【自動車メーカー第1四半期決算】各社軒並み減益 関税やIRA法の影響は

各自動車メーカーの4月から6月末までの第1四半期の決算が8月上旬に発表された。この決算では、各自動車メーカーは米国トランプ大統領による自動車関税の影響がどれほど反映され、その影響はどうなるのかが注目された。

アメリカによる日本の自動車への25%の関税は4月1日に発効している。その後、7月には日米間の交渉により「基準15%」とする貿易・投資に関する合意が発表された。これにより自動車関税は軽減される見通しとなっているが、自動車関税を15%とする時期は現時点でも協議中となっている。

また、トランプ大統領はバイデン大統領の時代に施行されたIRA法(インフレ抑制法)を弱体化しようとしている。IRA法は、インフレ抑制と同時にクリーンエネルギーへの移行を加速させ、国内の製造業を強化することを目的とし、EV製造に対する補助金、EV購入に対する税額控除などが含まれていたが、これが廃止されれば自動車メーカーのEVシフトにもブレーキが掛かることになる。

ただし、IRA法は連邦法のため大統領令で廃止することはできず議会での議決が必要になるが、共和党が多数を占める両院でこのIRA法の効力を弱体化、無効化することは可能であり、現在はこの方法により実施される見通しになっている。

この結果、アメリカの自動車メーカー、日本の自動車メーカーは従来のEV戦略の見直しが迫られており、ホンダのアメリカにおけるEV増産体制の先送りなど影響が大きい。

このように、自動車関税やトランプ大統領による環境政策の抑圧により、各国の自動車メーカーはもちろん、日本の自動車メーカーは大きな影響を受けているのである。

第1四半期の決算と関税の影響

自動車メーカー6社の2025年4月から6月末までの第1四半期決算では、アメリカの関税措置による影響額が合わせて7830億円に達している。

メーカー別の関税による減益額は、トヨタは4500億円、ホンダは1246億円、マツダは697億円、日産が687億円、スバルが556億円、三菱自動車が144億円となった。3ヶ月間でのこうした減益により、第1四半期の決算は軒並み減益になっている。

また7月に日米交渉で合意した15%の自動車関税を前提とした影響は、トヨタは1兆4000億円、ホンダは4500億円と試算している。ただし、15%の関税適用が遅れるほどこの影響はより大きくなる。

各自動車メーカーは、アメリカでの販売価格のアップ、つまり関税の価格反映を現時点では行なっておらず、関税分は自動車メーカー側の負担としてのしかかっている。

このため、第1四半期の決算では、再建中の日産は売上高は前年同期から9.7%減となる2兆7069億円、営業利益は前年同期(9億9500万円)から赤字化して-791億円、営業利益率は-2.9%となった。

そしてマツダの売上高は前年同期比8.8%減の1兆997億円の減収、営業損益が-461億円という赤字に転落している。なお、通期見通しでは、営業利益として約500億円の黒字化を死守するとしている。

そのため、アメリカ市場ではCX-50の増産、その他市場での販売促進をするとともに、今期に登場する新型CX-5に命運をかけることになる。

トヨタは、売上高が第1四半期期としては過去最高を更新した一方、営業利益は関税の影響が4500億円のマイナスとなり、前年同期比10.9%減の1兆1661億円となり増収・減益となっている。売上高が伸長しているのは関税適用前後に集中的に生産、販売を推進した結果である。

スバルは、生産台数増により売上高は1兆2141億円で前年同期比11.2%の増収となったが、営業利益は前年同期比116.2%となる764億円となり、トヨタと同様に増収・減益となっている。

ホンダの売上高は、前年同期比1.2%減の5兆3402億円、営業利益が前年同期比49.6%減の2441億円と減収・減益となった。ホンダの場合は2輪事業は絶好調を維持し、アメリカでの4輪事業も順調に推移しているが、中国での退潮傾向に歯止めがかかっていないのが懸念材料だ。

減益の大きな要因は、アメリカにおけるEV生産拡大体制の先送りによる1100億円を、一過性の費用として計上した結果である。通期予想は、当初の予想から上方修正しており、売上高を8000億円増の21兆1000億円、営業利益を2000億円増の7000億円としている。

三菱は、売上高が前年同期比3%減の6091億円、営業利益は前年同期比-84%となる299億円減の56億円となり、かろうじて黒字を維持することができた。販売台数は前年同期と同水準の19万4000台である。

三菱の通期予想は、売上高2兆9500億円、営業利益1000億円を見込んでいる。ただ、三菱のメイン・マーケットであるアジア市場では、中国メーカーの躍進が顕著であり、この中国メーカーに対抗する商品郡の投入が必須となっている。

自動車関税は、完成車だけでなく、自動車部品にも課せられるため、アメリカの工場で生産されるクルマであっても関税の影響をかなり受けることになる。また、いつから25%の関税が15%に変更されるのかによっても影響は大きく左右される。

いずれにしてもこれから2年間ほどは、日本の自動車メーカーにとって冬の時代が続くと予想せざるを得ない状態にある。

ページのトップに戻る