マツダ デザインコンセプトの前進 デザインで人生が変わる!?

雑誌に載らない話vol128

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近年のマツダは、デザインおよび性能の両面で実に魅力的であるといえる

近年のマツダの変貌ぶりは、多くの人が感じているのではないだろうか?特にスカイアクティブという技術を発表してからのプロダクトは、デザイン、性能の両面で実に魅力的であり、これまでのマツダのイメージを大きく変化させたと思う。その原動力のひとつ、デザインに関する興味深いプレゼンテーションがあったのでレポートしよう。<レポート:髙橋 明/Akira Takahashi>

クルマに限らず、モノを購入する際、デザインはもっとも重要な要素のひとつだろう。機能とデザインというのは、いつの時代も議論され、機能が優れているものはデザインも優れている、といった話題には事欠かない。

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また、気に入ったモノの多くは「カッコいい」や、「おしゃれ」だとか、デザイン要素が強いということは誰もが感じていることだ。だからデザインがいいものを手にすることは、所有欲を満たし、人の生活を豊かにし、身も心も充実していくということは多くの人が体験していることだ。

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マツダはその「デザイン」という分野において、クルマのデザイン、工業デザインにとどまらず、デザインが持つ可能性を含めたものまでを考えてデザインしていこう!というのが近年のマツダデザインなのではないかと考える。デザインされたプロダクトを見ることで、豊かに感じ、所有することで充実し、欲求が満たされる、そして楽しい人生だと感じられるようなクルマづくりをしたい、という思いを込めたデザインだと感じる。

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デザインが持つ可能性を含めて、マツダは追求し、デザインしていこうとしているのかもしれない

それにはどうしたらよいか?という議論はマツダ社内でもあったに違いない。そのプロセスのひとつであろうイベントで、マツダの考える「デザイン」が少し理解できてきた。

◆社員として働く職人たち
東京のミッドタウンで開催された「Tokyo Midtown DESIGEN TOUCH2015」には、4回目の出展になるという。マツダは魂動コンセプトで創造された自転車やソファといったクルマではないものも、マツダのデザイン言語である「魂動」デザインをし、2015年4月に「ミラノ デザインウイーク2015」にも出展している。

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そしてミッドタウンには、マツダデザインの象徴とも言うべき、【現場】のスタッフが2名控えていた。

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彼らは、革の縫製、板金技術の熟練工でマツダの正社員だ。彼らの手、指はオフィスで働く者たちとは明らかに異なる厚み、太さを持ち、まさに職人の手、指を持っている。つまり、マツダという自動車メーカーの正社員でありながら、モノづくりの職人として就業していることの証明であり、また驚きでもある。

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一般的には職人と芸術家は似て非なる世界で共存し、ホワイトカラーとは正反対にポジションしているケースが多い。それは、効率や利益率を重視するネクタイ族とモノのクオリティを重視する職人、芸術家たちとの違いと言えるかもしれない。その職人がネクタイ族と同様に会社員として働く環境があるマツダにも驚く。また、彼らは漆職人や板金職人らとコラボした作品や、家具デザイナーとのコラボ作品なども製作しており、話を聞く限りとても会社員をイメージすることはできない。

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◆魂を注入すること
彼らデザイナーに求められているのは職人だ。技術もメンタルも職人であれ、という。この漆職人とのコラボは、日本人の心、日本人らしさを表現する【凛と艶】というワードに自動車メーカーらしく【動】が加わったワードをデザインコンセプトとして表現したコラボ作品だという。

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こうした職人やアーティストが社員として働く場合、一般的にはモチベーションが続かず上手くいかないケースが多い。そうした問題にマツダは正面から取り組み、社員デザイナーだけでマツダのクルマ造りを続けているのだ。そしてデザイナーへの要求は【魂を注入すること】という曖昧な、そして高いハードルを設けプロダクトアウトしてきている。

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こうしたことを続けていくと、クルマの場合、デザインスケッチの時点で素晴らしい出来栄えのクルマが仕上がる。しかし今度は製造技術においてそのデザインが実物の量産モデルとして製造できるのか?という壁にもぶつかる。

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イタリアやフランスのクルマの多くに見られるボディの豊かな造形美の裏側には、高い製造技術があるからこそ実現できているという現実がある。ルノー・ルーテシアやプジョー208のルーフは溶接部分が分からないレベルで仕上げられている。ドイツの高級車メルセデス・ベンツですら、溶接部分は黒いグロメットでカバーするという従来の技術が継承されているわけで、デザインには効率では語れない世界が間違いなく存在する。そしてそのデザインを量産するには、デザインを語りつつも製造技術も伴わないことには、机上の空論に過ぎないわけである。

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こうした量産生産技術とデザインという双方が競いあう環境があると、ともにレベルアップが図れ、われわれユーザーには、よりハイレベルなプロダクトが提供されてくる、という好循環が誕生するわけだ。

◆目指すはポジションチェンジ
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マツダは、モノのデザインが人を豊かにし、愛着、愛情がうまれ、ときめきのある日常がおくれる素晴らしさを提供していきたいと考えている。スカイアクティブ以来、ディーゼルブームの火付け役となり、誰もが運転しやすいハンドリングを生み出し、ハードな車両開発という部分が話題の中心だったが、その裏側にはハードを支える、こうしたソフト面での充実もあることが、近年のマツダの躍進を支えているということだろう。

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マツダは、モノのデザインが人を豊かにし、愛着、愛情がうまれ、ときめきのある日常がおくれる素晴らしさを提供していきたいと考えているようだ

マツダはこれまでのマツダ車のポジションをステップアップさせる狙いで、ポジションチェンジを目指している。まずは多くの人が乗りやすい、燃費がいい、かっこいい、ハイクオリティであるといったプロダクトへの市場評価を上げ、次に販路の改革に乗り出している。いつのまにかブルーがイメージカラーだと思っていたらブラック&レッドへとシフトし、高級感や引き締まった印象へと変えている。さらに企業としてのヘリテージをアピールすることで、マツダファン、企業価値を高める戦略にも出ている。今回の魂の込められたクルマ造りを見せられることで、マツダデザインの価値は上がり、これまで以上にマツダデザインへの期待も膨らむという好循環を生み出している。読者のみなさんも、マツダこの先、まだまだ、何かやりそうな気配を感じるのではないだろうか?

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