2013年10月中旬に「CX5」が一部改良を行なったが、このほどようやく試乗することができた。CX-5は2012年3月発売で1年半を経過しているが、今回の改良は年次改良でもなくマイナーチェンジでもないという。この改良モデルは、最近のマツダの新しいクルマ造りの特徴を表すものだった。
今回の改良は、188ps/250Nm(4WD車は184ps/245Nm)の2.5Lガソリンエンジンの追加設定と、インテリアでシフトセレクターのストレートパターン化とブーツ周りのデザイン変更、低速時の衝突軽減・自動ブレーキ「スマート・シティ・ブレーキ・サポート(SCBS)」を全車標準装備にしたことなどだ。
また細部では、リヤ・ダンパーの構造を見直し、よりスムーズに正確に微低速バルブが作動するようにし、乗り心地を改良している。このダンパーは日立オートモーティブ製だが、内部のバルブのスプリングの形状変更を行なってダンピング特性を改良している。
ところで、今回のCX-5の改良は最近のマツダの「モノづくり革新」の一端を示すものだ。このモノづくり革新は、製品企画、開発、工場での生産体制など幅広い領域をカバーするコンセプトだが、そのベースになっているのは工場でのフレキシブル生産体制と、製品の設計・開発を通じての「コモン・アーキテクチャー」という発想である。「コモン・アーキテクチャー」は、言い換えればモジュール設計で、、幅広いクルマのサイズに適応できるフレキシブルなプラットフォーム、車種を超えた汎用性を持ったパワートレーンやシャシーのコンポーネンツを意味する。
だから、例えばコンポーネントの改良や進化がある車種で行なわれれば、それは他車種にも採用可能になるということになる。つまり通常のクルマはマイナーチェンジといった区切りでしか改良できないが、現在のマツダの「コモン・アーキテクチャー」では、コンポーネンツごとに改良、進化したものを量産ラインに随時導入できることが強みになっているわけである。
だから、今回のCX-5でいえばアテンザ用の2.5LガソリンエンジンがCX-5には変更箇所なしで搭載でき、ダンパーだけではなく電動パワーステアリングやATの制御ソフトなども他社車で進化した仕様がこれまでの車種にも投入できるというわけだ。実際、今回のCX-5では電動パワーステアリングのモーターの改良も行なわれていた。
そんなわけで、新設定の2.5Lガソリン・エンジン車のステアリングを握ってみると、最初に操舵フィーリングがかなり改善されていることに気付いた。4WDモデルにそれほど明確に感じなかったが、2.5Lガソリンの25S Lパッケージ(19インチタイヤ)とステアリングの相性は格段に良くなっていると思う。
エンジンフィーリングは、CX-5くらいの車格、車重ではさすがに2.0Lと比べ力強さ、滑らかさが上なのは当然で、マッチングは良い。今ではマツダの主力エンジンとなっている2.2Lディーゼルと乗り比べると、滑らかさ、上質さ、レスポンスのよさはやはり2.5Lガソリンが有利だ。
しかし、市街地でゴー・ストップが多いような使用条件では、ディーゼルエンジンのアクセルの踏み込み初期での加速の一瞬のレスポンス遅れが案外気になる。逆に高速巡航や、山間部では圧倒的なトルクを生かしたディーゼルの走りの方が一段と余裕があることは言うまでもないだろう。
乗り心地は、リヤダンパーが改良され、凹凸のある路面でのボディの落ち着き、乗り心地のよさは実感できた。しかし舗装路面の細かな中速域でも凹凸が案外ダイレクトに常時伝わってくるので、このあたりは改めて今後のシャシーチューニングの課題だと思う。