2015年7月1日、トヨタ、日産、ホンダの自動車メーカー3社は、水素ステーションの建設・運営を行なうインフラ事業者に対する運営費の支援を行ない、同時に、インフラ事業者と共同で燃料電池車ユーザーのサービスの向上等に向けた水素充填環境づくりに取り組むことを決定した。
これは2015年2月12日に発表した燃料電池自動車用の水素ステーションの整備促進に向けた支援策を、政府と共同で自動車メーカーも推進するとの考え方を一歩前進させたことを意味する。
自動車メーカー3社は、政府による水素ステーションの運営コストの2/3を補助するという支援策に協調することにより、水素供給ビジネスへの参入するインフラ事業者へ水素ステーションの運営に係る経費の1/3相当を支援しする。こうした支援の周知を図ることで水素供給ビジネスへの新たな事業者の参入を促していくという。
トヨタは2014年12月に燃料電池車、MIRAIを発売したが、ホンダは2015年度中の販売開始を、日産は早ければ2017年の販売開始を予定しているため、この3社が共同して支援プロジェクトに参加することになった。そして、燃料電池自動車の市場導入が本格化し、水素ステーションの整備が軌道に乗るまでの、2020年ころまでを想定した中期的な視点で運営費の支援、および水素充填環境づくりに取り組み、着実に水素ステーションの整備を後押ししていくという。
運営費の支援は、水素供給・利用技術研究組合(HySUT)に設置する「燃料電池自動車・新規需要創出活動助成事業」への資金拠出を通じて行なう。
また自動車メーカー3社は、燃料電池自動車の普及を目的として利用者に安心して燃料電池自動車に乗ってもらうために、インフラ事業者と共同で以下の水素充填環境づくりに取り組むとしている。
1)水素ステーションに関する利用者のニーズやステーション稼働履歴等の情報を活用した利用者サービスの向上に向けた取り組みの推進
2)水素ステーションの営業日数や営業時間の延長、稼働情報の充実・提供、多くの利用者がアクセスしやすい効率的なステーション整備等による利便性の向上
3)広く一般の方も対象とした燃料電池自動車や水素に対する理解促進および認知度の向上
水素を燃料とする燃料電池自動車の普及のためには、燃料電池車の販売はもちろんだが、燃料供給の拠点となる水素ステーションの整備が不可欠だ。しかし第1のハードルとして水素ステーションは既存のガソリンスタンドや急速充電システムの建設に比べ格段に費用がかかる。
さらにステーションを建設しても、現状のような燃料電池自動車の導入初期段階では燃料電池車の台数が少ないのでその稼働率は低く、インフラ事業者による水素ステーションの設置・運営は当分の間ビジネスとして成り立ちにくい。
このため政府は、2014年6月に策定した「水素・燃料電池戦略ロードマップ」に従い、さらに2015年2月には燃料電池自動車の新たな需要創出活動を推進するためと、アベノミクスの第3の矢のひとつとして、水素ステーションの運営に係る経費の2/3を補助し施策の強化を図ることを決めている。
政府の水素社会ロードマップでは、日本のエネルギーセキュリティの向上、エネルギーミックス政策の一環として位置付けられ、エネファーム、燃料電池車を端緒に、2030年頃には水素発電も視野に入れている。そのため、水素を燃料とする燃料電池の普及は、ロードマップの中で重要視されているのだ。
今回の自動車メーカー3社の水素ステーション運営支援はその政府の政策と歩調を合わせたもので、運営コストの1/3を補助し、政府の補助と合わせると水素ステーションの運営コストは全額補助されることになり、官民一体となった燃料電池車と水素インフラのいわば人工ふ化システムを作り上げるということだろう。
資源エネルギー庁・水素社会ロードマップの取り組み
自動車メーカー3社の水素ステーション整備促進支援
HySUTによるFCV新規需要創出活動助成事業
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水素供給・利用技術研究組合(HyHySUT)公式サイト
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)公式サイト