2015年3月20日、6月に正式発表が予定されている新型ロードスターの詳細情報、価格、グレードがようやく公開された。価格は294.8万円~314.2万円。従来モデルと比べてわずかにアップした価格帯で、トヨタ86とほとんど同レベルとなっている。発売前に実施された公道試乗会のレポートはこちらに掲載している。
■アウトライン
グレードは、ベースグレードのS(6速MTのみ)、S SpecialPackage(6速MT/6速AT)、S LeatherPackage(6速MT/6速AT)で、もちろんエンジンは1.5L・4気筒ガソリン、ボディはソフトトップのみの設定。LEDヘッドライトを全車標準装備している。減速エネルギー回生システム(i-ELOOP)とアイドリングストップはS SpecialPakage 以上のMTにオプション設定、ATは標準装備となる。
シャシーでは、S SpecialPackage、S LeatherPackageの6速MTモデルにのみリヤスタビライザー、トルセンLSD、センタートンネル・ブレースが装備される。なお、ヨーロッパ仕様などは、この、S SpecialPackage 6速MT仕様がベースモデルとなり、開発段階でもこれが新型ロードスターの基本アークテクチャーとされている。逆にベースグレードのSとAT仕様は初代ロードスターの再現版であり、エントリー層向けのグレードといった位置付けのようだ。また言うまでもなく、ベースグレードのSはレス仕様で、1000㎏を切る990㎏という車両重量を実現するためのモデルとなっている。
ドライバー支援システムは、ブラインドスポットモニタリング、ハイビームコントロール/アクティブフロントライト、車線逸脱警報がS SpecialPackageのMT、ATモデルにオーディオシステムとセットでオプションとされ、価格は21万6000円~30万2400円。
■企画&デザイン
新型ロードスターの企画の始まりは2007年。なんと8年も前にスタートしたという。もちろん企画が正式に承認を受けるまでには様々な紆余曲折があったと想像できるが、最終的にマツダの新ブランド戦略の先頭に立つブランド・アイコンという位置付けで企画が承認されたのだ。
つまりマツダが新世代商品群と呼ぶスカイアクティブ・シリーズの6番目であり、ブランドの精神を象徴する存在とされた。人馬一体、ドライビングプレジャー、いつでもどこでも心から楽しめるオープン2シーターといったロードスターとしての価値を守りつつ、ライトウェイト・スポーツカーという文化を構築した初代ロードスターの意気込みに立ち返り、オープン・スポーツカーの原点を目指すことが今回のテーマである。そのために軽量化、ダウンサイジングに取り組んでいる。
開発テーマは「人生を楽しもう」とされ、スカイアクティブ技術、魂動デザイン、感覚性能の追求が行なわれた。
ロードスターはグローバル商品であるだけに、いつの時代にもデザインは議論百出した経緯があるが、今回のコンペティションではアメリカ案と広島案との検討で広島案が選ばれた。よりコンパクトなサイズでまとめることにしたのだ。
パッケージングは、Aピラーが57㎜後退し、ドライバーの着座位置もより後方に。前後オーバーハングを極限まで短縮している。ドライバーの着座位置は、従来より20㎜低められ、15㎜中央に寄せられている。このためセンタートンネルの断面形状も変更され、パワープラントフレームの断面形状もコの字形状からZ形形状に変更されている。
また燃料タンクはこれまでの50Lから40Lに縮小され、インテリアではグローブボックスも廃止された。
ボディの全長を短縮しながらも寸詰まりに見えず、むしろロングノーズに見えるようなレイアウトとなり、さらに低いボンネット位置とされている。短いフロント・オーバーハングと低いボンネット高さを成立させるために、コンパクトなLEDヘッドライトが採用され、薄目を開けたようなヘッドライトデザインとなっているのだ。またフロントバンパーのグリルは、表情を豊かにするため唇状に成型されているのも特長といえるだろう。
新型ロードスターを上面からみると、前方、後方ともに強く絞り込んでいることがわかる。これもコンパクト・ボディを強調する手法で、特にリヤは断ち切るように短いオーバーハングと強いボディ平面の絞り込みを両立させるために3次元の絞りが採用され、大きくラウンドしたヒップが強調されている。
前後ともに曲面で形成され、ボディサイドも低いドアを備えているため左右方向に凸上に膨らんでおり、結果的にボディ全面が曲面で覆われ、プレスによるエッジはどこにも使用されていないという点も新型ロードスターの見どころだ。
■エンジン&トランスミッション
エンジンは、スカイアクティブG 1.5、P5VPR型直噴で、これまでの横置き用エンジンを縦置き用に設計変更しているため、燃焼室は共通だが大半の部品が新設計されている。また燃料もハイオクタン仕様とされている。基本のボア×ストロークは75.4㎜×85.8㎜と変更はないが、圧縮比はハイオクタン前提の13.0とされ、連続可変バルブタイミング機構を使用したミラーサイクル運転も一部使用する一方で7300rpmまで回せるように高回転化されている。いわばシリーズ・エンジンとして初の高出力型のスカイアクティブ・エンジンとなっているのだ。
吸排気系も新設計され、排気マニホールドはストレートタイプの等長4-2-1で、全長は450㎜とロングタイプ。またクランクシャフトも新設計され、これまでの鋳鉄製からスチール製のフルカウンター式を採用。カウンターウェイトは音質を向上させるために独特のプロファイルとなっている。フライホイールも新設計で、軽量タイプを装備している。
細部では、エンジン搭載位置を下げるため、従来の横置き用1.5Lエンジンのオイルパン形状を変更し、搭載位置を13㎜低くしている。またシリンダーヘッドカバーを1.7㎜厚のアルミダイキャスト製とし、エンジンの見栄えをよくしているのも特長になっている。
さらにスポーツカーらしく、エンジンの伸び感のあるトルク特性とし、軽快なエンジンサウンドを実現するためサイレンサーのチューニングも行なわれている。
トランスミッションは専用開発された6速MTと、アイシン製6速ATが設定されている。6速MTは2速以上をクロスレシオとし、さらに6速ギヤを直結レシオとしている。またギヤシフトは40㎜のストロークをキープしながら節度感など変速フィールもチューニングされている。6速ATは、古くはアルテッツァ、現在では86/BRZに採用されているアイシン製縦置き6速ユニットだが、ダイレクト感を実現するためトルクコンバーターは小容量とし、3速以上ではスリップロックアップ制御を行なうようになっている。アイドリングストップ/i-ELOOPにも対応。変速制御も最新のシステムを搭載している。
■ボディ&シャシー
パッケージングは、ダウンサイズしたボディ寸法と大幅な軽量化、切り詰めた前後のオーバーハング、フロントミッドシップ・レイアウトによる前後荷重配分50:50、そしてエンジン搭載位置の低下、ドライバー着座位置の下方化など、スポーツカーにふさわしいパッケージングとなっている。
ボディ骨格はロアフレームとしてサイドシル、フロアフレーム、センタートンネルなど大断面骨格によるバックボーン型で、新型ロードスターは従来より大幅に高張力鋼板の使用を拡大。またアルミ材は従来から採用されているボンネット、トランクリッド、パワープラントフレーム、サスペンションリンクなどに加え、新型はフロントフェンダー、フロントロアブレース、ルーフサポートパネル、リヤロールバーを含むリヤ・バルクヘッド部、フロント・ハブキャリアにもアルミ材を採用し、コーナリング時のヨー慣性モーメントを低減している。
ソフトトップは、ドライバー着座位置が後退したためもあり、片手で、軽い操作力でオープン、クローズができるようになっている。そのため走行中に雨が降り出したというような場合でも、すぐにソフトトップを閉めることができるのだ。なおS レザーパッケージのみはソフトトップ内側に吸音クロスを採用している。
インテリアでは、グローブボックスが廃止されている。インスツルメントパネルの位置も後退しており、助手席のスペースを圧迫しないように廃止されわけだが、物入れスペースの容量は従来のグローブボックスを含む容積と同等だという。またカップホルダーは脱着式となり、ドライバーが一人乗車の場合はセンターコンソールの助手席にセットし、2名乗車の場合はセンターコンソールの後端部に2個がセットできるようになっている。もちろんシート後方には貴重品を入れるカギ付きボックスも設定されている。
リヤのトランクはリンク式リッドにより80度近い角度で開き、トランク面をより深く、奥行きも拡大することで旅客機に持ち込できるキャリーバッグ・サイズ(500㎜×400㎜×220㎜)の荷物を2段重ねで収納できるようになっており、DIN規格では130Lと従来より20L縮小しているが、実用上は容積を拡大させている。
シートは形状、構造ともに一新されている。スリークなシートバック形状ながら横方向のショルダーサポートもしっかりしている。構造はクッション部、シートバックともに通常のS字型の金属バネは使用せず、新たに世界初のポリエステル製のネットを採用(S-fit構造と名付けられている)しているのだ。ホールド製、振動減衰性も優れ、なおかつ軽量化できるメリットがある。ちなみにネットは部位により最適な編み方としサポート性能を作り出しているという。
サスペンションはフロントがインホイール型ダブルウイッシュボーン、リヤはマルチリンク式で、フロントのサスペンションリンクはアルミ製。さらにアンダーカバーもアルミ製で、フロント・クロスメンバーと共締めされ、メンバーの取り付け剛性を高めている。リヤは横荷重入力に対して剛性を高めるために取付け部はトラス構造となっている。
サスペンション・ジオメトリーはフロントのキャスター角が1度増大され8度に(ただし大幅な調整ができる)。接地面のホイールセンターオフセットは新たにネガティブオフセットを採用している。またリヤは横力トーイン特性を強化している。リヤのダンパー取付位置も従来より低められハブキャリアに直付けとされ、レバー比を改善している。
ステアリングは、ついに電動パワーステアリングを採用しているが、マツダ初となるダブルピニオン(モーターによるピニオンアシスト)式を採用し正確で滑らかなステアリングフィーリングに。ギヤ比は従来の14.4:1からわずかに低められ14.7:1としている。なおステアリングホイールは366㎜径と小径化され、グリップ断面も細径化。
■装備
7インチディスプレイ付きのマツダ・カーコネクトが新設定され、ハンズフリー電話、ショートメッセージの送受信、Twitter、Facebookなどは音声読み上げ機能を持つ。オーディオは4、または6スピーカーのベースシステムと、メーカーオプションで9スピーカーのBoseサウンドシステムを設定。Boseシステムの場合、運転席、助手席のシートバック、ヘッドレスト部の左右に2個のスピーカーが装備される。ナビゲーションはSDカード式。
アクティブセーフティでは、メーカーオプションのセーフティパッケージとしてブラインドスポットモニタリング、ハイビームコントロール、カメラの車線認識をベースとした車線逸脱警報がセットとなっている。