2016年11月中旬にデミオ、CX-3が商品改良を受け発売された。この商品改良は、いわゆるマイナーチェンジではなく、ランニングチェンジという扱いで、商品力を向上させるために随時改良されたモデルなのだ。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>
マツダのこうした商品改良は、一括企画、つまりモジュール化されたユニットが改良され、進化すると随時、生産モデルに投入し、エクステリアなどをほとんど変えず、機能ユニットや装備、性能を向上させる手法と位置付けられている。
デミオ、CX-3は2015年12月に最初の商品改良を受けているが、今回は丸1年を待たずに行なわれる2回目の商品改良となり、2017年型モデルということができる。
商品改良の内容としては、1.5Lディーゼル・エンジンにナチュラルサウンドスムーザー、ナチュラルサウンド周波数コントロール技術をセットで導入したこと、Gベクタリングコントロールを全モデルに採用したこと、運転支援システム「i-ACTIVSENSE」は従来機能に加え性能を向上させたスマートブレーキサポート、上級グレードにはミリ波レーダー式クルーズコントロール、AT誤発進抑制制御、アダプティブLEDヘッドライトなどが新たに導入するなどだ。
エクステリアやインテリアの変更は最小限に留められており、装備の充実、クルマの各性能の熟成が行なわれており、前回の商品改良時より幅広い改良が加えられているところがアピールポイントだ。
■CX-3 試乗レポート
CX-3の装備面での改良点は、XD Lパッケージモデルに10wayパワーシートが標準装備され、i-ACTIVSENSEでは最新バージョンを採用。11セグメント式のLEDマトリクス・ヘッドライト、交通標識認識システム、後退時のスマートシティブレーキサポートの機能を追加するなど装備をアップグレードした。
また前方スマートブレーキサポートは、新たに歩行者も検知し、作動速度の上限も30km/hから80km/hへと大幅に向上している。これはセンサーが従来のレーザーレーダー式からカメラ式に変更された結果だ。
しかし、CX-3の改良のより大きなポイントは、乗り心地、静粛性の改良、パワーステアリングの操舵アシストの改善だろう。
走り出すと、乗り心地がマイルドになっていることがわかる。高速道路ではステアリングの落ち着き感があり、切り込む時の素直さ、リニアリティが向上していることが感じられた。
操舵フィーリングとボディの応答性の素直さは、パワーステアリングのアシスト特性の見直しとGベクタリングコントロールの採用による効果が大きく、乗り心地の改善は、前後のサスペンション・ブッシュ、ダンパーの特性変更の改良によるものだという。
また、バックドアの板厚アップやリヤゲート周りの吸遮音材の追加により、常用域での静粛性も向上している。
XD プロアクティブ、XD Lパッケージ、XDノーブルブラウン(特別仕様車)に装備されるアクティブ・ドライビングディスプレイの画像も高輝度になり、これまでより格段に見やすくなっている。しかし新たに追加された交通標識の表示は赤色系なので、これが常時表示されると目立ちすぎてわずらわしさが感じられた。次ページに
CX-3はBC/CセグメントのクロスオーバーSUVとしては異例なほど装備を充実させると同時に、走りの味もより熟成されている。CX-3は同クラスのクロスオーバーSUVに比べやや高価格帯に位置するが、デザイン性と、充実装備、走り、特に他社にはないディーゼル・エンジンならではのトルク感のある走りはアピールできるポイントだ。
■デミオ 試乗レポート
デミオはクラス概念を打ち破るBセグメント・ハッチバックというコンセプトを掲げてデビューし、他のクルマとは一味違う存在だが、今回の商品改良でもそのコンセプトが追求されている。
エクステリアの変更は最小限だが、Gベクタリングコントロールの採用、遮音性能の向上、サスペンション、パワーステアリングの特性変更、i-ACTIVSENSEの機能向上などが行われている。
従来からの装備、インテリアの見栄えなどを合わせ、このBセグメントではトップレベルの装備となっている。
試乗したのは1.3Lガソリンエンジン搭載の13Sツーリング(6速AT/4WD)だった。まずシートに座って正面に位置するアクティブドラインビングディスプレイ(ヘッドアップ・ディスプレイ)がカラー表示になり、これまでのモノクロに比べ格段に表示品質が向上しており、天候、昼夜を問わず見やすくなっている。
シートの座り心地は悪くないが、前後長が短めで座面の後傾角が小さいのは従来通りで、このあたりはもう一工夫して欲しい所だ。お
走り出すとすぐに乗り心地、ステアリングフィールがレベルアップしていることが感じられる。特に乗り心地、ステアリングを切った時の滑らかな車体の反応は、クラスの平均レベルを上回っている。ということで新しいデミオの走りはより上品になったといってもよいだろう。
一方、動力性能に関してはやはり92ps/121Nmのガソリン1.3Lエンジンは日常域での2000rpmあたりのトルクが薄目で、どうしてもアクセルを深めに踏みがちだ。その結果としてATの変速が忙しすぎるという印象だった。またSモードを選ぶと今度はエンジン回転数が高めでの変速モードになり、エンジン音が気になる。こうした点を考えると、やはりデミオはディーゼル1.5Lを選択したくなる。
デミオ改良モデルは、走りの点では大幅にレベルアップしたといえるが、ダイナミックな質感という点では、荒れた舗装路面などでのステアリングやフロアの微振動などは今後の課題だろう。
CX-3もデミオも、本質的にグローバル・モデルで日本市場での最適化を図ったモデルではない。なのでより幅広い視点で見ると、近年はとにかくBセグメント、B/Cセグメントのクルマの性能、特に走りの安定性や静粛性などダイナミックな質感の向上は著しくレベルアップしている。CX-3もデミオも進むべき方向は明確なので、今回の商品改良もその道筋に沿ってものということができる。
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