミリー。
もうひと家族Bファミリーは、ご主人が30代後半、奥様も30代で都会に住み、比較的晩婚だが、堅実。次に買うクルマは軽自動車よりも少し大きくしたいが日常の使いやすさは重視したい。自分たちの時間も大切だが、子供中心の日々。週末は子供のサッカー応援。衝動買いはしない、という想定ファミリーだ。
これらの想定家族の使用環境で、ショッピングモールではスライドドアが欲しい、3世代家族が乗るので、祖父、祖母には乗降性が重要などといった要件を洗い出し、ダイハツ・トールに詰め込んだということだ。
さて、こうした開発背景があることがわかり、それはユーザーの声を最大限に反映するクルマ造りから生まれたということだ。Aセグメントに限らずCセグメントクラスあたりまでのコンパクト量産モデルは多かれ少なかれ、こうした意図で商品企画が成り立っている。ユーザーニーズの反映方法の違いにより、個性を出そうというわけだが、どうしても逸脱できない範疇が作られてしまうだけに、白物家電的な言われ方をするのも、このクラスには多い。
■パワートレーン
こうした想定ユーザーへの搭載パワートレーンは1.0Lの自然吸気エンジンとターボ搭載モデルで、いずれもCVTとの組み合わせを選択している。前述のようにブーン/パッソにも搭載する自然吸気エンジン1KR-FE型だが、制御を変更しスロットル開度を早開きとすることで、追い越しや登坂でのトルクの立ち上がりを際立たせている。同時に加速性能でも出だしが速くなるように改善している。
一方の1.0Lターボエンジンの1KR-VET型は98ps/140Nmで1.5Lの自然吸気クラスと同等のトルクを発揮する。ちなみに、燃費だがNAのJC08モード燃費は24.6km/Lでターボは21.8km/Lという数値になる。
燃費競争ではダイハツとしては、それなりの燃費であれば十分な性能であると判断したのかもしれない。燃費を競うがためにドラビリなどを犠牲にしたくない、ということがあるかもしれない。ちなみに先ごろストロングハイブリッドが追加されたソリオの燃費は32.0km/Lと圧倒的なモード燃費の違いがある。
■試乗インプレッション
さて、おおまかなディテールが見えたトールシリーズだが、エクステリアでは個性的なデザインに仕上がっていると思う。標準車、カスタムともに主張のハッキリとしたデザインで分かりやすい。こうした分かりやすさも重要なポイントだ。
インテリアでも当然同じ制約の中で、より良いものを、そして個性的なものとして考えられているわけだが、後席へのウォークスルーなど子育てファミリーのニーズを熟知したインテリアだと思う。
また、コンビニフックや小物入れ、シートアレンジなど、使い勝手も十分研究されているわけで、1時間ていどの試乗時間でこれらのUSPを理解し、評価することは不可能でじっくりと使い倒すくらいの試乗期間が必要だと思った。
走行してみると、一番うれしいのは、こうした量販のスモールコンパクトでも上質な乗り心地と感じるところだ。これは軽自動車タントでも驚かされたが、ダイハツのこうした技術はある意味コツを掴んでいて、まさにこのクルマもクラスを超えた乗り心地になっている。
静粛性の点でも優れているが、唯一エンジンの音が車内に入りやすいのが残念。とは言ってもエンジンの回転が上がらなければそれほど気になるレベルではない。入り込んだそのエンジンの音質についても軽自動車の延長線上にあると感じる音で、3気筒の難しさがあるのかもしれない。
ターボモデルは確かに力強い。アクセルを踏み込むとシートバックに上半身がグッと押し付けられるようなパワーが感じられる。高速での合流や追い越しなども気を遣うことなく走れるだろう。
ダイハツには4気筒・1.3Lのエンジンも持っているわけで、車格的にはこちらのほうがベストマッチに思うが、その疑問をエンジニアにぶつけてみると、3気筒と4気筒の質量の違いが大きいという。確かに3気筒搭載でも車両重量が1100kg前後あり、ソリオより100kgほど重くなっている。4気筒になればさらに重量増は間違いなく、燃費を考えれば重くなる分厳しくなるわけだ。
だが、想像するにブーン/パッソ用に開発した3気筒エンジンは、やはりクルマと同様に量産効果による利益を出す要求が高いのではないかと思う。トヨタのTNGAにより新世代エンジン群が今後どんどん開発され、開発費用の回収を急ぐ必要があるのではないか?と想像するのだ。1.3Lのほうは以前からトヨタに供給されており、ある意味いいペースですでに回収の軌道にのっている。1.0Lはまだ軌道に乗ったばかり、といった勝手な憶測だ。
試乗コースも今回は東京お台場の埋め立てエリアであり、フラットな碁盤の目レイアウトで、試乗テストするにもあまりいろいろなデータは集められなかったが、一般的な運転の仕方だと、上質な乗り心地が印象的で、静粛性にも気を配ったモデルだというのが分かる。会話明瞭度も計測しているので、家族のためのクルマとして研究されたモデルということだろう。
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