マツダ 構造改革プランの成功から次世代に向けての次の一手とは?

雑誌に載らない話vol155
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マツダは2016年7月29日に2017年度第1四半期の決算を発表し、売上高-3.7%、営業利益-1.7%、通期見通しでは売上高-3.7%、営業利益-25%で5期振りの減益を発表した。この第1四半期でグローバル販売台数は+1.3%、日本では-31.4%、北米で-2.4%となっている。

■円高に影響される業績

2016年3月に発表された年度決算では、売上高は3兆4066億円、営業利益は2268億円、グローバル販売台数は153万4000台と過去最高の実績を記録しているが、2017年度は一転して厳しい局面を迎えている。2017年度通期の見通しではグローバル販売台数は155万台と前年度を上回ると見ているが、営業利益は1700億円と減収減益を見込んでいる。

17年度1四半期
2017年度第一四半期の決算
17第1四半期販売
2017年度第一四半期のグローバル販売実績

この減収、減益の最も大きな要素は為替の変動の影響で、円高に流れが変わったことによって810億円以上の利益が消え去っている。この円高の影響はマツダだけでなく、他の自動車メーカーも同様に大きなダメージとなっているのだ。また、グローバル市場で見ると、2016年に入ってからの日本での販売の落ち込みが顕著で、この原因はSKYACTIV商品群が出揃い、新車効果が薄れていることが原因とされている。

財務実績表

経年業績

その一方で、グローバルではCX-5、CX-3、そしてアメリカで発売したCX-9、中国で発売したCX-4などクロスオーバー/SUVは現在のトレンドにマッチしており、現在の販売のけん引役で、今後もさらに成長が期待できるモデルだ。

■マツダの構造改革

マツダは2005年にフォードとの資本提携を解消したが、2008年に発生したリーマンショックの影響を最も大きく受けた自動車メーカーであり、2009年3月決算から4期連続で赤字に陥った。この業績により、まさに企業として存立の危機を迎えたのだ。

この危機を乗り越えるためにマツダは、ビジネス構造を大きく変える3カ年計画の構造改革プランを策定した。いわゆるモノ造り革新とSKYACTIV技術、SKYACTIV商品の全面投入、ブランド戦略としてブランド価値の向上、正価販売、そして販売台数の拡大、海外生産体制の強化、円高でも利益の出る収益構造、財務基盤の改善がテーマとなった。

商品デザインは「魂動」デザインで統一し、環境技術は他社とは異なるクリーンディーゼルを選択した。この選択と集中は大きな効果を発揮している。つまり付加価値を持った技術と製品の開発を重点戦略としたのだ。

これは商品戦略として成功したが、生産体制が為替変動に依然として強くなっていないことも事実である。マツダのグローバル販売台数の内訳は、国内販売15%、海外販売85%となっているが、生産台数の約60%が国内工場で生産され、海外生産は約40%だ。そして国内の工場で生産したクルマの80%が輸出されるため、為替変動で業績が大きく左右されるわけだ。

このためマツダは海外生産比率の向上が急務で、2014年から念願のメキシコ工場が稼動を開始。2015年にはタイでの生産も開始されているが、当分は国内工場がメインという体制に変化はない。やはり、生産工場は販売台数と両輪の関係にあり、今期からスタートを切った構造改革ステージ2(2017年度~2019年度の計画・目標)ではグローバル販売台数は165万台を目標に掲げ、それに見合う生産体制の強化をはかることになっている。

2020戦略

また、付加価値を持った技術と製品の開発に重点を絞ったことと合わせ、モノ造り革新、つまりコストの大幅な低減が求められるが、その一方でマツダの基幹技術は自前主義を貫いているため、開発エンジニアの人員や工数は多くなる傾向にある。したがって、今後も内製主義を貫けるのかどうかが気になるところだ。

ただし、マツダはこうした内製主義と同時に、グローバルでのビジネスの提携も不可欠と位置付けている。すでにフィアット・グループとの業務提携によりロードスターの共同開発、トヨタ・サイオンiA(デミオ)、ヤリス・セダンの受託生産を実現しているが、今後もこうした他の自動車メーカーとの協業も模索される。特にトヨタとは、資本関係を持たない状態で2010年にハイブリッド技術の供与契約を結び、2015年5月には中長期的な業務提携を締結。そのためここ1~2年のうちに具体的なアライアンス事業がスタートすると予想される。

さらに為替の影響を抑えるためには営業利益率の向上、財務体質の強化も不可欠だ。そのためには販売奨励金の縮小など、営業体制も含めた中長期的な取り組みを行なう必要がある。

■ブランド戦略

ブランド戦略では、付加価値商品を販売するにふさわしい体制、つまり販売奨励金の低減(=大幅値引きをしない)、正価販売、ブランド・イメージの向上を同時に推進している。マツダは他社と横並びの商品では将来的な展望は厳しいと考えているのだ。

そのためグローバルの販売店に新デザインを導入し、販売店舗、販売員も含めてアッパー・ブランドとして新たな構築を行なっている最中だ。ただ、これらのブランド改革は、社会的に認知されるまでには相応の時間と人材育成が不可欠で、今後も継続的な努力が必要だ。

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ディーラーのデザイン、イメージを一新

また当然ながら市場に投入するクルマも、価格競争の激しい低価格車ゾーンから、よりプレミアム性を備えた高価格車へシフトし、マツダらしい独自のデザインを追求し続けることになる。その意味では、2015年の東京モーターショーに出展されたFR駆動とされるコンセプトカー「RXビジョン」は、今後のマツダ・ブランドのあるべき姿を象徴している。

クルマの開発については、構造改革ステージ2の計画に従い、2016年から従来のSKYACTIVの継続的な進化と第2世代のSKYACTIVの開発が並行して行なわれることになっている。そして次期の中期経営計画によればパワートレーンの電気駆動化の実現は2020年頃とされているが、マツダは最大の市場であるアメリカでZEV規制の対象メーカーとなっている。

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高級感のあるディーラーを目指し、購入時の納車式典も実行中

そのため、現在までの宿願であったディーゼル・モデルのアメリカ市場投入のハードルはますます高くなっており、同時に開発体制も従来のディーゼルをメインに置いた開発から、電気駆動化の開発を加速させる必要がある。現時点では、これらに関してマツダからの明確なアナウンスはないが、それもそう遠くない時期に決断が迫られるはずである。

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