ロールスロイス初のBEV「スペクター」いよいよ登場。23年デビューに向けて熟成中

ロールスロイス・モーターカーズは2022年10月18日、ファントム クーペの後継モデルでありブランド初となるラグジュアリー・クーペの電気自動車モデル「スペクター」を公開した。

トルステン・ミュラー・エトヴェシュCEOは、「新型スペクターには、ロールスロイスの伝説を支えてきたすべての資質が備わっています。当初からロールスロイス初の完全電動モデルとして開発されてきたこのクルマは、静粛性と力強さを極め、ロールスロイスがいかに完璧に電動化に適しているかを証明しています。スペクターの完全電動パワートレインは、ロールスロイスをロールスロイスたらしめていることを劇的に際立たせ、我々のブランドの持続的な成功と存在意義を実証しています。ロールスロイスは完璧を目指し、最高の製品を作ることにとどまらず、企業としての文化、姿勢、私たちの指針となる哲学を示ためにこのクルマを作り上げました。創業の父であるヘンリー・ロイス卿は、何事も完璧を目指せと言いました。スペクターはこのような文化の中で生み出されたのです。そしてスペクターはブランドの将来の方向性を示すクルマであり、世界中の審美眼のある人々からの求めに完璧に応えた電気自動車として卓越した存在感を放っています。スペクターはロールスロイスのクルマであることを第一に、 電気自動車であることを第二に考えて作られたクルマです。これは私たちのブランド、私たちのお客様、そしてラグジュアリーカー業界にとって、新たな章の始まりを告げるクルマであり、それゆえにこのスペクターは、ロールスロイスがこれまでに生み出した製品の中で最も完成度の高いクルマだと確信しています」と語っている。

ブランド初の電気自動車「スペクター」は、2021年9月から路上テスト走行を開始した。この革新的なクルマは、世界で最も厳しく、高い完成度を求めるロールスロイスの顧客の期待に応えるために空前ともいえる徹底したテストプログラムを策定した。「スペクター」は今、400年以上使用されることに相当する延べ走行距離250万kmを超えるテスト走行を行なっている最中で、2023年半ばに「スペクター」は熟成を終えて完成することになっている。「スペクター」は歴史的なモデルとされ、2030年までに全モデルを電気駆動化するというロールスロイスの計画の第1弾と位置付けられているのだ。

「スペクター」のボディは2ドア/4座席で、ボディサイズは全長5453mm、全幅2080mm、全高1559mm、ホイールベース3210mm、車両重量は2975kg。まさにFカテゴリーのラグジュアリー・4座席クーペとなっている。

「スペクター」は1000以上の車両の機能要素間で自由かつダイレクトな情報交換を可能にする革新的な「分散型インテリジェンス」システムを採用している。デザイナーは、現代的でありながら時代を超越した美学を表現し、電動化時代に突入したロールスロイスのブランド・イメージを大きく前進させることを目指しており、車体を製作する熟練工は「スターライト・ドア」や「イルミネーテッド・フェイシア」など、オーナーのためのパーソナライゼーションを創造し、顧客はが自分だけの仕様を実現するためのインスピレーションを与えている。

「スペクター」は、「ウルトラ・ラグジュアリー・スーパークーペ」という、まったく新しいカテゴリーを生み出し、そのトップランナーになっている。この呼称は、贅沢な空間を生み出すというこだわりから生まれた、実際に贅を極めたプロポーションとなっている。

ロールス・ロイスのデザイナーは、オートクチュール、モダニズム彫刻、船舶デザイン、特別仕立ての衣装、現代アートなど、自動車を超えた世界からインスピレーションを得ている。デザイナーは基本スケッチを構想する段階では モダンなヨットのコンセプトに着目した。ラインの明瞭さと正確さ、反射のインテリジェントな使い方、シルエットに情感を与えるテーパーの付け方といった要素がそれである。

フロントでは、パンテオン・グリルのベーンは断面がより滑らかになり、段差なく取り付けられており、フロント周りの空気を導くように設計されている。ゆったりとした角度がつけられ、磨き上げられたステンレス・スチール仕上げのグリルは、 周囲の光の反射を利用して「スペクター」の存在感を強めている。この グリルは、延べ830時間におよぶデザイン・モデリングと風洞実験の成果生み出され、Cd値0.25という前例のない低い空気抵抗係数を達成し、ロールスロイス史上最も空力性能に優れたクルマとなっている。

フロントのデザイン処理や全体のフォルムは、これまでのファントム・クーペをオマージュしたつつ、シャープなデイライトランニングライトは、車幅2mの圧倒的な存在感をアピールしている。

「スペクター」の航続距離は、WLTP準拠値で320マイル(約520km)と想定され、モータ出力は430kW(612ps)、最大トルクは900Nmになると予想されていまる。動力性能は、0-60mphは4.4秒(100km/hは4.5秒)を達成する見込み。

また夜間に「スペクター」の姿を際立たせるために、グリルが22個のLEDによるイルミネーションで照らすことができるようになっている。

「スペクター」のフロントは横から見るとシャープで垂直なノーズだが、それより後方は一枚岩のような側面となり、下側の「ワフト・ライン」(ふわりと浮かぶライン)は、ヨットのデザインから着想を受けている。まるで水を切って進むレーシングヨットの船体が海面を映し出すように、ボディの下で通り過ぎていく路面を映し出すことで、シンプルな動きの感覚が生み出されるようになっている。またこの「ワフト・ライン」は「マジック・カーペット・ライド」を視覚的に表現したもので、前方に進みながら上に向かう緩やかな曲線が、加速するパワーボートの船首が緩やかに持ち上がる様子をイメージしている。

「スペクター」のシルエットで最も目を引くのが、ファストバック・スタイルだ。グリーンハウス表面のシームレス化によりこれまでで最も低い空気抵抗係数を達成。ルーフラインの後端では、Aピラーからラゲッジルームまで続く、ロールスロイス史上最大の単一ボディパネルにテールランプが組み込まれている。縦長の宝石のような テールランプは、顧客が注文時に選ぶ無数のカラーバリエーションを想定して、どの色に対してもニュートラルな無色で仕上げられている。

インテリアでは夜空の永遠の神秘からインスピレーションを得た、これまでで最も技術的に進んだ仕様が実現されている。また、ロールスロイスの市販モデルとして初めて4796個の淡く光る「星」を組み込んだスターライト・ドアが用意されている。なお、ドアはヘンリー・ロイス卿と設計チームが冬を過ごした南フランスの入り江にちなんで名づけられた「カナデル・ウッド・パネリング」仕様で注文することもできる。

さらにインテリアでの夜をイメージし、助手席側インスツルメントパネルには5500個以上のLEDの星の集まりに囲まれた「スペクター」の銘板が組み込まれている。

またインテリアにはなデジタルアーキテクチャー「SPIRIT」が搭載されている。「SPIRIT」は車両の機能を管理するだけでなく、ブランド独自のアプリケーション「Whispers」とシームレスに統合され、顧客はクルマを遠隔操作したり、話題の情報を受け取ることができるようになっている。

今回初めて、顧客は物理的な注文仕様だけではなく「SPIRIT」の デジタルアーキテクチャーも注文仕様に対応しており、例えばメーター文字盤の色を車両の内装色に近づけることができるようになっている。

もちろん他モデル車同様にインテリアは、ほぼ無限の特注仕上げを実現できる。イギリスの注文衣装にインスピレーションを得てデザインを一新したフロントシートもオーダーメイドのステッチや刺繍、凝ったパイピングといったディテールも注文することができる。

「スペクター」は、これまでのモデルと同様に、「アーキテクチャー・オブ・ラグジュアリー」つまり柔軟性の高いオールアルミニウム製スペースフレーム構造を採用しており、それを発展させることで電気駆動に対応している。この電気駆動に対応したアーキテクチャーは「ロールスロイス 3.0 」と名付けられている。

「スペクター」は、アルミニウム押出材セクションの採用と、バッテリーの車両構造への一体化により、 従来モデルより30%高い車体剛性を達成。またフロアはシル構造の中間に配置することができている。バッテリーとフロアの間には配線や空調配管のためのチャンネルを設け、その下にバッテリーを搭載することで、完璧に滑らかなアンダーフロア形状を実現。これにより、低い着座位置と包み込むようなキャビンを実現するだけでなく、約700kgのバッテリーに遮音材という二次的な機能を与えることが可能になっている。

そして最新のデジタル・プラットフォームを投入している。最新世代のコネクテッド機能と、分散型インテリジェンス能力を搭載。これを実現するために、14万1200個もの送受信チャネルを持ち、それぞれに専用の制御が実現。さらに、気候、対地速度、道路状況、車両の状態、運転スタイルなどの変化に対応するためのいくつかのサブ変数も組み込まれている。そしてこれらは電子制御は延べ250万kmにおよぶテストプログラムの中で熟成されている。

「スペクター」のシャシーは、フル電子制御のプラナー(ダブル・アッパーアーム式)スペンションが採用されている。このサスペンションは、スタビライザーを切り離し、ドライバーのインプットや路面状況に応じて正確に反応するシステムで、各ホイールは独立制御することで、「マジック・カーペット・ライド」(魔法の絨毯の乗り心地)を実現している。

コーナーが近づいていることが検知されると、プラナー・システムはスタビライザーを接続するとともにダンパーを硬くし、4輪操舵システムが作動するように準備し、スムーズなコーナリングが行なわれる。またサスペンションと同時にステアリング、ブレーキ、 出力なども最適に制御される。

「スペクター」の航続距離は、WLTP準拠値で320マイル(約520km)、モーター出力は430kW(612ps)、最大トルクは900Nmになると予想されている。動力性能は0-100km/h加速は4.5秒が想定されている。

なお「スペクター」は現在、受注を開始しており、デリバリーは2023年後半に開始される予定だ。また価格はカリナンとファントムの中間に位置づけられている。

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