ダイハツは2021年11月1日、新開発したシリーズ ハイブリッド「e-スマート ハイブリッド」を搭載した「ロッキー」を発売した。また同時にトヨタもロッキーの兄弟車「ライズ」に同様のハイブリッド システムを搭載して発売した。そしてe-スマート ハイブリッドの投入と同時タイミングで、「ロッキー」、「ライズ」の一部改良、ラインアップ変更を行なっている。
e-スマート ハイブリッドと新型1.2Lエンジン
軽量、コンパクトサイズのクルマに最適なハイブリッドシステムとして、シリーズ ハイブリッド「e-スマート ハイブリッド」が新開発された。日産のe-POWERに続く2番めのシリーズ ハイブリッドだ。走行はモーターのみで、搭載するエンジンは発電専用。そしてこのe-スマート ハイブリッドはより低価格で実現しているのが大きなアピールポイントになっている。
このe-スマート ハイブリッドに組み合わされる発電用エンジンも新開発された。新エンジンは1.2Lの3気筒でWA-VEX型と名付けられている。そしてこの新しいエンジンは、e-スマート ハイブリッドと組み合わされる高熱効率版と、FFモデル用の自然吸気エンジン「WA-VE型」の2種類が同時展開されている。
この新しい「WA-VE型」エンジンは排気量1196ccで、ボア・ストローク73.5mm×94.0mmという超ロングストロークとしている。スモールボアの燃焼室を採用し、圧縮比は12.8ときわめて高い。
燃料はポート式デュアルインジェクターによる噴射とし、微粒子噴霧を実現し、ポート、燃焼室の壁面への燃料付着を抑制。そしてインテークポート形状は高流速となるストレート形状を採用。ポート部で吸気流を剥離させ、強いタンブル流を発生させることができるようになっている。この強いタンブル流と圧縮比が高いコンパクトなペントルーフ型燃焼室により、かつてない高速燃焼が実現しており、従来の1.0Lエンジンに比べ燃焼時間は25%短縮し、高速燃焼による高効率エンジンとなっている。
またこのエンジンは水冷EGRも採用し、高EGR比とすることでポンピングロスの低減を図っている。
さらに冷却損失を低減するために、シリンダーヘッドとシリンダー部をそれぞれ独立して冷却できる2系統冷却を採用している。2系統冷却は、冷間時、冷却水はシリンダーヘッド部をバイパスし、エンジン負荷が高まるとシリンダーヘッドに冷却水が循環するようになり、一方でシリンダー側はより高水温を保つようにするシステムでフリクションの低減を図っている。
このような技術を投入し、WA-VE型は最高出力87ps/6000rpm、最大トルク113Nm/4500rpmを発生。従来の1.2Lエンジンとの比較では4800rpm以下で大幅にトルクをアップし、低中速域で扱いやすい特性としてる。
e-スマート ハイブリッドに組み合わされる発電用エンジン「WA-VEX型」には、2系統冷却は装備せず、より発電回転域でのトルクを重視してフリクションを低減するなどし、最高出力82ps/5600rpm、最大トルク105Nm/3200-5200rpmを発生。この「WA-VEX」型エンジンの最高熱効率は40%に達している。
ハイブリッドシステムは発電ジェネレーター、駆動モーターを並列に配置し減速トランスファーと一体で、コンパクトにまとめたトランスアクスルとしている。発電された電力や回生電力はリヤシート下に配置されたリチウムイオンバッテリーに蓄電される。
バッテリーは48セル/4.3Ah、容量は0.73kWhで、低中速域ではバッテリー電力の使用を優先し、高速域では充電を優先する制御となっている。このため市街地走行ではEV走行がメインになるとしている。
駆動モーターは78kW(106ps)、最大トルク170Nmで、1060~1070kgの車両重量に対して十分な出力を確保。そのためモーターならではの加速レスポンスの良さ、力強いトルクが発生し、加速Gでは従来の1.0Lターボエンジン車の約2倍、中間加速でもモーターならではの力強い動力性能を発揮することができる。
またこのハイブリッドモデルはスマートペダル機能を備え、アクセルペダルを戻すだけで回生ブレーキが発生し、加減速をアクセルペダルの踏み加減でコントロールできるワンペダル ドライビングも可能になる。またこのスマートペダルはクリープ走行も可能でキャンセルスイッチも装備している。
e-スマートハイブリッド車の燃費はWLTCモードで28.0Km/Lで、このクラスでダントツトップだ。非ハイブリッドのWA-VE型エンジン搭載のFFモデルはCVTとの組み合わせでWLTC燃費は20.7km/Lとなっている。
なお今回開発されたe-スマート ハイブリッドでは発電ジェネレーター、駆動モーター、リチウムイオンバッテリー、パワコントロールユニットはトヨタの技術やユニットが採用されている。また、このe-スマートハイブリッドは今後、できるだけはやく軽自動車にも導入する計画になっている。
その他の改良点
今回のe-スマート ハイブリッド導入に合わせ、ロッキーのモデルラインアップにも変更がある。従来は2WD、4WDのいずれも1.0Lの3気筒ターボ(1KR-VET型)を搭載して、プレミアム、G、X、Lグレードを展開していたが、今回から2WDモデルはプレミアムGハイブリッド、Xハイブリッドと、非ハイブリッド/CVT車はプレミアムG、X、Lとし、4WDモデルのみが1.0Lターボを搭載し、グレードはプレミアムG、X、Lとなっている。
一方、トヨタ ライズは、ハイブリッドモデルがZ、G、1.2L/CVTがZ、G、X、1.0Lターボ・4WDがZ、G、Xというラインアップである。
コンセプトとしては1.2Lハイブリッドは、燃費、先進性追求モデル。1.2LのCVTは市街地向けで、かつ低価格モデル。1.0Lターボ4WDは走りにこだわるアクティブユーザー向けのモデルとキャラクター分けを行なっている。
新規投入されたe-スマート ハイブリッド車は、日常的にはエンジンが停止した状態での運転が多く、また発電時のエンジン音を抑えるため、ダッシュサイレンサーの三層化やフードサイレンサーの遮音性向上、エンジンアンダーカバーへの吸音材の追加などにより、キャビン内の静粛を高めている。
この他に、運転支援システムのスマートアシストはステレオカメラがアップグレードされ、夜間歩行者検知、検知できる道路標識種類の拡大、ふらつき警報、路側逸脱警報などの新機能が追加されている。
さらに、センターコンソールのデザインが刷新された他、上級グレードはオートブレーキホールド機能付き電動パーキングブレーキを装備。
また停電などの非常時に使用できる100V/1500Wの外部給電機能も新たにオプション設定されている。
ロッキー、ライズが採用しているDNGAプラットフォームは当初から電動化を想定した設計になっており、その素性を生かしてハイブリッドモデルが開発されている。そしてロッキー、ライズは200万円+αの価格でシリーズハイブリッドを実現したことで、いよいよAセグメントから軽自動車までもカバーできるストロングハイブリッドが誕生し、このクラスにも本格的な電動化の波が押し寄せてきていることを実感する。