最新の技術トレンドを盛り込んだメルセデス・ベンツのガソリンエンジン デルタシリンダーヘッドとは何か?

この記事は2019年3月に有料配信したものを無料公開したものです。
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メルセデス・ベンツCクラスのビッグマイナーチェンジ・モデルは2018年7月にデビューした。C200 アバンギャルドは新開発のダウンサイジング・エンジンの1.5L・直列4気筒・直噴ターボの「M264型」を搭載した。このエンジンはBSG(ベルトドリブン・スタータージェネレーター)、48V電装システムなどを採用した48Vのマイルドハイブリッド・システムとなっている。

このエンジンの試乗記はこちら
※関連記事:【メルセデス・ベンツCクラス試乗記】電動化された新パワートレーンはダイナミックでパワフルに

M264型1.5Lマイルドハイブリッド・エンジン
M264型1.5Lマイルドハイブリッド・エンジン

48Vマイルドハイブリッドを採用したM264型エンジン

以前から紹介しているような48Vとスターター/ジェネレータを組み合わせたマイルドハイブリッドがいよいよヨーロッパでは普及段階に入っていることを物語っている。このマイルドハイブリッドは、ブレーキ時にスターター/ジェネレーターがエネルギー回生を行ない、発電された電力は1kWh容量のリチウムイオン電池に蓄電される。

そして、発進時にはスターター/ジェネレーターがエンジンを始動するとともに、加速時にはターボの過給圧が高まる段階までモーターによる駆動アシストを行なう。この仕組はすでに国産車でも少なくないが、それらは12V電圧だ。

一方、このM264型エンジンのように48Vでは当然ながら12Vのスターター/ジェネレーターより出力が大きく、M264型の場合は14ps(回生時は16ps)/160Nmを発生することができ、駆動アシストとして十分と言える。

それだけではなく、このスターター/ジェネレーターにより生み出される駆動力はギヤチェンジ時にも使用され、エンジン回転がギヤチェンジ時の設定回転数に達するまでの時間を早め、より短時間にスムーズにギヤチェンジできるように働く。

最新の技術トレンドを盛り込んだメルセデス・ベンツのガソリンエンジン デルタシリンダーヘッドとは何か?

末広がりなシリンダー形状

この新開発されたM264型は排気量1496ccで、ボア×ストロークは80.4mm×73.7mmで、圧縮比は10.5。最高出力184ps/5800-6100rpm、最大トルク280Nm/3000ー4000rpmを発生する。ターボチャージャーはツインスクロール式だ。

直噴インジェクターは高応答のピエゾ式で、燃焼室中央に噴射するスプレーガイド・多段噴射式だ。日本のエンジンに多く見られる側方からの噴射では強いタンブル流を発生させないと燃焼速度を上げるのが難しいが、燃焼室直上からの中央噴射ならそれほど強いタンブルがなくても、低負荷であっても十分に高い燃焼速度を実現することができるからだ。

また、可変バルブタイミングの「カムトロニック」を装備しており、部分的にミラーサイクル運転も行なう。高出力を狙っているため、最近の過給エンジンとしては最大トルク回転数は高めだ。

コニシェイプ・ホーニングのイメージ
コニシェイプ・ホーニングのイメージ

このエンジンから摩擦低減対策として、メルセデス・ベンツが特許を取得した「コニシェイプ加工」が採用されている。

「コニシェイプ」とはコニカル・シェイプを縮めた単語で、コニカルとは円錐形を意味する。これは、鋳鉄製シリンダーライナーをホーニング加工する際に、シリンダーウォールを底部に向けてやや末広形にすることで、ピストンスカート部に発生する摩擦を低減する効果・目的で採用されている。

その理由は、ピストンの肉薄のスカート部が高負荷で外側方向に熱膨張することに対応し、熱膨張しても摩擦抵抗が増大しないようにするためだ。

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ピストンは超ショートスカート形状で、ピストンリングは低張力・薄型を採用し、ピストンピンはDLCコーティングするなど徹底した低フリクション対策が採用されている。さらにクーリングチャンネルを備えており、燃焼室をオイル冷却するとともに、ピストン冠部の熱膨張を抑えている。このため、ピストン・スカート部の熱膨張対策を行なうことでピストンの発生する摩擦抵抗を最小限にしていることがわかる。

ピストン、シリンダー部、さらにエンジン装備などで徹底的に効率を追求しており、ピエゾ式直噴インジェクター、48Vのスターター/ジェネレーターによるマイルドハイブリッド、ツインスクロールターボ、クーリングチャンネル式ピストンなど、いわばエントリークラスのベースエンジンともいえる1.5Lエンジンに、これだけコストアップを厭わず最新の技術を投入しているのは驚異的といえる。

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