2012年12月9日(現地時間8日)、フォルクスワーゲンは気温10度、クリスマスのイルミネーションが輝く夕刻、モナコのカジノ前広場で2013年世界ラリー選手権(WRC)にフル出場するポロR WRCカーのワールドプレミアを派手な演出で行った。「2013年WRCはここから始まる」というキャッチフレーズのように、フォルクスワーゲン・モータースポーツチームのポロR WRCは2013年1月15日〜20日にここモナコを舞台にした2013年WRC第1戦・モンテカルロラリーから出場し、シリーズ全13戦にフル出場する。
VWは、1年以上前に2013年からポロRでWRCに参戦することを発表していたが、実際に は約2年間をかけて開発を行い、2012年までにWRCプロトタイプマシンでヨーロッパのラリーに実戦参加、マシンの熟成、チームの経験を積み重ねてきた。
実戦ラリーでの走行距離は4800km、走行したスペシャルステージ数は120ヶ所に達すると言う。そしてこのほど満を持してのワールドプレミアを迎えた。なおWRCへの出場に必要な「S2000 WRC」ホモロゲーションは2013年の年初頭には取得する予定だ。マシンの開発は「ダカールラリー」で3 年連続の優勝を果たしたVWモータースポーツのエンジニアが中心となって行い、F1テクニカルディレクターの経験もあるウィリー・ランプ氏の指導により進められている。
チーム体制は、ワークスチームであるVWモータースポーツが運営を行い、ドライバーはセバスチャン・オジエ(フランス)と、ヤリ・マティ・ラトバラ(フィンランド)、さらに若手のアンドレアス・ミケルセン(ノルウェー)もスポットで3台目のポロ R WRCで参戦するという。近年のWRCはシトロエン、フォード、プジョーが独占してきたが、VWは必勝体制でチャンピオンの座をもぎ取りに来たといえる。
■ポロ R WRC 2013
約17カ月という時間をかけて開発された「ポロ R WRC 2013」は、市販車をベースに4WDシステムを組み込み、フロントにはWRC規則に合わせた直列4気筒、1.6Lの直噴ターボエンジンを搭載。直径33mmの吸気リストリクターを装着し、パワーが制限されている。
ボディは1820mmの規定ギリギリまで拡幅しており、タイヤをカバーするために大型のオーバーフェンダーを装着。サスペンション・ストロークを確保し、あらゆる路面でのグリップ力と走破性を高めている。また空力付加物も装着可能で、リヤには大型のウイングを装備しており、高速走行時の操縦安定性を向上させている。サイドウインドウなど一部の部品では樹脂素材への置換も行われ、車両の軽量化を行っている。
トランスミッションは規定により6速シーケンシャルでマニュアルでの操作となっている。
「ポロ R WRC 2013」主要諸元
エンジン:直列4気筒+直噴ターボ 排気量:1600cc 最高出力:232kW(315hp)/6250rpm 最大トルク:425Nm/5000rpm 吸気リストリクター:33mm ECU:ボッシュ製
ギヤボックス:シーケンシャル6速
サスペンション形式: マクファーソンストラット(前/後 ブレーキ:ベンチレーテッドディスク+アルミ4ポッドキャリパー(ターマック用):355mm(前)/300mm(後)(グラベル用):300mm(前/後) ホイール(ターマック用):8×18インチ ホイール(グラベル用): 7×15インチ タイヤ: ミシュラン製
全長:3976mm 全幅:1820mm 全高:1356mm トレッド:1610mm ホイールベース:2480mm 最低重量:1200kg 0-100km/h加速:3.9秒 最高速度:200km/h(ギヤレシオによる)
■2500台限定「ポロR WRC ストリート」
ワールドプレミアの翌日、プレス発表会が開催され、その場で「ポロR WRCストリート」がお目見えした。VW R社の手によるWRCカーの市販バージョンともいえるこのクルマは、インパクトのあるエクステリア、18インチホイール、そしてワークスチームカラーのブルー/グレーのストライプが印象的だ。搭載エンジンは2.0L・直4のターボ直噴を採用。トランスミッションは6速MT。エンジン出力は162 kW (220 hp)、最大トルク350Nmを誇り、0-100km/h 加速は 6.4 秒だという。サスペンションも専用のスポーツチューニングが加えられ、ローダウンされている。
ポロR WRC ストリートは、2500台の限定生産モデルで、ヨーロッパでは2012年12月11日から受注が開始されるという。