トヨタ 新世代GD型ディーゼルエンジンの詳細 断熱技術を採用、トップレベルの熱効率44%を達成

1GD-FTV型ディーゼルエンジン。2.8Lで177ps、450Nmを発生
1GD-FTV型ディーゼルエンジン。2.8Lで177ps、450Nmを発生

2015年6月17日、トヨタはランドクルーザー プラドをマイナーチェンジし、新世代の高効率ディーゼルエンジン「1GD-FTV」型を搭載しているが、このほどその新しいテクノロジーの全貌が明らかにされた。

従来型の2.5L/3.0Lの排気量を持つ4気筒・KD型ディーゼルに変わる新世代エンジンとして1GD-FTV型が新たに投入され、GD系は1GD型、2GD型、さらにそれに続いてラインアップされる新世代ディーゼルは日本国内だけでなくグローバルに展開していく。トヨタはすでにガソリンエンジンでは、高い熱効率を狙った2NR-FKE(1.5L)、1NR-FKE(1.3L)を皮切りに高熱効率・低燃費のエンジン群を送り出す計画だが、ディーゼルエンジンも刷新することが明らかにされた。

2.5L~3.0LクラスののKD型ディーゼルエンジンは80%が海外向けに搭載されていることからも分かるように、ガソリンエンジン以上にグローバルなエンジンと位置付けられる。新しいGD型ディーゼルは、KD型を大きく上回る出力、低燃費、そして世界トップレベルの高い熱効率を狙い、従来技術を大幅に刷新している。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル ディーゼル熱効率トレンドトヨタ 1GD-FTV型ディーゼル エンジン展開

GD型は2016年末までに約90ヶ国向けに70万基という生産規模を構築し、主力ディーゼルエンジンとして急速に展開されるという。そして2020年までには世界150ヶ国に展開する計画だという。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼルトヨタ 1GD-FTV型ディーゼル

具体的な開発コンセプトは、世界トップレベルの熱効率、静粛性の追求、世界各国に適合する排出ガス対策の達成であり、エンジンに基本構成、燃焼制御、触媒システムの革新を行なうことになった。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル エンジン諸元表

まず排気量は従来の1KD型(3.0L)は1GD-FTV型では2.8Lに、2KD型(2.5L)は2GD-FTV型は2.4Lへとわずかにダウンサイズしている。その上で、より吸気量を増大させ、高効率な燃焼を実現し、高出力化を図るというのだ。1GD-FTV型は新型プラドに、2GD-FTV型は新型ハイラックス(海外仕様)に搭載されている。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル 吸気過流

高出力化を図るため、吸気ポートは従来が強いスワール流を発生させるタイプであったのに対し、GD型はより吸気抵抗の少ないスワール流を抑制した形状に変更。このため充填効率が向上し、吸入空気量はKD型に比べ約11%向上し、排気量のダウンサイジング分をカバーしている。

コモンレール式の高圧・直噴システム
コモンレール式の高圧・直噴システム

燃焼は、コモンレール式の直噴インジェクターの噴射コントロールの制御をパイロット噴射、メイン噴射、アフター噴射のタイミング、精度を高め、燃焼室内で均一に燃焼させるとともに、燃焼音の低減を図っている。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル 燃焼1トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル 燃焼2
トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル 燃焼3トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル 燃焼4

▲燃料噴射の多段噴射のプロセス
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GD型のハイライトは、燃焼室の断熱というコンセプトを実現したということだろう。トヨタはこの断熱システムをTSWIN(Thermo Swing Wall Innsulation Thechnology)と名付けている(ただし、このTSWINは当面は日本仕様のみ採用)。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル 燃焼室表面コーティングトヨタ 1GD-FTV型ディーゼル ピストン

燃焼温度を高め、外部に放出される熱損失=冷却損失を抑制し、熱効率を高めるというコンセプトは1970年代からあり、断熱材であるセラミックをどのように使用するかがポイントとなる。当初の断熱ディーゼルのカミンズ社のコンセプトはセラミック製のエンジンが構想されていたが、現在では燃焼室の周囲をセラミック・コーティングするなどの新技術が主流になってきているのだ。1GD-FTV型は、シリカ強化多孔質陽極酸化膜(Silica Reinforced Porous Anodized Aluminum)をピストン頂部にコーティングすることでこれを実現している。

シリカ強化多孔質陽極酸化膜とはシリカ(ケイ素)と酸素が網目状に連なった構造を持つケイ酸塩で、多孔状のセラミックだ。このセラミックは高温でも強固で、多数の孔に空気を保持することで断熱し、燃焼室からの熱の放出・拡散を防止するのだ。つまりこのセラミック・コーティングにより断熱効果を引き出し、約30%の冷却損失を低減することで熱効率のアップを図ってる。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル ターボ
トヨタ内製の新開発・可変ジオメトリーターボ。小型で高応答な特性を追求

GD型エンジンは、トヨタ内製の新開発された可変ジオメトリーターボを採用している。高流量に対応した可変ベーンを備えた、慣性を抑えた小型ターボとし、レスポンスの良さと大流量のコンプレッサーにより高出力を引き出している。結果的に、ターボ・サイズは30%小型化し、エンジン・レスポンスは低速から高速まで50%向上している。

GD型はグローバル展開を前提に、排気ガス処理システムは貴金属の低減やサイズの低減、小型化の実現など新世代化させるとともに、仕向地ごとに触媒処理システムを新設定している。日本、ヨーロッパ向けは、酸化触媒、DPF(粒子物質フィルター)に加え、トヨタ初となる新開発の尿素SCRを設定している。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル GD型グローバル仕様

アジア、南米は酸化触媒仕様、ロシア、オセアニアは酸化触媒+DPFという組み合わせを採用している。これは、現地の燃料の(特に含有硫黄)の差、各国の規制に適合させた結果なのだ。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル SCRシステムトヨタ 1GD-FTV型ディーゼル

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル 尿素SCRシステム

なお、日本のポスト新長期規制、ヨーロッパのユーロ6に対応するために新開発された尿素SCR(選択還元触媒)は、新型尿素インジェクター、ポンプ内蔵尿素タンクを備え、極寒地域でも確実に作動するロバスト性能と、NOx浄化率99%という高性能化を誇っている。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル GD型性能トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル

このような新たな技術により開発されたGD型系ディーゼルは、世界トップレベルの熱効率44%を達成している。なお1GD型(2.8L)、2GD型(2.4L)は共通の骨格とされている。また、加速性能、加速時の静粛性も従来型のKD型に比べ大幅に改善されている。

トヨタ 新世代ディーゼル ND型エンジン

トヨタは、新世代ディーゼルは、今回登場したGD型に続き、ヨーロッパ向けオーリスに搭載する新開発の1.4L・ND型も登場する予定だ。ND型はヨーロッパ市場向けに従来から生産されているが、新開発の仕様は、DLCコーティング・ピストン、新方小型ターボの採用などにより摩擦抵抗の大幅な低減を図り、さらに新しいNOx吸蔵還元触媒を2連装備している。これらの新技術の採用により、新ND型ディーゼルの熱効率は41%に達する。

トヨタ 1GD-FTV型ディーゼル エンジン展開トヨタ 新世代エンジン ラインアップ

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