2016年2月26日、ボッシュは車載ナビゲーションシステムにより新しい機能を実現するべく、地形の高低の違いをシステムに内蔵された衛星写真を使ってまるで写真のようにリアルに表示する先進的なナビゲーション・ソフトウェアを開発したと発表した。
この新しいソフトウエアでは、高層ビルが立ち並ぶ中でも、ドライバーは自分の現在位置をより簡単に把握しやすくなる。これは、新たに設けられたナビゲーションデータ規格(NDS)に適合したデータを3Dレンダリング・モジュールで処理し、美しい映像マップを作り上げることができるボッシュの先進ナビゲーションソフトウェアにより実現している。
他社の同様のシステムとは異なり、ボッシュは、常時オンライン接続されていないナビゲーションシステムでも機能する。もちろんインターネット接続を利用できる環境下では、ダイナミックデータをマップ表示に活かすことができる。さらに将来的には、たとえば最新の気象情報や走行ルート沿いにあるガソリンスタンドの燃料価格などをナビゲーションのマップに表示できるようになる。
この新しいナビゲーションソフトウェアの中核を担うのが、Open Scene Graphをベースとした3Dマップエンジンだ。このシステムは、ビルなどの立体的要素をディスプレイに複数重ねる「スーパーインポーズ」を行なう。3D要素を重ね合わせて生成された画像を半透明にすることができ、ドライバーは視界を遮る建物など障害物の向こう側に延びる道路もマップ上で視認できるのだ。
また、表示されたマップは、最大の詳細レベルからマップ全体の俯瞰までスムーズに拡大/縮小表示することができる。さらに、このソフトウェアはNDSデータに含まれる地形情報を利用し、土地の高低を表示でき、マップの地平線側の部分を人工的に上方に曲げ、画面を最大限に活用し、ルートを表示することもできる。この新しいソフトウェアは3D artMap機能をサポートしているため、建物のエッジに丸みを付け、適度に着色し、周囲の風景を水彩画風に表示させることも可能だ。
システムの操作方法は、音声入力、マルチタッチ、手書き認識の3種類から選択することができる。また、この3Dマップエンジンは、センターコンソールのディスプレイやメーターパネルのディスプレイなど、複数のスクリーンに異なるエリアのマップを同時に表示することもできる能力を持つ。表示の精細度も、インフォテインメントシステムの演算処理能力とメモリ容量に合わせて調整が可能だ。
このように、このナビゲーション・ソフトウェアは、自動車メーカーが個々のニーズに合わせて設定を変更できるようになっており、アップデートもUSBメディアやスマートフォンを接続して簡単に行なうことができる。
現在、交通渋滞はほぼリアルタイムでマップに表示可能だが、将来的には、インフォテインメントシステムがインターネットに接続されていれば、それ以外の情報もマップに重ねて表示できるようになる。インターネットを通じクラウド情報を生かしたコネクテッドホライズンのダイナミックデータでは交通情報以外の情報もマップに重ねて表示できるようになる。
ボッシュのコネクテッドホライズンを利用すると、クラウドに蓄積された道路状況のデータをリアルタイムで呼び出すことができ、それを3Dマップエンジンが視覚情報に変換し、例えば降雨の激しい地域や、路面凍結の恐れのある地域を、色を変えて表示できるのだ。
このときに画面上で指先でなぞって円を描けば、システムはそのエリア内を通る代替ルートを計算する。また、地域ごとの気温や嵐の予想進路も表示でき、米国の竜巻がよく起きる地域ではこの機能はとても重要だろう。さらに、電気自動車にこのシステムを搭載すると、現在のバッテリー残量でどこまで走れるかという航続距離情報が、半透明で重複表示することもできる。
なおナビゲーションデータ規格(NDS)は、自動車メーカー、自動車機器サプライヤーとマッププロバイダーが合同で開発した規格で、フォーマットを標準化することにより、製造元の異なるナビゲーションシステムでも容易にマップデータを交換できるようになる。また標準化によってバリエーション数が減少し、マップのアップデートも簡単に行なえるようになることもメリットだ。