STI フォレスターtS 試乗記 世界の上級SUVと真っ向勝負するハイレベルの走りと質感 レポート:松本晴比古

マニアック評価vol308

スバル STI フォレスターtS
スポーツ性が高い俊敏でリニア感のあるハンドリングと、高速での上質な巡航性能を両立させたフォレスター tS

2014年11月25日、スバル・フォレスターが年次改良を受けたタイミングに合わせ、STIからフォレスター 2.0 XT アイサイト(年次改良を受けたCタイプ)をベースにした限定コンプリートカーのフォレスターtSが発売された。「tS」の名称からもわかるようにSTIのシャシーの専用チューニングとSTIのスペシャルパーツをを装着した300台の限定モデルだ。

■コンセプトとポジショニング
フォレスターtSも、STIのコンプリートカー共通のコンセプト、「スポーツ・オールウェイズ」で、走って気持ちよい、運転が上手になるクルマであり、走る楽しさ世界ナンバー1を目指している。そして今回のフォレスターtSの場合は、「オンロード」、「タフ・スピード・クラッシィ」がコンセプトワードに選ばれている。ドライバーの意図した通りにクルマが反応し、強靭でしなやかなフィーリング、ツールとしての一級品感など、これまでのtSシリーズと共通のテーマに加え、上級SUVとして上質で快適な乗り心地、静かで軽快なサウンドという新たな性能を付加しているのが特徴だ。

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走りや性能の目標は、操舵に対する遅れがなくリニアに車体が反応すること、高速安定性、危険回避性能の向上、ピッチングを抑えたフラットでしなやかな乗り心地、上質な室内空間とするための静粛性の向上と軽快なサウンドを実現することだ。そしてユーザー像としては、従来からのスバル&STIファン層に加え、輸入車SUV購入層も視野に入れている点が注目される。

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そのため開発段階での目標性能は、これまでのSTI tSモデルは各性能をどこまで引き上げるかという方向性であったが、今回はセグメントでトップの性能ターゲット車を選び、それらの性能を上回ることが重視された。専門的になるが、特に重視されたのは操舵応答性の速さ、高速走行時のロールレート、高速走行時のピッチングレート、NVHと静粛性などである。つまり、ステアリング操作に対してリニアに素早く車体が反応すること、ステアリング操作に合わせたじわっと動くロール特性、高速走行でのピッチングの少ないフラットな乗り心地、振動感を抑えた静かな室内といった内容だ。

性能ターゲットとされたのは、Cセグメント・プラスのSUVの中でトップのハンドリング性能と位置付けられるフォルクスワーゲン・ティグアンと、プレミアム・セグメントのレンジローバー・イヴォークだ。操縦安定性や走りの質感はティグアン、静粛性や乗り心地、上質感などはイヴォークが目標とされ、各性能をターゲット車と同等以上にするべく開発が行なわれた。そのため、ニュルブルクリンク・サーキット、ドイツのアウトバーンや地方道でも走り込み、チューニング、熟成を行なっている。世界のトップを目指すというSTIの志は潔いし、これまでの様々な性能を向上させ、磨き上げるというステップから、世界のトップレベルを見据えてそれを上回るという今回の開発はSTIが新たなステージに上ったことを意味している。

さらに、今回はSTIのtSモデルで初のアイサイトver2装着車であり、tSが装備するブレンボ製ブレーキや19インチサイズにタイヤに合わせたアイサイトのキャリブレーションも行なわれている。

スバル STI フォレスターtS

主要な装備は、前後の専用ダンパー/コイルスプリング(フロントは倒立式)、BBS製の専用デザインの鍛造19インチホイール(19×7.5J)と専用のサマータイヤ(ブリヂストン・トランザER33 245/45R19)、ブレンボ製ブレーキ(フロント4ポット/リヤ2ポット)、そしてフレキシブルタワーバーやフレキシブル・ドロースティフナー、新開発のフレキシブル・サポート・サブフレームなどをシャシーに取り付けている。

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FA20型の2.0L直噴ターボ・エンジン、リニアトロニックCVTはノーマルのXTと同じで、最高出力も変更はないが、ECU、TCUのチューニングを行ない、SIドライブでS#モードを選択すると、低中開度でのエンジンレスポンスを向上させ、同時にCVTの8速ステップ変速もよりクロスレシオに変化するように制御が変更されている。

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スバル STI フォレスターtS

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エクステリアは、前後の大型アンダースポイラー、フロントグリル、ルーフスポイラー、ウインドウモールのブラック塗装、インテリアでは本革巻きステアリングホイール、アルカンタラ+レザーの専用デザインシート、アルミペダルなどを採用している。いうまでもなく、これらのtS専用装備は単品総額では112万円分になるが、tS専用装備となっていることでコストパフォーマンスは抜群だ。

スバル STI フォレスターtS

■試乗レポート
まず最初は、上り下りのあるワインディングロードでの試乗となった。ISドライブをS#に切り替えてみると、確かにスロットルレスポンスがよくなり、特に3000rpm辺りからのエンジンの吹け上がりがシャープに立ちがることが実感できた。またCVTの8速ステップ変速は8速目がローギヤード化されて変速比幅が少し狭められているので、本当のクロスレシオになっている。ただし、試乗した道路は中速以上のカーブが多かったため、このクロスレシオのありがたみはそれほどでもなく、もっとタイトなワインディングで真価が発揮されるはずだ。

スバル STI フォレスターtS

ステアリングの操作に対して、クルマの動きはクイックかつリニアで、気持ちよく、全長4595mmm、全幅1795mmという、山道では大き目ともいえるサイズのフォレスターだが、こうしたボディのサイズが気になることなく俊敏に駆け抜けるといった印象だ。

タイヤがサマータイヤになっていることもステアリングの手応えの確かさに繋がっている。開発を担当した商品開発部の渋谷真部長は、「最初から19インチの(オールシーズンタイヤではなく)サマータイヤにするつもりで、ヨーロッパ製のタイヤを含め各種をテストしましたが、操縦安定性やウエット性能、乗り心地などバランスの取れたトータル性能でこのトランザにしました」と語る。

ブレーキも17インチサイズのブレンボブレーキを装備しているため、剛性感、利き味も申し分なく、5人乗車、多くの荷物をフル積載したような状態でも、ブレーキの安心感は十分あるだろう。

乗り心地は、路面のギャップやうねりに対してもフラット感があり、いわゆるチューニングカー的なひょこひょこした動きもないので、同乗者にも優しい乗り心地だ。

スバル STI フォレスターtS

試乗ステージを高速道路に移すと、このフォレスターtSの走りは一段と際立った。大型の一体型フロアカーペットは制振・静音性の高いマスバック付きカーペットを採用し、フロアトンネルの室内側に制振インシュレーターを貼るなど、コストをかけて専用の対策を採用することで、高速巡航時の静粛性はベース車より明確に静かになっていることがわかる。こうした点は今までのtSモデルにはなかった発想だ。

スバル STI フォレスターtS

走りにパフォーマンスの追求だけではなく質感、乗り心地も高めるというコンセプトが実現されている。また高速道路での道路の継ぎ目の段差やうねりに対してもしっかり感のあるバウンシングで通過することができ、安心感のある締まった乗り心地だ。さらに直進安定性の高さや運転席からの視界のよさも高いレベルにある。

そうした安定感に加え、アイサイトver2の前車追従機能を使いながら高速道路を巡航し、長距離ドライブを楽しむ言った使い方でもこのクルマの良さを味わうことができる。フォレスターtSは山道でのスポーツカー的な走りと、クルージング性能を両立させた本格的なGT性能を持つSUVなのである。

なおフォレスター tSは、11月25日~2015年4月5日までの受注期間限定で、生産台数が300台とされている。その後にはレヴォーグやWRXのtSモデルも企画されているはずだ。

フォレスター tS 諸元表

フォレスター tS価格

STI公式サイト
スバル公式サイト

COTY
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