グローバル規模の開発用計測器メーカーの小野測器は、競争が激化し開発スピードの早さが求められている電動車開発のために、競合車の情報をいち早く獲得し、開発に活かしたいというニーズに応えるため、2023年から自社で電動車を購入し、性能を分析したベンチマーク・レポートを提供している。

そして2026年10月28日、BYDのミッドサイズPHEVセダン「海豹(シール)06 DM-i」を対象とした解析レポート3種の販売を開始した。新たに加わるのは「車両NVH」、「エネルギーフロー/熱マネジメント」、「エンジン性能」の3項目だ。
ベンチマーキングレポート販売は、電動車両を計測対象に、計測器メーカーの視点で実測データをまとめて提供するサービスで、小野測器によると、今回の3項目は顧客からの要望や問い合わせが特に多かった分野だという。
対象車のシール 06 DM-iは、BYDの「第5世代DMテクノロジー」を搭載するモデル。小野測器はこのPHEVシステムを世界最高レベルの高効率と位置づけている。
レポートでは、カタログ値だけでは分からないシステム全体のエネルギーマネジメントや、実車稼働状態での最良熱効率の実態を数値化している。
なお、テストしたシール 06 DM-iは、中国仕様の2022年モデルで、動力システム:EV AWDモデル。
フロントモーター:誘導モーター(最高出力:160 kW)
リアモーター:永久磁石同期モーター(最高出力:230 kW)
駆動用バッテリー:リン酸鉄リチウムイオン電池(容量:82.5 kWh)
車両NVH
NVHレポートでは、テストコースのロードノイズ路面やハーシュネス路面での実走行実験と、パワーユニットの特性を把握するハンマリング加振実験を実施している。
車室内騒音:運転席と助手席に1/2インチマイクロホンを設置し、低速から高速までの定常走行と過渡走行で騒音レベルを測定・解析。
パワートレインNV:モーター/インバーターに3軸加速度検出器を取り付け、モーター/インバーターを含むパワーユニットの6面に1/2インチマイクロホンを設置して、音と振動を測定。パワーユニットマウントのユニット側とボディ側にも3軸加速度検出器を付け、ボディへの入力振動も調べている。全開加速走行時の振動加速度レベルは、回転速度と周波数のカラーコンターで示される。

ロードノイズNV:ハーシュネス路面走行時のステアリングコラムと運転席シートの振動を測定。タイヤからの入力を調べるため、ステアリングナックルやサスペンションタワーなどの振動も解析している。

エネルギーフロー/熱マネジメント:環境チャンバーで電費・燃費と熱制御を解析
環境シャシーダイナモメーターとソーク室を使い、温度条件やエアコンの稼働状態を変えて測定している。
エネルギーフロー:北米モード(UDDS・HWY・US06)では、環境温度-7度と25度、エアコン稼働状態別に電費・燃費・航続距離を測定。WLTCモードでは-7度、23度、40度とエアコン稼働状態別に同様の項目を測定。WLTC走行時の各コンポーネントの積算仕事・損失、時系列のエネルギー消費経過、エネルギーフローを解析し、消費エネルギーを分解している。
熱マネジメント/回路制御:車室内空調とバッテリー温度管理の回路動作を実測データから解析。特殊条件下では、eアクスルの排熱を回収して車室内空調に再利用していることを確認。
ヒートポンプ:冷媒回路上の温度・圧力・流量の実測データから圧縮機の特性を解析し、ヒートポンプシステムの各種効率を算出。
高電圧バッテリー温度管理:-7度~40度での温調を解析。低温環境では、面状ヒーターと充放電パルスを組み合わせてバッテリーを加温する技術が確認された。充放電パルス発生時の電圧・電流の時系列波形も収録されている。

エンジンと高電圧バッテリーによる複雑な熱制御ロジックを明らかにし、第5世代DMテクノロジーの「包括的な熱管理システム」の全容に迫っている。

エンジン性能:1.5L圧縮比16:1を実車制御下で評価
エンジン性能のレポート対象は、第5世代DMハイブリッドシステムに搭載される1.5L高効率エンジン(圧縮比16:1)だ。エンジンクランク軸トルク(ドライブプレートトルク)と燃料瞬時流量を直接計測して熱効率を算出し、燃焼解析なども通じて、実車走行時の動作点や燃焼制御を定量データとして示している。

モード走行:充電維持状態でWLTCを走行した際に使われるエンジン領域を調査し、ColdスタートとHotスタートで制御に違いがあるかを確認した。
定常性能:車速と負荷を変えながら、実車制御で取得できる領域の燃料消費率を中心に、定常状態でのエンジン単体の性能を測定。実車制御で得た熱効率はマップで示される。
全開性能:各エンジン回転速度でドライブプレートトルクが最大となる条件でデータを取得し、レギュラーとハイオクで最大トルクと出力を比較。

制御特性:停車状態からの発進全開加速と、定速走行状態からの中間全開加速で、エンジンの制御挙動を調べた。
アイドル時の触媒暖機:環境温度の違い、およびエンジン暖機後のソーク時間の違いによる制御挙動を調査した。
触媒浄化率:実車制御で取得できる領域で、ラムダの違いによる触媒浄化率を調べた。
WLTCモード走行時の高EGR率制御から、燃料違いでの全開性能比較、低温環境での触媒暖機制御まで網羅している。
小野測器は今後、既発表車種のレポートを拡充するとともに、対象車種も順次広げていく予定としている。













