ZF SiC製品をST社からも調達、電気駆動システムの受注拡大へ

グローバル規模で展開するサプライヤーのZF本社は2023年4月17日、多様な電子機器に半導体を提供する世界的半導体メーカーのSTマイクロエレクトロニクス(ST)のパワー半導体の基盤となるSiC(シリコンカーバイト:炭化ケイ素)製品を2025年から購入すると発表した。

SiC半導体製造のウエファー

複数年契約の下、ST社は、2025年に量産を開始するZFの新しい電動車の出力を制御するモジュラー・インバーター・アーキテクチャに組み込まれる数千万個規模のSiC製品を供給することになる。ZFは、ヨーロッパ、アジアで垂直統合化されたSTのSiC製造プロセスを活用し、電気駆動システムの受注を拡大させる計画だ。

ZF社取締役会のメンバーでEモビリティとマテリアルマネジメント担当のシュテファン・フォン・シュックマン氏のコメント
「この戦略的に重要なステップにより、顧客への安定供給ができるようサプライチェーンを強化しています。2030年までのEモビリティの受注額は、現在300億ユーロを超えています。この規模に対応するには、信頼できるSiC製品のサプライヤーが複数必要です。ST社は、当社の要件使用を満たす複雑なシステムに関する経験が豊富で、なにより極めて高品質かつ必要量のデバイスを製造できるサプライヤーです」

この契約により、ZFは2月に発表した既存のウルフスピード社とのSiCに関するパートナーシップ契約に加えて、世界クラスのサプライヤーを2社獲得したことになる。

インバーターは電動ドライブトレインの頭脳だ。バッテリーと電動モーター間双方向のエネルギーの流れを管理する役割を持つ。インバーター設計とSiCなどのパワー半導体の組み合わせは、電気自動車の性能向上の鍵となっている。

これまでのシリコン(Si)半導体に比べ、SiC製品は、EVのインバーター、風力発電タービン、太陽光発電インバーターの電力損失を大幅に低減できる。SiC製品は、高効率、電力密度、信頼性など、従来のシリコン・ベースの製品に比べて決定的な利点があり、同時により小型で費用対効果が高いシステム設計が可能になる。つまり、SiCベースのパワー半導体を搭載したEVは、充電速度や航続距離を向上し、より多くのスペースを確保することができるわけである。

STマイクロエレクトロニクスのオートモーティブ&ディスクリートグループのマルコ・モンティ社長のコメント
「STは、垂直統合型企業として、電動化と脱炭素化の目標を追求する中で、自動車ならびに産業分野における世界およびヨーロッパの顧客基盤を支えるために製造能力を拡大し、SiCサプライチェーンを構築するために多額の投資を行なっています。電気自動車の成功の鍵は、拡張性とモジュール性、効率、ピーク電力の向上、低価格化にあります。STのSiC技術は、これらの利点を提供します。電動化を牽引する車載機器メーカーであるZFのインバータ性能の差別化および最適化を支援できることを誇りに思います」

ST社は、イタリア、シンガポールの前工程工場においてSiC製品を製造し、モロッコと中国の後工程工場において先進的なパッケージ化されたパワー半導体への実装とテストを行なうことになる。

2025年よりST社は、ZFに数千万個の第3世代SiCパワーMOSFETを供給する。ZFはインバータの設計を変更することなく、自動車メーカーの性能要求に合わせてさまざまなデバイスを供給可能になり、2025年生産開始予定のヨーロッパの自動車メーカーの車両向けにこのインバーターを供給することになっている。

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