トヨタがロシアでの生産事業終了を発表 再稼働を目指すも苦渋の決断

トヨタとトヨタ・モーター・ヨーロッパ(TME)は2022年9月23日、ロシアの生産拠点であるロシアトヨタ有限会社サンクトペテルブルク工場(TMR-SP)での生産事業を終了すると発表した。

トヨタ モーター マニュファクチャリング ロシア

トヨタのロシアにおける車両生産会社であるトヨタ モーター マニュファクチャリング ロシア(TOYOTA MOTOR MANUFACTURING RUSSIA:TMMR)のサンクトペテルブルグ工場は、プレス、樹脂成形、溶接、塗装、組立の生産工程を完備した工場で、カムリ、RAV4を現地生産を行ない、年間生産台数10万台の能力を持っていた。

ロシアのウクライナ侵攻以後、トヨタは3月4日から当分の間サンクトペテルブルク工場での生産、完成車の輸入業務を停止していた。またロシアでの販売拠点数は168拠点で、これらでは在庫車両の販売を続けていたが、在庫がなくなった時点で販売は終了している。
サンクトペテルブルグ工場は3月4日、主としてロシア以外からの部品調達ができなくなり、操業を停止。その後も、稼働再開に向けて生産ラインの保全を日々実施するなど準備を継続してきたという。つまりトヨタは簡単にロシアでの生産をあきらめていたわけではなかったのだ。

しかし、半年が経過しても生産再開の可能性は見い出せず、ロシアでの生産活動を終了し、工場を閉鎖する以外に選択肢がないと決断されたのだ。

このためサンクトペテルブルグ工場は、生産終了に向けた手続きを開始し、従業員に対しては、最大限の支援を提供するとしている。またモスクワの拠点は規模を縮小したうえで再編成し、ロシアにおいてトヨタ、レクサスのユーザーに対し、メンテナンスなどのタイプを行なうとしているが、補修部品はほぼ日本からの輸入に依存しているため、輸入が途絶している現状では、ユーザー対応も困難となりつつある。

ルノー・グループの場合

ロシアでの乗用車生産では、ルノー・グループが乗用車シェアの45%を持つアフトワズ社を傘下に納めており、ルノー・グループの2021年の収益の23%がロシア市場から得ており、ロシア市場への依存度は極めて高かった。

ルノー・グループはフランス政府の後押しもあり、積極的にロシアに進出し大きな成功を納めていたが、ウクライナ侵攻により事業は停止。さらにフランス政府の意向もあり、5月16日にロシア事業の売却が決定された。

ルノー・グループのロシア法人であるルノー・ロシアの株式100%をモスクワ市に、ルノーが保有するロシアの自動車メーカー、アフトワズの株式67.69%を産業商務省所管の自動車・エンジン中央科学研究所(NAMI)に売却した。なお売却価格は非公表だが、わずか1ルーブルだったと噂されている。

いずれにしてもルノー・グループはロシアでの生産、販売をすべて失うことになり、他の自動車メーカー以上の大損害を受けているのだ。

ただ、この売却契約には、ルノーがアフトワズの株式を買い戻す選択肢が定められており、今後6年の間に行使することが可能とされている。

ルノー・グループのルカ・デメオCEOは、「われわれは困難であるが必要な決断をした。ルノーの業績と自社が将来ロシア市場に戻る選択肢を維持しながら、ロシア国内にいる4万5000人の従業員に対し責任ある選択を行なったのです」と語っている。

なおロシア側は、アフトワズの経営は安定しており、国内における生産能力や雇用を維持することができるとし、モスクワ市はソ連時代から1990年代まで生産されていた「モスクビッチ」ブランドの乗用車を新たにルノーのモスクワ工場で生産すると発表している。

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