メルセデス・ベンツSクラス フルモデルチェンジ試乗記(AWD 3.0Lターボ+ISG 9速AT)

メルセデス・ベンツのフラッグシップモデルSクラスがフルモデルチェンジを行なった。11世代目となるW223型は、2020年9月にワールドプレミアされ、早速国内にも導入されている。試乗できたモデルはS500 4MATIC longのISG搭載モデルで、高速道路、ワインディングを走行してメルセデスのラグジュアリーを体験してきた。

S500 4MATIC longに試乗。ドライバーズカーとしても魅力たっぷり

Sクラスともなれば、最新の、そして最先端の技術や考え方が投入されて登場してくるが、今回の新型Sクラスもハード、ソフトともに最新の装備を搭載している。

ドラビリにも好影響のAWS

ハードではやはり四輪操舵に注目したい。ボディサイズが全長5320mm、全幅1930mm、全高1505mmでホイールベースが3215mmのロングタイプを試乗。その大柄なボディにもかかわらずCクラスを操舵しているように気軽なサイズ感を得るのがこの四輪操舵技術だ。

これまでにも国内外を問わずいろいろなモデルに搭載されている技術で、試乗もしてきたが、これほど自然な操舵で走るのはさすが、というほかない。ご存知のように低速域ではフロントタイヤと逆方向にステアされ、高速域では同位相になる。速度に応じて、またステアスピードに応じて操舵変化するが、いずれもナチュラルなフィーリングだ。

だから駐車場などでの切り返す場面でも5mを超え、ホイールベースも3mを超えているにも関わらずDセグサイズレベルで切り返すことができるのだ。またワインディングでは特に安定性に寄与し、低速コーナーでは旋回性が高く、高速コーナーでは安定感が増し、どっしりとした旋回をする。

ショーファードリブンにも利用されるSクラス、ましてロングとなればドライバーズカーというよりショーファー需要が多そうだが、そのロングですらドライバーズカーとしてのハンドリングの魅力を感じることができるのだ。

サスペンションはエアサス仕様だが、その味付けも絶妙でうねりがある路面や高速道路ではゆったりとソフトに動くが、ワインディングでは引き締まったサスペンションへと性格を変える。ふわりとした乗り心地をしながらも、ある程度のヨーモーメントやロールが発生するとビシッと引き締めるイメージだった。

3.0L直列6気筒ターボにISG搭載。435ps/520Nmの出力は十分

エンジンは直列6気筒のガソリンとディーゼルがあるが、試乗車はガソリンモデル。エンジンとミッションの間に48Vのモーターを搭載するマイルドハイブリッドだ。メルセデスではISGインテグレーテッドスタータージェネレーター搭載、という言い方をしている。

ISGによる駆動アシスト領域はアイドルストップからのエンジン始動やシフトチェンジ時のトルクの落ち込み、そして加速アシストなどだが、モーター感は特になく全域でなめらかに走行する。出力は320kW(435ps)/520Nmと大トルクを持っているので、大柄なボディでも力不足を感じさせるときは皆無だ。

新しい領域の真骨頂

注目は静電式になったステアリングホイールだ。新世代ステアリングからスイッチは消え、スマホのようにスワイプ操作する。MBUXも進化し、ドライバーだけでなく乗員すべての声を認識し、発話者をハイライトする演出もある。MBUXが誰の声を認識したのか確認できるというわけだ。

ステアリングにあるスイッチ類はスワイプ操作ができるようになった

ナビゲーションにはAR(拡張現実)が採用され、センターコンソールのナビ画面には映像が映し出され進行方向が示される。そしてドライバーの視界には10m先の路面に曲がる方向の矢印が見え、ミスコースを未然に防ぐことができる。

こうした声の認識、触感の操作、視界を3Dにといったこれまでにない、新しい領域のデバイスがこの新型Sクラスの真骨頂と言えるだろう。こうしたマルチモーダルなデバイスは今後も進化し、さらに複雑な要求にも答えるものが出てくるのは間違いない。また技術やソフトを提供するサプライヤーやサードパーティからはOSの影響を受けにくいデバイスというのも今後の焦点になってくるかもしれない。

リヤシートはロングボディを活かし、写真よりさらにフラットに近い状態までリクライニングが可能で、オットマンを出しマッサージ機能を稼働させながらの移動が可能であり、高級車ならではの楽しみも充実していた。

カーボンニュートラル製造にも挑戦

エクステリのデザインは「Sensual Purity(センシュアル ピュリティ:官能的純粋)」という新たなデザイン言語に従い、ラインやエッジを大幅に削減し曲線を描く彫刻的な面により陰影を生み出している。エッジを際立たせて力強さを表現する技法とは正反対とも言えるもので、面構成での存在感の出し方は金型や組み立て精度も踏まえると、高級車ならではの生産方法と言える。

その生産方式では既報しているが、ジンデルフィンゲンに隣接した場所に新工場を建設し、このW223型専用の組み立て工場を建てた。工場ではソーラーパネルで発電され、従来比でエネルギー消費量は25%削減されているという。工場では溶接やロボットで大量の電力を使いCO2を排出しているわけだが、こうしたサステナブルな電力によってカーボンニュートラルを目指す姿勢もフラッグシップモデルならではの挑戦といえる。

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もう一つの注目ポイントがレベル3の自動運転が搭載されたか?だが、今回の段階ではレベル2のままだった。しかしその精度も上がり本来ドライバー運転操作をアシストする先進運転支援技術であるが、システムが苦手な領域をドライバーが補うという勘違いが起きるほどレベルの高いものだった。

国内ではホンダがいち早くレベル3を実現し、高速道路渋滞時50km/h以下ではアイズオフが可能で、モニターに映し出されるエンターテイメントを凝視してもOKになった。当然Sクラスにもレベル3が搭載されるが、それがいつになるのか。2021年後半には搭載されると噂されている。その場合、新型SクラスはOTAでアップデート対応できるのか?あるいは、別のシステムが追加されるのか興味深い。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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