アウディQ5 40TFSI quattro S Line試乗記(2.0Lディ−ゼルターボ+12Vマイルドハイブリッド+7速Sトロニック)

現行型のアウディQ5は2017年に第2世代にフルモデルチェンジを行ない、2020年夏にビッグマイナーチェンジを行なったモデルだ。国内への導入が若干遅れていて2021年3月から発売されている。そのアウディQ5のディーゼルモデルに試乗することができたので、お伝えしよう。

マイナーチェンジでフロントまわりのデザインが変更された

このビッグマイナーではモデルラインアップがアドバンストとS Lineの2体系にまとまり、他にSQ5のパフォーマンスモデルがあり、そしてつい先ごろ2021年7月にQ5スポーツバックモデルがQ5シリーズに加わっている。

今回試乗したモデルはそのスポーツバックではなく、Q5の中心的モデルでディーゼルエンジンを搭載した「Q5 40 TDI クワトロ S Line」に試乗した。Q5はミッドサイズのSUVでBMW X3やメルセデス・ベンツのGLCあたりがライバルになるDのセグメントサイズになっている。

ボディサイズは全長4685mm、全幅1900mm、全高1665mm、ホイールベース2825mmで、4気筒ディーゼルターボに12VのBASマイルドハイブリッドを搭載している。BASはベルトドライブ オルタネータースターターの略。

エクステリアでは顔の表情が変更され、MC前はグリルを真横から見るとわずかに湾曲し凸型な形状をしているが、このマイナーチェンジでフラットに近い形状へと変更されている。グリルデザインも変更され、S Lineはハニカム形状で、アドバンストはA8で採用されている格子型デザインになっている。またバンパー左右のエアダクトは上下方向にサイズアップし、押しの強い顔を印象づけている。

リヤランプでは、アウディは早い段階からLEDを取り込んで来たが、今回はOLEDデジタルシステムを採用している。OLEDは日本では有機ELと呼ばれ液晶によく使われている技術だ。液晶パネルは自ら発光しないため、バックライトが必要で、OLED(オーガニック・リキッドorライト エミティングダイオード)は自発光するため見やすく、視認性が高いメリットがある。

そのOLEDをリヤテールランプに採用するにあたり、デジタルシステムを組み込み同じハードウエアでありながら発光デザインを変えることができるという使い方をしている。もちろん、鮮やかさもあり視認性は高い。写真で伝えるには難しさがあり実車でぜひ見て欲しい。

インテリアでは10.1インチのタッチパネル式のナビモニターを採用した。以前のコンソールに設置したロータリープッシュコントロール式は正直操作しにくかったので、改善と言えるだろう。さらに音声対話型AIを搭載したのもトピックだ。「ヘイ アウディ」で起動するが、実はいきなり「〇〇まで道案内して」でもちゃんと検索して対話を始めることもできた。

エンジンは40TFSIに12Vマイルドハイブリッドとなったが、正直モーター感はわからない。アイドリングストップからの再始動や、コースティングからの再始動で滑らかにエンジンが始動されるので、理解できるレベル。

縦置き搭載のクワトロ

そのエンジンは少々馬力がアップされ204PSとなりトルクは変わらず400Nm。高級車らしくエンジンは静かで、走行音はわずかに室内に入ってくるレベルだ。さらに22km/h以下でアイドルストップし、再加速するときはBASがエンジンを滑らかに始動させ、滑らかに再加速が可能。そして高速ではコースティング時にエンジンが停止する機能を搭載している。より静粛に、そして燃費に貢献している。ちなみにJC08モード燃費は15.6km/L。

環境性能では、デュアル・アドブルーインジェクションの2段階SCRシステムでNOxの排出量を大幅に低減している。もともとこのEA288型evoにはSCRコーティングしたDPFやアンモニア分解触媒コンバーター、高低圧2系統のEGR排ガス循環装置を搭載しており、優れた環境性能を持ったディーゼルエンジンでもある。

またクワトロ=フルタイムAWDではあるが、電子制御・油圧多板クラッチを搭載し通常はFFで走行しているのだ。エンジンを縦置きに搭載しつつFF走行というアウディの技術だ。FF走行中はリヤのドライブシャフト、プロペラシャフトも停止させている。

トランスミッションは継続して7速Sトロニック=DCTを搭載している。国内に導入当時は「セブン・トロニック」と言っていたが他のモデル同様Sトロニックとなり、ギヤ段を足して「7速Sトロニック」となっている。言うまでもなくダイレクトであり、ATとの差がない滑らかさを持っている。そして発進時でも湿式のメリットを活かし弱めのクリープをしながら滑らかに動きだす。

試乗車のサスペンションは可変ダンパーを搭載していないベーシックなタイプだが、20インチのタイヤサイズを見事に履き熟す乗り心地の良さがある。前述のようにディーゼルとわからない静粛性と乗り心地は高級ブランドに相応しい性能だ。

ハンドリングはEPSなどの制御変更はないと思われるが、Q5が登場した2017年の試乗時の印象より良くなっていると感じた。導入初期はハンドリングが敏感でよく動くタイプだと感じていて、そこがアウディらしさでもあるのだが、リニアなフィーリングとは少し異なる印象を持っていた。だが、今回試乗してみるとそうした印象は特になくなっていた。ただ切ったハンドルがもどろうとするセルフアライニングトルクはほぼ皆無で、少し扱いにくいとは感じるがオーナーとなればすぐに慣れてしまうだろう。<レポート:高橋明/Akira Takahashi>

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