トヨタの次世代モビリティ戦略 MaaSとコネクテッドの展開を考える

この記事は2019年2月に有料配信したものを無料公開したものです。

2018年1月にラスベガスで開催されたCES2018で、豊田章男社長が「トヨタはモビリティカンパニーになる」と宣言した。この意味は自動車を製造するメーカーからモビリティ・サービスを包括する企業になるという意味で、脱製造メーカー宣言ともいえるものだ。しかし、その具体的な内容はこれまで明確にはされてこなかったが、友山副社長からの発表でその骨子が見えてきたのだ。早速、覗いてみよう。

最初の衝撃はフォードから

2016年のデトロイトで開催された北米自動車ショー(NIAS)で、フォードは当時のマーク・フィールズCEOが、「我々は単なる自動車メーカーから、自動車とモビリティを提供する企業に変革する」と宣言し、多くの自動車メーカーに衝撃を与えた。

その結果、フォードだけにとどまらず、ヨーロッパの自動車メーカーの多くやメガサプライヤーは次世代モビリティ・サービスの開拓に着手し、様々なシェアリングカー・サービス、サブスプリクション(定額払いの自動車使用)の試み、無人の乗り合いミニバスの開発など、多様なスタイルの可能性を検討している。

トヨタは2016年末に、将来的にはすべてのクルマのコネクテッド化を行ない、モビリティサービスを支えるプラットフォーム(MSPF)を構築。このプラットフォームにより得られるビッグデータの活用により、新たなモビリティサービスの展開を行なうことを打ち出した。

トヨタの次世代モビリティ戦略 MaaSとコネクテッドの展開を考える

そうした意味では、トヨタが世界の先頭を切っているというわけではないが、少なくとも日本の自動車メーカーの中では初めて「モビリティカンパニー」宣言をしたことになる。ただ、トヨタがどのようなモビリティカンパニーを目指すのかについての戦略は明確にはなっていなかったが、2019年2月にトヨタGAZOOレーシング・カンパニー/プレジデント、コネクテッド・カンパニー・プレジデント/情報システム本部長/ITS本部長/TPS本部長を兼任する友山茂樹副社長が、モビリティ・サービス、コネクテッドに関する将来戦略をプレゼンテーションし、ようやくトヨタのモビリティカンパニーとしての総合的な戦略が固められたことが明確になった。

コネクテッド戦略

トヨタのコネクテッド戦略は、2020年までに日本、中国、アメリカで販売されるクルマに通信モジュール(DCM)を搭載し、常時ネット接続を実現。このコネクテッド技術を支えるモビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)を構築し、車両から取得できる多様なデータを集積し、ビッグデータ化することで、ユーザーメリットを生み出すと同時にトヨタのビジネスを変革し、さらにMSPFを活用して他企業と連携し、新たなモビリティサービスを発展するとしている。

モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)の概念
モビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)の概念

ここで重要な働きをするのがモビリティサービス・プラットフォーム(MSPF)だ。このMSPFはトヨタのクラウドサーバーと対をなす各種のサービス全体を意味している。車両から送信されるデータを蓄積するサーバーに対し、各種モビリティサービス業者はMSPFにアクセスすることで、これを経由し、トヨタ車にサービスを提供するというプラットフォームとして機能する。

トヨタの次世代モビリティ戦略 MaaSとコネクテッドの展開を考える

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