トヨタは2019年9月17日、これまでのカローラ・アクシオ、カローラ・フィールダーからカローラ・セダン、カローラ・ツーリング(ワゴン)に車名を変更し、TNGAプラットフォーム採用するなどのフルモデルチエンジを行ない、同時に2018年に先行して発売されたカローラ・スポーツ(ハッチバック)を一部改良し、発売を開始した。
TNGAによるカローラの統一
カローラ・シリーズは、世界150以上の国、地域で累計販売台数4750万台を超えるトヨタを代表するロングセラーカーだが、近年は地域ごとにクルマの造り分けを行ない、車名も異なるなど、地域最適化の方針を採用してきた。だが、今回のモデルからは、グローバルでTNGAプラットフォームを採用し、真のグローバルモデルに生まれ変わった。
この新世代の12代目カローラ・シリーズは、すでにアメリカ、ヨーロッパ、中国など主要市場で販売が開始されており、日本でのデビューが最後だ。これまでの日本のカローラは、欧州仕様のオーリス(ハッチバック→現在はカローラ・スポーツ)、そしてセダンのカローラ・アクシオ、ステーションワゴンのカローラ・フィールダーという展開で、オーリス系は多くの海外仕様と共通のCセグメント用プラットフォーム、アクシオ、フィールダーは日本専用にBセグメント用プラットフォームを採用した5ナンバー車だった。
日本専用のカローラ
しかし、ついに12代目では世界共通のTNGAプラットフォームを採用している。ただしこの12代目のカローラ・シリーズの企画当初から、日本仕様のセダン、ツーリング(ステーションワゴン)のデザインはグローバル共通としながら、ボディサイズはできるだけコンパクトにすることが決定された。
そのため、日本仕様はグローバル・モデルと比べて、プラットフォーム、ガラス類は共通だが、ボディの外板はすべて専用設計になっている。ホイールベースは日本仕様が60mm短く、全幅はグローバル・サイズは1790mmだが、日本仕様は1745mm、全長はセダンが135mm、ツーリングは155mm短縮されている。それにも関わらず、デザインは一見してグローバルモデルと区別がつかないという点は、巧妙な設計のマジックだ。
つまり、従来の5ナンバー車とほぼ同等の取り回し、扱い安さを実現しているのだ。その一方で、TNGAの採用による低重心化、安定性と意のままのハンドリングを訴求し、従来のカローラのイメージを一新している。なお、カローラ・スポーツだけは従来同様にヨーロッパ・テイストをアピールするモデルのため、ボディ寸法はグローバル・モデルと共通になっている。
また、従来のカローラ・アクシオ、カローラ・フィールダーは設定グレード、一部の装備を見直して併売する。もちろんこれは法人需要、レンタカー向けなどフリート販売用だ。
デザイン
デザインは、TNGAプラットフォームの採用により低重心でワイド感のあるボディフォルムを実現。前後のホイールハウスの張り出しを強調し、従来モデルと比べて格段にダイナミック感を生み出している。
フロントは、ロワグリル・フレームを大型台形とし、メッシュグリルを採用して力強くスポーティな、キーンルックのデザインとしている。
ヘッドランプは、LEDを採用。また、W×Bグレードは連続させたJ字形状のクリアランス・ランプ&デイライトを採用し、昼夜を問わず横方向に伸びやかで鮮やかな印象を表現している。
リヤは、水平基調のリヤコンビランプを採用し、ワイド感を強調している。カローラ・ツーリングのサイドビユーは、後方へ抜けの良いサイドウインドウ・グラフイックとドアショルダー部でセダンとは一味違う伸びやかさを表現。また、カローラ・ツーリングは、樹脂バックドアを採用することで、立体的なデザインとしている。
インテリアは、インストルメントパネルを薄型でワイド化することで開放感を強調。部品の合わせや形状、質感の統一感など感性品質にこだわり、上質感を高めている。またAピラーの細形化などにより運転のしやすさに通じる視界の良さも追求している。
フロントシートは、スポーティシート(W×Bに標準)を採用し、座り心地の向上と後席のニースペースを十分に確保。W×Bグレードのリヤシートには、トランクスルーが可能な6:4分割可倒式を新規採用し、使い勝手の良さを向上させている。
カローラ・ツーリングは、ラゲッジスペースにリバーシブル・デッキボードを設定し、荷室床面の高さを2段階に調節できるようにしている。ボードを上段にセットし、後席を倒せば長い荷物の積載に便利なフラットなスペースが生まれ、下段にセットすれば、背の高い荷物の積載が可能だ。(ただしスペアタイヤ、アクセサリーコンセント装着車、ハイブリッド4WD車は1段式のみ)。また、デッキボードの裏面は樹脂製とし、汚れを洗浄しやすくなっている。
インテリアカラーは、カローラ・セダン、力ローラ・ツーリングのWxBグレードにブラックとホワイトの2色、S、G-Xグレードはブラックを設定している。
パワートレーン
カローラ・シリーズは3種類のパワートレーンを設定している。ハイブリッド車とガソリンエンジン車は、排気量を1.5Lから1.8Lに変更。ハイブリッド車はアトキンソン・サイクルの2ZR-FXE型、ガソリンエンジン車は2ZR-FAE型だ。
2ZR型エンジンはボア80.5mm×ストローク88.3mmのロングストローク型だ。2ZR-FAE型はデュアルVVT-i、可変バルブリフト機構のバルブマチックを採用している。なおこの2ZR-FAE型はカローラ・スポーツには搭載されない。2ZR-FAE型エンジンは7速スポーツシーケンシャルモード付きCVT-iとの組み合わせのみになっている。
また、8NR-FTS型1.2L直噴ターボエンジンも設定され、このエンジンは10速スポーツシーケンシャルモード付きiCVT-iか、6速のi-MTを選択できる。
カローラ・セダン、ツーリングのハイブリッドモデルのみにE-Fourが設定され、カローラ・スポーツの4WDはNR-FTS型エンジン/CVT-iとE-Fourの組み合わせのみとなっている。
シャシー
TNGAプラットフォームを採用し、フロントはストラット式、リヤはダブルウイッシュボーン式サスペンションを備えている。リヤのロードホールディングを高め、コーナリングでの安心感・安定性を追求した。
またシャシーの開発にあたっては、運転中のドライバーの目線の動き、旋回時の姿勢変化などに着目し、目線の動きの少ない、上半身の姿勢安定性が高い、フラットな乗り心地として疲労を抑制。乗り心地もしなやかで高い安定性を追求している。また、ライントレース性やステアリング応答性を高め、運転がしやすく、意のままのハンドリングを目指すなど、走りの基本性能を大幅に向上させている。
ダンパーは、カローラ・スポーツで初採用した摩擦コントロール式を採用し、さらに改良を加え、ステアリングを切った初期段階ではダンパー内の摩擦力を利用してピッチ、ロールの制御を行なうことでステアリングの切り始めの応答の良さと、操舵が終わった時の車体の収まりの良さを両立させている。
この技術は、ダンパーの初期摩擦を利用したシンプルな方式だが、働きとしては摩擦利用タイプのGベクタリング・コントロールだ。またさらにステアリングの切り角が大きい領域では各輪独立のブレーキ制御により、内輪に制動力を付与し、コーナリングをアシストするブレーキ・トルクベクタリング(アクティブ・コーナリングアシスト)を装備している。
安全システムと新たなコネクテッド
新型カローラは、自転車や夜間の歩行者検知が可能な最新の予防安全パッケージ「toyota・セーフティ・センス」を標準装備している。
また駐車場など低速時に壁や車両を検知し、衝突被害を軽減するインテリジエント・クリアランスソナーを設定(W×B、Sに標準装備、G、Xにオプシヨン)。後方から接近してくる車両を検知し、衝突被害軽減に寄与する、リヤクロストラフイツク・オートブレーキも設定(オプシヨン設定。MT車はリヤクロストラフィックアラート+ブラインドスポットモニターをオプション設定)。
この新型カローラから国内のトヨタ・ブランドとして初めてディスプレイオーディオ(DA)を全車に標準装備とした。このディプレイオーディオとスマートフォンが接続可能となり、日常利用している地図アプリや音楽などをデイスプレイ上で操作・利用が可能となっている。
スマートフォンとディスプレイオーディは大容量の通信を行なうため有線接続で、スーマートフォントはSDL(Smart Device Link)規格が採用されている。従来からあるAndroid Auto、Apple CarPlayのデュアルの接続はオプション扱いだ。
また、この新型カローラの発売のタイミングに合わせて、Lineカーナビがスタートしており、トヨタのナビゲーション・エンジンを利用したカーナビ機能はもちろん、その他の各種情報、天候、地域情報,さらにLineメッセージのやり取りなど、様々な情報の取得や設定、音楽再生などが音声会話式で実行可能になっている。様々な情報はLineのバックエンド・クラウドから得られる。
Lineカーナビ
スマートフォンを使用しないユーザー層向けには、従来通りの車載用ナビのエントリーナビキット、またはT-Conectナビキットの2種類が選択可能だ。
新型カローラは、車載通信機を標準装備しており、緊急コールなど各種のコネクティツドサービスは基本利用料5年間無料で、6年目以降は3万1300円/年(税抜)、または、300円/月(税抜)となるシステムで、新型カローラは本格的なコネクテッドカーとなっている点も大いに注目すべきである。