ホンダ オデッセイ・ハイブリッド アブソルート試乗記 驚異の低燃費と熟成された走りを両立

マニアック評価vol423

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オデッセイ ハイブリッド アブソルート(7人乗り)EXパッケージ

2013年に発売されたオデッセイは、2.4L・直列4気筒の自然吸気エンジンのみだったが、ようやくハイブリッド・モデルが設定され、2016年2月25日から発売された。ハイブリッドシステムは、アコードに採用されている2モーター式の「i-MMD(マルチモータードライブ)」だ。<レポート:松本晴比古/Haruhiko Matsumoto>

ハイブリッドのデビューが遅れたのは、アコードのシステムと同じとはいえ、ハイブリッドのコンポーネンツをほぼ専用開発したためだ。オデッセイ・ハイブリッドの開発コンセプトは、ミニバン・クラスの常識を破る燃費と、ダイナミックでスポーティな走りを実現することだという。

i-MMDと呼ばれるハイブリッドシステムは、アトキンソンサイクル運転の2.0L・直列4気筒VTEC+VTC(LFA-H4型。145ps/175Nm)、エンジン直結用クラッチ、発電用のジェネレーター&モーター、駆動用モーター、リチウムイオン・バッテリーとパワーコントロールユニットからなり、これはアコード・ハイブリッドと同じ構成だが、各ユニットは大幅にリファインされている。

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エンジン横のトランスミッション部に発電用、駆動用モーター、その上部にパワーコントロールユニット。フロントシート下側にリチウムイオン・バッテリー、IPUをレイアウト

特にモーターは巻き線密度の向上、磁石の小型化により約23%の軽量化を行ない、出力は184ps/315Nmにまで向上している。アコード・ハイブリッドのモーターは165ps/307Nmだからパワーは12%ほど高められているわけだ。

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またパワーコントロールユニットも約23%の小型化、27%の軽量化を果たし、モーター部の上部にマウントされている。さらに容量1.4kWhのリチウムイオン・バッテリーも小型の扁平形状のパッケージとし、フロントシートの下に横置きすることで、ミニバンとしてのパッケージングが成り立っている。

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床下配置されるリチウムイオン・バッテリーと電圧制御システム

ミニバンは、ハイブリッドだからといって3列目シートの使い勝手に影響を及ぼすことは許されないので、コンポーネンツのパッケージはなかなか難しいのだ。なお、フロントシート下は輸出モデルはスペアタイヤを吊り下げるためのスペースになっており、ハイブリッド・モデルはこのスペースを利用してバッテリーを搭載しているのだ。また、バッテリーの冷却用に室内に通風口が開いている。

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i-MMDの走行モード

i-MMDは、エンジンの出力より強力なモーターの出力を用いて走行し、エンジン出力は発電用として使用され、高速巡航時だけエンジン直結モードで走行するので駆動モーターのさらなるパワーアップは頼もしい。なお燃費は標準モデルが26.0km/L。アブソルートは24.4~25.2km/Lで、同じクラスの競合車に比べて群を抜いて省燃費だ。

■インプレッション
さて、試乗したのはオデッセイ ハイブリッド アブソルート(7人乗り)EXパッケージでアドバンスド・パッケージ装備車だ。シリーズでも最上級に位置し、価格は400万円。2.4Lエンジン車の同クレードより約50万円高い。ライバルのエスティマ・ハイブリッド、アルファード/ヴェルファイア・ハイブリッドよりやや安めの価格となっている。

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なおオデッセイは従来から、標準モデルよりアブソルートのほうが圧倒的に主流になっており、今回のハイブリッドは標準車もアブソルートも同じフロントのデザインなのだが、受注は90%がアブソルートとなっている。やはりオデッセイはスポーティさが一番の訴求点になっているからだろう。

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アクセルを軽く踏み込むとモーター特有の低回転から力強いトルクが得られ、さらに踏み込むとエンジンがかかり、エンジンによる発電でモーターが駆動され、リニアな加速が得られる。1800kgクラスの車両重量を感じさせない力強い加速だ。Sレンジを選択するとさらにレスポンスのよい加速が味わえる。これなら7人乗りといったフル積載の状態でも動力性能に不満を感じることはないだろう。

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ただ、モーターでの加速感はどの速度域でもレスポンスがよく力強いが、高速道路を巡航し、緩加速をするような時にはモーターでの加速のイメージとは少し違ってトルク感がやや薄く感じた。このあたりはエンジンのパワーがもう少しあればという気がしないでもない。

乗り心地はしっとり感があって、ミニバンの中ではトップレベルだ。また室内の静粛性も高く、市街地での加速や高速道路の巡航といった状態でもミニバンのカテゴリーを超えた静かさで、長距離ドライブも苦にならないはずだ。

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もうひとつ、ステアリングの滑らかさも大いに評価できる。実はボッシュ(旧ZFレンクシステム)のデュアル・ピニオン式の電動パワーステアリングを採用しており、この滑らかで気持ちよい操舵フィーリングは、オデッセイの優位点だといえる。

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エンジニアによれば、この操舵フィーリングは他のユニットでは生み出すのが難しいという。また電子制御ブレーキも減速時の回生協調制御を行なっても踏力や効きがリニアで、ハイブリッド車にありがちなコントロール性の悪さは感じられない。

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ハイブリッドシステムをオデッセイ専用にうまくパッケージングしたことで、2列目はもちろん、3列目シートの使い勝手もまったく影響がない。ミニバンとしての使い勝手は文句がないだろう。3列目シートでの乗り心地も満足できるし、3列目を床下に格納して完全にフラットなラゲッジスペースが簡単に得られる点はとても使いやすいと思う。

試乗車はもちろんホンダ・センシング付きで、プリクラッシュブレーキ、アダプティブ・クルーズコントロール(ACC)も装備されている。このACCは30km/h以下ではキャンセルされてしまうところが玉に瑕である。

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助手席下側にあるバッテリー通風口
21555R17サイズのブルーアース A34
21555R17サイズのブルーアース A34

オデッセイ ハイブリッドは、走りや乗り心地などが熟成され、モーターを生かしたレスポンスのよい力強い走りと、優れた燃費性能を考えるとミニバンというカテゴリーにぴったりのハイブリッド・システムで、これぞオデッセイの本命モデルだと実感できた。

ホンダ オデッセイ ハイブリッド諸元表

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