ABB FIAフォーミュラEシーズン12の第7戦、第8戦ドイツ・ベルリン大会はダブルヘッダーで開催された。例年どおりペンテルホフ空港の跡地で特設コースを設定してのレースだ。
コースは1周2.374kmアスファルトではなくコンクリート舗装されているのが特徴だ。さらに空港ということで、勾配がなく完全なフラットなコースで、コース幅も広くとっている。そして今回はダブルヘッダーなので、第7戦はピットブースが行なわれ、アタックモードは6分間が1回という設定だ。

グループ予選A組はヴェアライン(ポルシェ)、ドルゴヴィッチ(アンドレッティ)、ローランド(ニッサン)、キャシディ(シトロエン)がデュエルスに進出。グループ予選B組は、ティクタム(クプラキロ)、モルタラ(マヒンドラ)、マロー二(ローラヤマハ)、ミュラー(ポルシェ)が進出。ここでの注目はローラヤマハのマロー二が初のデュエルス進出だ。


そしてデュエルスでは、モルタラとヴェアラインが決勝で対決。第6戦終了時点でシリーズランキング1位、2位の直接対決で、ポールポジションはモルタラが獲得。モルタラは今季7戦で3回目のポール獲得と抜群の速さがある。
決勝レースは39周で、コース幅も広いためクリーンにスタート。スリーワイドでも接触しない余裕のコース幅があり、序盤は各マシンともエネルギーマネージメントをし、1分4秒台で展開。予選は58秒台だから、だれでもがトップに立てるラップタイムで序盤を消化していく。
とはいえ、注目はローラヤマハのマロー二とディ・グラッシがトップグループに入り、11周目にはローラヤマハがワンツー体制を作る場面もあった。そして15周消化あたりでトレイン状態となり、ポジション争いは一旦落ち着き、各マシンともバッテリーセーブモードに入る。
そして20周を過ぎたあたりでピットブーストが可能になり、続々と消化していく。しかし同じ時間だけ給電するため、順位に大きな変動はなく、見せ場はやってこない。一方でアタックモードを使うチームはゼロだ。今季からレース終了時点で残量があったり、未使用だった場合、ペナルティ対象だったものが撤廃され、残量があっていてもOKとなった。そのため、最後の数周をアタックモードで順位を上げていくと考える作戦がメインとなったようだ。
それでも使うタイミングはチームによって、あるいはドライバーによって違いがあり、27周目、つまり残り12周の時点でナトー(ニッサン)、とエリクソン(エンビジョン)が最初にアタックモードを使った。
その2周後からは続々とアタックモードを使い始めたが、その少し前のタイミングでミュラーがアタックを開始し、31周目にはトップにって後続を引き離す作戦に出ていた。しかし、のこり2〜3周はアタックモードが切れるわけで、トップからは陥落すると考えるチームが多かった。

そのためミュラーが後続を引き離しているにもかかわらず、まだアタックモードを使わないドライバーもいたほどだ。しかし、ミュラーはそのまま逃げ、後続のキャシディ、ローランドがアタックモードを使いながらも差が縮まらない状況で、ミュラーは逃げ切ることに成功。2位に4秒721という差をつけての初優勝を飾ったのだ。
勝因は、コースレイアウト的にアタックモードが圧倒的に有利というほどではなく、簡単に先行車が抜けるというレイアウトでもなかったことを見抜いたポルシェチームの作戦勝ちと言えるだろう。

そして第8戦は翌日に開催。前日とは予選結果がガラッと変わる展開で始まった。
グループ予選A組はキャシディ、バーナード、ドルゴヴィッチ、ヴェルニューがデュエルスに進出。グループB組はダ・コスタ、エリクソン(エンビジョン)、マロー二、ヴェアラインというメンバーだ。エリクソンはマイアミ以来の2回目デュエルス進出で、マロー二は前日に続いての進出となった。またランキングトップのモルタラはグループ予選を敗退している。
そのデュエルスの決勝は、久しぶりのバーナード(DS)とヴェアラインの対決で、ヴェアラインがポールを獲得。貴重な3ポイントをゲットした。
注目はローランドが18位、エバンス17位で、二人ともグループ予選を敗退している。そこにはユーズドタイヤで予選を走っており、新品タイヤを温存している作戦が見えた。
迎えた決勝は、全車がバーンナウトを行なわない静かなグリッドからスタートした。つまりコンクリート路面はタイヤへの攻撃性が高く、タイヤに熱を入れなくてもグリップするため、摩耗を重視していることがわかる。
したがってスタートもクリーンに行なわれ、序盤はなんと1分13秒台での周回という遅さで始まっている。そうなるとポジション争いの意味はなく、バッテリー残量の確保とタイヤ温存というのを決勝レースで行っているのだ。そのため、順位の入れ替わりは激しくあるものの、バッテリーの残量を確保するため回生ブレーキを多めに使うと順位が下がることを繰り返しているわけだ。
またアタックモードは2回8分間のルールが第8戦には適用されているが、それも温存し、レース終盤に使う作戦を多くのチームがとっている。レースが動くのは終盤になってからで、37周のレースのうち、20周目までエバンスは18位のポジションにいる。そして21周目に6分間のアタックモードを使い、6周をかけてあっという間にトップにたった。そして残り10周の段階で2分のアタックモードを残している。
またエバンスは序盤最後尾を走行しながらエネルギーを貯めていたため、5%もライバルより多くのバッテリー残量をもっているのだ。まさに作戦通りの展開になっている。

じつはニッサンのローランドも全く同じ作戦をとっていて、予選は捨ててしまい、決勝レースの終盤に勝負に出る作戦。エバンスとともにトップ争いをするも、先にアタックモードを使い切っているローランドは2位のポジションをキープとなった。
その結果、エバンスが今季2回目の優勝で、ローランドが2位、3位にヴェアラインという順になり、ランキングもヴェアラインが再びトップに立つことになった。

コースロケーションにもよるが、このように予選は無視して決勝レースだけに集中するやり方が通用したため、今後の大きな課題になっていくだろう。もっとも来季からはGen4マシンに切り替わり、タイヤもドライとウエットの2タイプになるなど仕様は大きく変更される。そのため、レース戦略も変わってくるのは間違いなく、課題は今季の残りのレースをどうエンタメ性を上げていくかになるだろう。
第8戦結果
| Position | Driver | Team | Point |
| 1 | ミッチ・エバンス | ジャガーTCSレーシング | 25 |
| 2 | オリバー・ローランド | ニッサンフォーミュラEチーム | 19 |
| 3 | パスカル・ヴェアライン | ポルシェ・フォーミュラEチーム | 18 |
| 4 | セバスチャン・ブエミ | エンビジョンレーシング | 12 |
| 5 | ノーマン・ナトー | ニッサンフォーミュラEチーム | 10 |
| 6 | ジェイク・デニス | アンドレッティ・フォーミュラE | 8 |
| 7 | エドアルド・モルタラ | マヒンドラレーシング | 6 |
| 8 | ジャン・エリック・ヴェルニュー | シトロエンレーシング | 4 |
| 9 | フェリペ・ドルゴヴィッチ | アンドレッティ | 2 |
| 10 | ジョエル・エリクソン | エンビジョン・レーシング | 1 |
シリーズランキング
| Position | Driver | Team | Point |
| 1 | パスカル・ヴェアライン | ポルシェ・フォーミュラEチーム | 101 |
| 2 | ミッチ・エバンス | ジャガーTCSレーシング | 98 |
| 3 | エドアルド・モルタラ | マヒンドラ・レーシング | 93 |
| 4 | オリバー・ローランド | ニッサンフォーミュラEチーム | 83 |
| 5 | ニコ・ミュラー | ポルシェ・フォーミュラEチーム | 75 |
| 6 | ニック・キャシディ | シトロエン・レーシング | 69 |
| 7 | ジェイク・デニス | アンドレッティ・フォーミュラE | 66 |
| 8 | アントニオ・フェリックス・ダ・コスタ | ジャガーTCSレーシング | 65 |
| 9 | セバスチャン・ブエミ | エンビジョン・レーシング | 43 |
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