既報のように、トヨタの大型ミニバンのアルファード(トヨペット店扱い)、ヴェルファイア(ネッツ店扱い)が6年半振りのフルモデルチェンジを行なった。今回のモデルチェンジで、大型のミニバンの頂点を目指すというより最高級の、真の贅沢を追求し、従来にない新しい高級車像を追求している。そのため「大空間高級サルーン」というキーワードが選ばれている。
開発の柱になっているのは、高級車をも圧倒する存在感とスタイリング、心地よいおもてなしの快適な室内居住性、高級車として徹底的に磨き上げた基本性能、新技術がもたらす充実した先進装備の4点だ。そのため、クルマとしての基本性能の向上、静粛性や乗り心地の向上、先進装備の積極的な採用などが行なわれている。
新型アルファード/ヴェルファイアのボディサイズは全長がアルファードで+45mm、ヴェルファイアで+60mm、全高-10mm、全幅+20mm、ホイールベースは50mm延長され3000mmとなっている。全長がほぼ5m、全幅が1850mm、全高1880mmというフルサイズの大きさだ。
グレードは、主として法人ユーザー向けのVIP仕様のエグゼクティブラウンジを頂点に、エアロ仕様のアルファードがS、SA、SR、ヴェルファイアは Z、ZA、ZRという各3グレード。標準モデルはアルファードが S、SA、SR、ヴェルファイアはZ、ZA、ZRというラインアップとなっている。VIP向けのエグゼクティブラウンジは運転手付きを想定し、2列目シートを最重視し快適性、居住性をプレステージカーに迫るレベルまで追求した仕様・装備で、サスペンションも専用チューニングされている。また福祉車両も設定されているが今回からは持ち込み登録ではなく型式認定車となっており、納車期間を短縮している。
エクステリアのデザインテーマはアルファードが「豪華・勇壮」、ヴェルファイアが「大胆・不敵」だという。いずれも比類のない存在感、押し出し感を強調しており、それぞれにより存在感を強めたエアロボディも設定されている。アルファード、ヴェルファイアともにフロントグリルに大面積のメッキを多用しているが、イメージ的にはアルファードはゴージャス感を強く打ち出し、ヴェルファイアはあくの強さ、低重心、迫力を打ち出すという区別がある。ホイールはグレードにより、16インチ、17インチ、18インチが設定されている。
インテリアは斬新な構成と、手の込んだ上質な作りがテーマで、水平基調のインスツルメントパネル、大面積のセンターコンソールを中心にして、メタル風や木目調の加飾を駆使している。特に黒木目パネルは下地にホログラムを仕込んで独自の表現を見せる。このホログラム採用は世界初だという。
また後席側の天井の両側にはLEDイルミネーションが標準装備されている。色は16色から選択でき、光量も4段階調光となっている。さらにLED照明を装備するグレードは、間接照明のパーソナルランプも装備するなど、室内の雰囲気の演出にも力が注がれている。
ボディのパッケージの特徴は低床フロア、超扁平燃料タンク、そして2列目、3列目に後方ほどフロアが高くなるシアターフロアシートとしている。ステップ高さは従来型より50mm低められ、地上から350mm(16インチタイヤ)、フロア高が450mmで、ステップの幅も180mmに拡大されている。また2列目、3列目シートに乗り込む時のアシストグリップも485mmと長くし、子供から大人まで使いやすくしている。室内高は1400mmだ。
シートアレンジでは、今回から助手席シートと2列目シートのスライドレールを一本化することで、助手席が1160mmという超ロングスライドとなり、助手席と2列目シートの位置を調節することで多様な使い方ができるようになっている。
2列目シートはグレードにより3種類あり、最上級のエグゼクティブラウンジ仕様、標準キャプテンシート(7人乗り用)、ベンチシート(8人乗り用)だ。
最高級のエグゼクティブラウンジ・グレードはセカンドシートが標準より100mm拡大され、高級ラウンジのようなゆとりを生み出す。シートはプレミアムな本革素材、シートのベンチレーション、電動・伸縮式オットマン、高級感のある木目調、金属調の装飾を加え、高級リムジンを超える快適性を訴求し、VIP仕様といえるレベルとしている。
アルファード、ヴェルファイアが搭載するパワーユニットは、2.5L・4気筒の2AR-FE型デュアルVVTiでCVTとの組み合わせ、3.5L・V6の2GR-FE型デュアルVVTi、そして2AR-FXE型アトキンソンサイクルエンジンと組み合わせたE-Four(モーター式4WD)を採用するハイブリッドの3種類。2.5Lエンジン車はスーパーCVT-i(7速スポーツシーケンシャルシフトマチック付き)、3.5Lエンジン車は6速AT(シーケンシャルシフト付き)と組み合わせている。なおハイブリッド車もSポジションでは6速シーケンシャルモードを採用している。また2.5Lエンジン車はアイドリングストップ仕様もオプション設定されている。
ボディは、高張力鋼板の使用を拡大し、さらにドア開口部周囲にはスポット溶接の打点を増加。リヤのホイールハウス周りは構造用接着剤も使用し、軽量かつ高剛性に。リヤ・サスペンションメンバーの取り付け部にはブレースを追加するなど特にリヤの局部合成を高めている。
また静粛性を大幅に高めるために、フロントバルクヘッドにはサンドイッチ鋼板を、フロア面やエンジンルームには吸音・遮音材を採用し、これまでとは比較にならないほど静粛な室内としている。
サスペンションはフロントがストラット式、リヤは従来のトーションビーム式ではなく新開発の低床タイプのダブルウィッシュボーン式を採用している。これはスプリングやダンパーを独立させ、低い位置に配置したコンパクト設計で、同時に十分なトーイン変化をさせることで高い操縦安定性と乗り心地の向上を両立させ、高級セダン並みのレベルに仕上げている。
ドライバー支援システムは、全車速追従式レーダークルーズコントロール、衝突回避自動ブレーキはエグゼクティブラウンジに標準装備、その他のグレードには7万5600円のオプションとして設定される。またアクセル、ブレーキ操作に関係なく低速取り回し時における衝突回避、衝突被害の軽減を支援するインテリジェントクリアランスソナー(8センサー)を新設定(レーダークルーズとセット)。なお標準仕様は前後方向に作動する6センサーのクリアランスソナーを備えている。
さらにインテリジェントクリアランスソナー(8センサー)とカメラを併用した世界初の駐車支援システム、インテリジェントパーキングアシスト2も設定されている。スイッチを押すだけで、適切な後退開始位置への誘導と後退駐車のためのステアリング操作をアシストする。手動による目標駐車位置設定は不要だ。このシステムは切返しを伴う駐車、縦列駐車、縦列出庫などでも機能するようになっている。
新型アルファード/ヴェルファイアはトヨタ車体で製造される。メインは日本市場だが、アジア諸国、中東にも輸出されるモデルでもある。今やトヨタの中でクラウンを上回るホイールベース、ボディサイズであり、単にボディが大柄というだけではなく、価格的にも拮抗しており、このクラスにふさわしい快適性や質感、仕上げのよさが追求されており、もう一つのフラッグシップといえなくもない。